『CROSS DRESSER』Vol.17
本作は女装How toメールマガジン『CROSS DRESSER』をリライトしたものです。
◆How to むだ毛のお手入れ：カミソリ刃付コーム〈２〉
じつはこのコーム、金のない色男なら誰しも一度は考えるように、これで床屋代を節約しようと数年前に購入し、これで床屋代を節約しようとした色男なら誰しもそうであるように、買ったその日の最初の一梳き目を失敗し（毛先を切るつもりが根元から切れてしまい、そこだけが間伐されたようなハゲになってしまった）それを修復しようとあわてて入れた二梳き目を失敗し、これはいかんと立て続けに入れた三梳き、四梳き目を失敗し、こうなったら後には退けんと矢継早に入れた五梳き、六梳き、七梳き目をことごとく失敗し、ついには見るも無惨なタイガーカットと成り果て、これでは出歩くこともかなわず、結局は帽子を深々とかぶり床屋に駆け込んだあの日以来、見ないようにしていたものなのである。
このカミソリ刃付コームの利点は速さにある。くるぶしから太腿まで、下から上へ、いっきに切ることができる。その手際は切るというより剃るに近いが、カミソリと違い刃が直接肌に触れることはない。
それゆえ早くでき、またそれゆえどうしても切り残しがでる。二三ミリの短い毛が禿山の切株のように残ってしまう。これが汚い。なんといっても美しくない。もっと根元から切らなければいけない。
◆Nightcap〈17〉
私はすっかり女になったような気分で、思いつくかぎりのポーズをとった。横をむく。背中をむける。机によりかかってタバコを吸う。イスに腰かけて脚をくむ。四つん這いなる。ひざまづいてのけ反る……。
それぞれのポーズの細部に、背中の白いストラップに、網タイツをひっぱるガーターベルトに、陰嚢をつつむスキャンティのふくらみに、毛穴が赤く腫れた鼠蹊部に、淫靡な天使が宿っていた。
総じてディテールはいいがプロポーションはだめ。ウエストがくびれていないため、すこしも女らしくない。太鼓腹というのではなく、スリーサイズの差が小さすぎるのである。
Thanks reading, See you…
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