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20年経っても変わらない日本~『創竜伝13<噴火列島>』(田中芳樹)~

ようやく竜堂兄弟が日本に戻ってきたと思ったら、衝撃の展開です。ひょっとして前巻の外伝はそのフリだったのかと思いますが、何と天敵小早川奈津子と手を組むことになってしまいます。まさに敵の敵は味方の論理です。

↑kindle版


今巻が私が買っていたものでは最後にあたるのですが、小早川奈津子が京都で幕府を開いたこと以外、ほぼ何一つ覚えていませんでした(^-^;

↑新書版。私はこのバージョンで読みました。


印象に残った部分。


「何にも悪いことしてないのに、姿形が気にいらないからって、いきなり撃つのか。アメリカ軍だったら、よその国でどんな暴力的なことしたっていいのかよ!」

友達の仙獣をアメリカ兵に撃たれた終の台詞ですが、2003年6月に出版された当時の時代背景が感じられます。2001年9月の同時多発テロを受けて翌月からアフガニスタンへの空爆が始まり、そして2003年3月からイラク戦争が始まったわけですから。


「このままだと、かなりの数の人たちが日本をすてて海外に脱出するかもしれんな」
(中略)
「どこの国が日本人を受け容れてくれるっていうんだ? 日本はいままで移民をまったく受け容れなかった。難民も、追い返したり、罪人あつかいして収容所に放りこんできた。そんなことをやってきた日本人が難民になったとき、さて、どうなるか。まあ、おれ自身もそのひとりになるとして、末路をぜひ見とどけたいもんだ」

作中の日本が大地震と富士山の噴火に見舞われ、大変なことになっていることを受けての登場人物たちの会話ですが、それこそ約20年経っても、移民や難民に対しての日本のあり方が変わっていないことに、暗澹たる思いになります。


「無機物にまで同情する性格(タチ)」で、灰や泥で汚れた4WDには「洗ってやらないとかわいそうだよなあ」と言い、自分のフードつきブルゾンも「とっくに減価償却しているよなあ、ご苦労さま」といたわる終には笑いました。


さてさて、最終巻まであと2冊ですが、この後は初めて読む部分なので、いったいどういう展開になるか楽しみです。


見出し画像は、あまりそれっぽく見えませんが、作中で大噴火を起こす富士山です。



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