マリア・サキ

天使のように繊細に 悪魔のように大胆に

マリア・サキ

天使のように繊細に 悪魔のように大胆に

マガジン

  • CROSS DRESSER / How to メイク編

    本作は女装How toメールマガジン『CROSS DRESSER』をリライトしたものです。

  • 『辻角Lawyer』

    リーマン・ショックが起こった年の暮れ、早紀が勤める法律事務所に東京地検特捜部の家宅捜索が入る。容疑は非弁提携、逮捕状がだされた所長の信澤はそのときすでに逃亡しており、ひと月後に自殺体で発見される。

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『辻角Lawyer』Kindle版/Teaser1/3

二〇〇八年九月、米投資銀行大手『リーマン・ブラザーズ』が経営破綻した。負債総額六千億ドル、米国史上最大の倒産は世界的な金融恐慌を招き、日本でも非正規雇用者の雇い止め、派遣社員の派遣切りが横行した。      1  ロウソクに火をつけると和紙に書いた文字がほんのりと浮かびあがった。   〝よろず六法相談〟  妖しくともる看板灯籠を机の左角において早紀はイスにすわりなおした。  クリスマスまであと二週間、いつもより低い目線で見る街角もクリスマスモードに入っている。街灯には〈M

    • 『CROSS DRESSER』Vol.17

      ◆How to むだ毛のお手入れ:カミソリ刃付コーム〈2〉 じつはこのコーム、金のない色男なら誰しも一度は考えるように、これで床屋代を節約しようと数年前に購入し、これで床屋代を節約しようとした色男なら誰しもそうであるように、買ったその日の最初の一梳き目を失敗し(毛先を切るつもりが根元から切れてしまい、そこだけが間伐されたようなハゲになってしまった)それを修復しようとあわてて入れた二梳き目を失敗し、これはいかんと立て続けに入れた三梳き、四梳き目を失敗し、こうなったら後には退けん

      • 『CROSS DRESSER』Vol.16

        ◆How to むだ毛のお手入れ:カミソリ刃付コーム〈1〉 まるで女の脚みたいだった。私は信じられない面持で鏡に映る自分の脚をながめていた。脚はハイヒールを履いただけで普段と違うよそいきになる。まして網タイツを履いたその脚はとても自分の脚とは思えない。 ハイヒールを履いて鏡の前に起ったときには、しかとはそれに気づかなかった。だがいまは白い網タイツがむさいすね毛を蔽い隠し、すこぶるつきの脚線美を顕している。脚の毛を蔽い隠してはじめて、私は自分の脚の女らしさに気がついた。もしか

        • TROPICAL NIGHT/愛は光にみちて Kindle版

          夏のサスペンス / 冬のゴシックロマン 珠玉の短編2作 TROPICAL NIGHT 熱帯夜の土曜日、ケイが出勤すると店は警察によって封鎖されていた。そこに同僚ホステスのルルから電話が掛かり店のママが殺されたと聞かされる。警察署で事情を聴かれたケイは恋人の幹也を捜す──。 愛は光にみちて 冬の一日、私は東京の郊外にある某大学を訪れる。そこは子供のころの私の遊び場であり、行き場のないときの逃げ場であった。これはその折に出会ったシスターの話しと、不思議な体験をもとにしている。

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        『辻角Lawyer』Kindle版/Teaser1/3

        マガジン

        • CROSS DRESSER / How to メイク編
          15本
        • 『辻角Lawyer』
          3本

        記事

          『CROSS DRESSER』Vol.15

          ◆How to メイク:ルージュ 最後に口紅。塗り方は気持ち小さめ。上唇は輪郭のすこし内側、下唇は縦じわを残すくらいでちょうどいい。 上唇は左右の山を描いてから口角とつなぎ、下唇は左右の口角から引いて真ん中でつなぐ。横方向だけでなく縦方向にも塗り重ね濃度を整える。 二度三度、唇をすり合わせてルージュをなじませ、ティッシュを噛む。作り物めいた顔に命が通う瞬間である。 私はリップブラシを使わないと口紅を塗れない。ところが女性はそれを使わずとも口紅を塗ることができる。ときに女

