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突然、ジュブナイルマンガに~『プリニウス 11巻』(ヤマザキマリ、とり・みき)~

楽しみにしていた、プリニウスの最新刊です。

↑kindle版


前巻までのネロをめぐるドロドロぶりから一転して、若き日のプリニウスのエピソードが描かれます。突然ジュブナイル小説ならぬジュブナイルマンガになってしまい、驚きました。でもドロドロぶりにやや食傷気味だったので、一服の清涼剤のようで良かったです。


それにしても、少年時代のプリニウス(マリさんたちは「プリ子」と呼んでいたようですが)の可愛いこと! アルプスのふもとのコムム(現コモ)の自然の中での日々、友人との出会いと別れなど、ジュブナイル小説の要素てんこ盛りです。

なおコムムで育ったというのは、説の1つでしかないようです。でもコムムの自然の中で遊び、観察を続けていたからこそ、大人になってからのプリニウスは頭でっかちではなく、現場主義だったというのが、マリさんたちの解釈なのでしょうね。だからこそ、あのような最期を迎えることになってしまうわけですが。

一方で恋愛については、思わずマニュアルに頼ろうとしてしまうところが可愛いところ。少年時代が結構たっぷり語られただけに、青年プリニウスについては、もう少しだけページを割いてほしかった気もします。


印象に残ったのは、まずプリニウスの父の言葉。

人間は体だけではなく知性を磨いたところでやっと、コムムの森の動物たちのような賢さを身につける事ができるのだ。お前はローマに行って、ここで学んだ物を失うのではない。この世界をより深く理解するために行くのだよ。


そして「山が爆発するって、どんな感じなんだろう…いつか見てみたいなあ…」という少年プリニウスの言葉は、彼の将来を知っているだけに、切ないです。


しかし『プリニウス』を発売日に読み、しかも感想までアップしたのは、初めてのことです。何せここのところ、電子書籍なのに「積ん読」が続いていたので。


いよいよ次巻はクライマックスに向かっていくようで、楽しみです。


見出し画像には、コムムから見えるものと似ているかは定かではありませんが、アルプスの写真を使わせていただきました。


↑コミック(紙)版



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