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【読書】真人間の茂兵衛~『上田合戦仁義 三河雑兵心得(九)』(井原忠政)~
家康、信長をはじめ、この時代の有名人になぜか会い、かつ結構気に入られてしまう茂兵衛の話も、9巻目です。「姿形に似合わず人たらし」(p.152)と、家康に称されていますが。
↑kindle版
一般に、主人や上役から見て、家臣や下役の愛嬌は優先順位の低い資質と言える。面白みや可愛げがなくとも、仕事をちゃんとこなす男の方が有難い。(中略)しかし、下役から見る場合、上役の資質としての愛嬌は、必須の項目となる。どんなに優秀でも、愛嬌の無い――面白みのない上司に仕えるのは鬱陶しいものだ。
こういう風に考えたことはなかったので、面白いです。
(たァけ。こけ脅しの飾りなどであるものか。兜と面頬に、俺ァ幾度も命を救われとるがね)
と、茂兵衛は内心で防具の名誉のために憤慨した。
防具の名誉のために憤慨してしまう茂兵衛が、ちょっとおかしかったです。
「俺にとっての上田茂兵衛は、生涯『お頭』ですがね」
彦左のこの言葉、本当に茂兵衛は嬉しかったことでしょう。苦労して育てた甲斐があったと。
茂兵衛が家康から、ついに「植田」ではなく「茂兵衛」と読んでもらえるシーン、なかなか良かったです。
「大事なことをきちんと覚えておっただけでも偉い。今後も励めよ、花井」
阿呆の花井くんの良い点を、無理にでも探して褒め、そして励ます茂兵衛、相変わらず教育者の鑑です。
(俺のような真人間が、あんな大噓つきの大悪党に太刀打ちできるかいな)
うーん、茂兵衛が自分のことを「真人間」と言うようになるとは、一巻の冒頭を思うと、隔世の感があります。まぁ実際、確かになんだかんだ言って真人間だとは思いますが。
田圃を焼かれた農民の怨嗟の矛先は、なぜか火を放った敵側には向かわない。
「うちの殿様は、俺らを守ってもくれねェ」と、敵の凶行を許した不甲斐ない領主に向かうものなのだ。
ロシアが今、オデーサの穀物倉庫を攻撃する理由は、これでしょうか。
それにしても第一次上田合戦における真田の戦い方、容赦がなさすぎで、読んでいて疲れました。
茂兵衛の中で、昌幸に対する敵愾心が沸き起こっていた。正々堂々とはほど遠い、手練手管の限りを尽くした戦だ。小が大を喰おうとするなら、この手の戦い方しかないのは分かるし、卑怯と詰るのは止めておくが――それにしても、ムカッ腹が立つ。
今巻は、かなりとんでもないところで終わっているので、次巻を早く読みたいです。
見出し画像には、「みんなのフォトギャラリー」から上田城の写真をお借りいたしました。
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