          『CROSS DRESSER』Vol.15

          『CROSS DRESSER』Vol.14

          ◆How to メイク:マスカラ〈3〉 マスカラを塗るときは、根元から塗っていく。ブラシをあて、ゆっくりと回転させながら、まつ毛を押し上げるようにして絡ませていく。ブラシの角度を変え、目頭から目尻まで均一に満遍なく塗り、暫しまばたきをこらえる。これを怠ると乾き切らないマスカラが目の周りに飛び散ってしまうことがある。 下まつ毛にマスカラを塗るときは目頭よりの二三本に塗る。しかし男性は塗れるほどの下まつ毛を持ち合わせていないというのが実情で、ほとんどの場合意味をなさない。私も下

          『CROSS DRESSER』Vol.14

          『CROSS DRESSER』Vol.13

          ◆How to メイク:マスカラ〈2〉 まず、はじめは確実にまつ毛を挟めるようにする。鏡を見ながらあくまでも慎重に、決して一度にすべてのまつ毛を挟もうとせず、まつ毛の中央、目頭より、目尻よりとおよそ三回に分けて挟むようにする。 うまく挟めるようになったらカールをつける。まつ毛をうえに反り返るようにするのである。ここで注意してほしいのは、まつ毛を挟んだままビューラーを持ち上げても意味がないということ。これは単にまつ毛をひっぱってるだけで、カールをつけることにはならない。 ま

          『CROSS DRESSER』Vol.13

          『CROSS DRESSER』Vol.12

          ◆How to メイク:マスカラ〈1〉 これまでの過程で本来、黒いはずのまつ毛は、あたかも砂浜で遊ばせたマルチーズのように汚れてしまっている。厚化粧を免れない女装メイクにおいてマスカラは、まず汚れたまつ毛を黒に戻すという一義的な役割がある。その意味でも欠くことのできないアイテムである。 ビューラーとはまつ毛を整える道具である。これでまつ毛を挟み、ばらつきを無くし、まつ毛にカールをつける。この作業はマスカラを塗るための前準備として必須であるが、これが意外と難しい。 もともと

          『CROSS DRESSER』Vol.12

          『CROSS DRESSER』Vol.11

          ◆How to メイク:アイシャドー〈2〉 単色のアイシャドーの場合は指先でぼかし、濃淡と陰影、さらには立体感をだす。慣れれば濃淡2色を使い分けるより、こちらのほうが簡単で、仕上がりもわざとらしくなくていい。じっさい私もアイシャドーは単色を使用している。 チップを使い、まずアイラインに沿うように塗り、次に上まぶた全体を塗る。ここでチップを置き、あとは指先でぼかしていく。目頭から目尻にかけて指先でなぞるようにしてぼかしながら上へ上へと広げていく。そして最後はアイブロウの下ま

          『CROSS DRESSER』Vol.11

          『CROSS DRESSER』Vol.10

          ◆How to メイク:アイシャドー〈1〉 つづけてアイシャドー。この順序が人によって異なる。私はアイラインを引いてからアイシャドーを乗せるが、むしろアイシャドーが先という人のほうが多いかもしれない。 私がアイラインを先行させ、アイシャドーをあとから乗せるのは、そのほうがアイラインの細かなミス──ラインのかすれやギザギザ、小さなはみ出しをカバーできるからである。逆に言えばアイシャドーを乗せてからアイラインを失敗するというリスクを回避したいという意味合いもある。 通常アイシ

