見出し画像

面白くなってきました~『かわたれどき まんまことシリーズ7』(畠中恵)~

*この記事は2020年7月のブログの記事を再構成したものです。


畠中恵の「まんまことシリーズ」第7弾です。主人公の麻之助もようやく亡くした妻のお寿ずの名を口にしなくなり、いよいよ後添えをもらう話が本格化してきます。

↑kindle版


と思ったら、冒頭であっさり、後添えの有力候補だったおこ乃ちゃんの嫁入りが決まります。でもじきに別の有力候補が、しかも二人も登場!


お寿ず亡き後の「まんまことシリーズ」は正直あまり好きになれなかったのですが、ここにきて面白くなってきました。麻之助も「はたらきもの」という章もあるくらい、今巻はやけに真面目に働いております。


最後の最後に、後添えの件について1つの答えを出した麻之助ですが、さて次巻以降どうなることでしょう。


今回心に残ったのは、「まちがい探し」の章。自分のやりたい仕事がある登場人物が出てくるのですが、その登場人物は、自分がやりたいことだけをやれると思っているのです。やりたいことにつきまとう、嫌なことはやりたくないし、そもそもそういうことがつきまとう可能性にすら気づいていなかった。それではいくら才能があっても、仕事をする資格はないわけです。


その章が心に残ったのは、ある教え子のことを重ね合わせたからです。ここから先は、個人的なつぶやきですので、読み飛ばしていただければ幸いです。


最近、久しぶりに思いがけずその教え子の消息を聞きました。学生時代から非凡なものを持っており、将来が楽しみだったものです。卒業後、いろいろ試行錯誤し、失敗もしつつも、まぁ順調に自分のやりたいことの実現に向けて、がんばっていると聞いていました。


でもその子は今回、まだそんなに長くは勤めていない職場を辞める決意をしました。「今の職場では、自分のやりたいことができない」というのが、その理由です。10年後や20年後ではなく、「今」、自分がやりたいことをやりたいのだと……。


「今の感性を持っている自分で、やりたいことをやりたい」という主張が、間違っているとは思いません。でもやはり、今この時に辞めることに、私は賛成できませんでした。その職場でもやれること、やるべきことはたくさんあるはずだからです。あともう数年いてから辞めたって、遅くないのに。


だけど、そう考える私こそ、甘いのかもしれません。何せこのコロナ禍の渦中です。その子だって感染し、重篤になる可能性がないわけではありません。災害や事故に巻き込まれるかもしれません。その時、やりたいことが出来ない職場にいたままでは、その子は後悔することでしょう。


ということは、私に出来るのは、応援することだけですね。これからもまだまだ試練にぶつかることでしょうが、どうかその前途が明るく、世の中を良くしたいというその子の夢が叶うことを祈っています。


↑単行本



この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

記事の内容が、お役に立てれば幸いです。頂いたサポートは、記事を書くための書籍の購入代や映画のチケット代などの軍資金として、ありがたく使わせていただきます。