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ちょっと話がややこしい気が~『遺跡発掘師は笑わない 九頭竜のさかずき』(桑原水菜)~

「遺跡発掘師は笑わない」シリーズの第13弾です。今回の舞台は、福井県です。


今巻は大きなテーマとして、遺跡発掘と化石発掘の二足の草鞋を履く無量の迷いがあります。二足の草鞋と言えば聞こえは良いけど、どちらも中途半端になっているのではないかと。

ネタバレギリギリではありますが、今回は二足の草鞋を履いている無量だからこそ、事件解決の糸口をつかむことが出来ます。でもあくまでこれはお話だからうまくいくわけで、現実には二足の草鞋は厳しいですよね。私もある意味二足の草鞋を目指しているので、ちょっと胸に刺さるテーマでした。


しかし水菜さん、相変わらず話をややこしくしてしまうなぁ。今巻も、ちょっと設定がややこしすぎるうえ、登場人物がいささか多すぎな気がしました。具体的に誰が、ということは言えませんが、もう少し登場人物を絞った方が、話が分かりやすくなると思います。盛り込みたいことが多いのは分かりますが。


あと、福井に馴染みのない人に位置関係を分からせるための工夫なのでしょうけど、しつこく山手線や総武線の駅名に例えているのが、ちょっとあざとかったです。


印象に残った所。


補償コンサルタントという仕事は初耳でした。公共事業において、地権者から土地を得るための「調査や交渉を、事業者の代わりに請け負う」仕事だそうです。確かに事業者が直接地権者と交渉を行うと、こじれることもあるでしょうし、そういう仕事も必要かも。


「曹洞宗のお葬式は、個人を仏門に入らせ、釈迦の弟子と成すためのものだそうです。個人に授戒して僧と成し、儀式の間に悟りを開かせ、超特急で仏の世界に送り出すんです」

ちょっと解釈としてゆるいような気もしますが、とても分かりやすい説明でした。しかし曹洞宗のお葬式、この本の説明だと、ちょっと派手そうというか、賑やかそうです(曹洞宗の方、表現に問題があって、申し訳ありません)。


「昔は石や陶器にも漆を塗ったんだ。釉薬が発達したせいで廃れてしまったが、(中略)漆は万能塗料で布にも金属にもプラスティックにも塗れるから」

漆、もっと使うべきのように思いました。


なお大野藩の話が出てくるのですが、どこかでこの話は読んだようなと思ったら、畠中恵の小説でした。あれは面白かったです。


無量と萌絵ちゃんの関係も、ちょっとだけ近づき、今後の展開が楽しみです。


見出し画像には、福井駅前の恐竜さんの写真を使わせていただきました。



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