          『CROSS DRESSER』Vol.10

          『CROSS DRESSER』Vol.9

          ◆How to メイク:アイライン ファンデーションをつけおわり眉を描きおえたあとはアイライン。異論もあろうが私はこの順序。 およそメイクのなかでこのアイラインが最も難しい。そのくせ口紅やアイシャドーといったアイテムにくらべると派手さに欠けるので、ややもすると手を抜かれがち。なかにはめんどうがって描かない人さえいる。   これはいけない。アイラインはメイクのなかで最も重要なアイテムであり、その成否がメイクの明暗をわける。それはそのまま表情に顕れ印象を決定づける。ルージュを怠

          『CROSS DRESSER』Vol.9

          『CROSS DRESSER』Vol.8

          ◆How to メイク:アイブロウ〈4〉 私は小学校を卒業するまで、自分の眉が薄いのは不馴な床屋さんが誤って剃ってしまったからだと思っていた。中学生になって、それは床屋さんのせいではないと解ると、こんどはその薄い眉が不本意でならなかった。ヘアースタイルに命を賭け整髪料で頭をべたべたにしていた頃である。   ミクロゲンパスタを試みたのもその頃で、てかてかのおでこを洗顔クリームで洗ったあと、私はミクロゲンパスタを両の眉毛に擦り込んだ。が、今日塗れば明日生える式の即効性を期待して

          『CROSS DRESSER』Vol.8

          『CROSS DRESSER』Vol.7

          ◆How to メイク:アイブロウ〈3〉 あれこれ手を尽しても自前の眉を完全につぶすことはできない。せいぜい薄くなったという程度。まことにうらめしい限りだが、これはこれでよしとするしかない。 つぶした眉の上にアイブロウペンシルで引眉を書く。眉根から眉尻にかけて先細りの眉を引く。ラインは眉の中心、太さはそのラインを肉付けする程度、長さは小鼻と目尻を結んだ延長線上を目安とする。最後は朦朧体の筆法で柳眉の輪郭をブラシでぼかす。   眉引きのポイントはふたつ。ひとつは左右対称にする

          『CROSS DRESSER』Vol.7

          『CROSS DRESSER』Vol.6

          ◆How to メイク:アイブロウ〈2〉 この目の上のコブならぬ眉を処理するうえで、欠かせないのが普段の手入。まず自前の眉からはみ出ている毛を毛抜きで抜き、眉の輪郭を引き締める。特に上まぶたと眉のあいだに生えている毛は根絶やしにする。   次にまゆ用ブラシでブラッシング。毛並みを整え、眉からはみ出ている長い毛をハサミでカット。これだけで顔の印象もメイクの仕上りもずんぶんとちがう。ただし、くれぐれも身だしなみの範囲を逸脱しないように。   そしてここからがメイク。まず自前の眉を

          『CROSS DRESSER』Vol.6

          『CROSS DRESSER』Vol.5

          ◆How to メイク:アイブロウ〈1〉 目、鼻、口──顔も局部的に見れば男女の違いはあまりない。まして顔は千種万様。女のような豊頬の男もいれば、男のように骨っぽい顎の女もいる。髭や化粧といった手掛りがなければ、顔の一部分だけで男女を識別するのは意外とむずかしい。   ただ眉だけは違う。眉には男女の違いがはっきりでる。むろんそれはほとんどの女性が眉に手を入れているからなのだが、まれに見かける人跡未踏の原始林のような眉でさえ、やはり女性の眉は男とは違う。   眉を女らしく見せる

          『CROSS DRESSER』Vol.5

          『CROSS DRESSER』Vol.4

          ◆How to メイク:ファンデーション〈4〉 私が使っているファンデーションは国産の低額ブランド品である。なにしろ消耗がはやいのでファンデーションだけは高級品は使えない。さらにこのブランドはどの店でもセルフ・セレクション――ラックに吊るされて売られているので補充がしやすい。色気づいて以来、私が愛用するゆえんである。愛用の品に不満があるわけではないが、ファンデーションについていえば、私はかねがね夜専用ファンデーションがあればいいと思っている。 私は女装外出もするが、それは決

          『CROSS DRESSER』Vol.4