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懐かしい仲間たちとの再会~『龍花艶舞~四龍島夜曲~』(真堂樹)~

「四龍島」シリーズは最初の数巻を除き、発売と同時にリアルタイムで読んできた作品です。なのにこの『龍花艶舞』が、電子書籍限定で2年半も前に出ていたとは、不覚にも知りませんでした。


表題作の「龍花艶舞~四龍島夜曲~」は、懐かしい仲間たちに再会したような嬉しさを感じつつ、楽しく読み進めることができました。真堂さん自身、「あとがき」で「故郷に還ってきた気分」「物語の流れと自分の呼吸が一つになって、うねり、息づき、疾走する感覚が懐かしい」と書いていますが、同感です。真堂さんはやはり「四龍島シリーズ」が、一番本領発揮な感じがします。


もう1本の「船友」はというと、これはこれで真堂さんの本領発揮なんですよね。うじうじする男性が出てくるという意味で。うじ男が主人公の別の作品が、「お坊さんとお茶を」シリーズですが。


以下少しだけ、このシリーズ全体の感想を書かせてください。


このシリーズは、言うまでもなくBLに分類されるのでしょうけれど、純粋に作品として優れているので、そう分類されることで損している気がします。文章自体も話の展開も、本当に達者ですし。特に伏線の貼り方が絶妙。真堂さん自身、どの段階で物語の結末をどうつけるかを考えていたのか分かりませんが、「あれがこうつながるとは!」と瞠目させられたものです。


上記の通り、私はほぼリアルタイムでこのシリーズを読んできたわけですが、作中の言葉に何度励まされたか分かりません。例えば、大学を出て最初に就職した学校で、早々に壁に突き当たった時、『龍は炎帝を追う』の中の以下の言葉に心を揺さぶられました。

夏とはそもそも、求めるところへ、一途に向かう季節なのだ。
苛烈な暑気に煽られて、からだに心が従う、季節であるのだ。

『龍は炎帝を追う』p.154

大学を出たての新人教師なのだから仕方がないとはいえ、授業がうまく進められず、生徒の私語がどんどん増えていったんですね。もちろん、私自身の至らなさ故であり、その自覚は当時もありました。でもまだ青かったもので、「一度生徒たちとしっかり話をしないと、私にとっての『夏』は来ない」と思い、上記の言葉に押され、授業を1回潰して、私の思うところを生徒に向かって語ったわけです。

結果どうだったかといえば、まぁそれをしないよりは、ましだったかなと思います。生徒から、手厳しいことも言われましたが、彼女たちがどう感じていたかが分かり、少しは私自身、変わることができた気がするので。


他にも、作中の展開と読んでいる私が当時抱えていた事情がリンクすることがあったりして、ある意味このシリーズを読んでいなかったら、20代・30代の私は、精神的にもっと厳しかったかもしれません。

しかし今巻の説明に、「シリーズ25周年を飾る特別番外編」とあったのには、参りました。まさに、綾小路きみまろではないけど、「あれから25年」状態です。そんなに経っていたとは……。それこそ真堂さん同様、「彼らが一つしか年をとっていないことに若干ジェラシー」です。


見出し画像は2022年の春節の時に撮った、横浜中華街のランタンです。建物の壁に、偶然ながら「龍」の字もあるので、良いかと思いまして。



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