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カレーとピアノと友だちと

桜の頃に思い立ってから一月半、友人2人とのピアノの会が終わった。日頃は習っている「春の歌」とインベンション14番を練習しているので、ピアノの会で弾くノクターン2番とドビュッシーの「月の光」は10日くらい前からおさらいを開始、当日に備えた。

家で弾くのとレッスンで先生に聴いていただくのでも随分緊張度が違うけれど、人様の前で演奏するとなると小学生以来で細かいところがやたらと気になる。今更ながら気をつけたい音、定着していない指遣いなどがあそこにもここにも…楽譜への書き込みが際限なく増えていく。

こうして本番の日、リュックに楽譜3冊を詰め込んで待ち合わせの出口に行くと友は涼しげなミニマムな手荷物で。

「楽譜持って来なかってん」

まあ、すごい!暗譜で弾けるなんて〜念のための楽譜もいらないんだ。

レンタルスタジオの予約は13時半からの1時間。その前に軽くお昼をいただきましょう。
調べてきてくれたお店で極上の和牛カレーにした。

薬味の彩りも美しくて、お店は落ち着いていて、マダムになった気分。駅近の猥雑さとは無縁。家族の近況や家事の話、キッチンリフォーム のことなど四方山話をして締めくくりは甘いもの一つときちんと淹れられたコーヒー。

準備完了し、いざスタジオに。事前に届いたドアを開けるパスワード四桁を入れると非日常の世界への扉が開かれた。小さな待合室の横に防音室が設置されて、その中にYAMAHAのグランドピアノと椅子が3つ置かれている。今から1時間、遠方の友人とはビデオで繋いで20分ずつ3人でのミニミニコンサートの始まりだ。

最初の挨拶ももどかしく、iPadの向こうの彼女がオープニングを買って出てくれた。自宅のピアノでの参加。コロナ禍でオンラインで繋ぐことを思いついたわけ。幕開けはバッハのプレリュード!穏やかで正確な演奏。いよいよこの日が来たことを実感する。

それからシューマンの子どもの情景から二曲。ドラマのBGMで使われたことなど解説も入れてくれる余裕。お仕事も忙しいというのにいつの間にこんなに練習してたのかしら。

この日一番印象に残った残ったのがメンデルスゾーンの「5月のそよ風」で、季節に合った選曲と透き通るような旋律が耳に優しく届いた。

お次はピアノのまえの椅子に座って聴いていた暗譜の友人。いよいよグランドピアノの音色の出番だ。おはこのソナチネから、ショパンの幻想即興曲へ。え、これ全部頭に入ってるの?弾き込んでいることが最初の音からすぐわかる。完全にゾーンに入ってる!

能ある鷹は爪を隠す、とはこのこと。日頃は良き主婦でお料理上手、宝塚歌劇のファンだったりと彼女のことを認識していた、音楽の才能を今日ここで見せてもらうまでは。

うーんとうなっている間に最後に弾くことになったわたし。最初のインベンションはあちこち失敗したもののノクターンと月の光は落ち着いて演奏できたと思う。この充実した1時間はいつ以来の快感か。まだまだ伸び代だらけの自分とも出会うことができた。

駅に向けて心地よいおしゃべりと共に新緑の春の午後が過ぎていった。半年後にはさらに仲間も増えて開催できる予感。

皆様もどうぞよい1日をお過ごしください。

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