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相変わらず、ちょっとややこしい~『遺跡発掘師は笑わない 三体月の呪い』(桑原水菜)~

「遺跡発掘師は笑わない」シリーズの第14弾です。今回の舞台は、和歌山県です。

↑kindle版


前巻と違い、今巻は割と登場人物も多すぎず、話もややこしすぎず、するする読めました。……前半は。後半に入り、歴史上の人物も含め、突如登場人物が増え、話もややこしくなってしまいました。水菜さん、どうしてもやめられないようです。

今巻の、一番ウケたところ。

「だめだ、僕には永倉さんみたいなトンチキな味が出せない」

忍の台詞ですが、確かにその通りではあるけど、「トンチキ」という言葉を使う君も、案外トンチキだよ。


ちょっと考えさせられたところ。

「おぬしらは学究の名のもとならば、なんでも許されると勘違いしてないか? 故人の秘密を暴くことも正義になるとでも? 故人にだって尊厳はある。学究の名のもとならば墓暴きも許されるなどと思っているのだとしたら、それは考古学というものの慢心であり、傲慢ではないのか」

考古学者はいわゆる墓泥棒のことは非難しますが、でも正当な手続きの元、手順を踏んで発掘してはいるものの、ある意味やっていることは墓泥棒と同じ「墓暴き」になってしまうことを、鋭く指摘しています。例えばツタンカーメンだって、黄金のマスクや様々な副葬品を博物館での展示のために、いわば「取り上げられて」しまったわけだし、気の毒ですよね。でもやはり、「過去のことを知り、現代に生かす」ためにも、発掘には正当性があると思いますが。


作中にみかんの「和歌山剥き」の話が出てくるので、見出し画像にはみかんの写真を使わせていただきました。

↑文庫版


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