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新井素子はすごい~『ひでおと素子の愛の交換日記』(新井素子、吾妻ひでお)~

作家の新井素子と漫画家の吾妻ひでおの共著で、新井素子にとっての初のエッセイ集です(一部、小説もあり)。

↑単行本(古本の値段です)


片付けものをしていたら出てきたものです。ばっちり、上の画像のものですよ。読まねばならない本は沢山あるというのに、つい完読してしまいました。


というのも、訳の分からない面白さがあるし、何といっても文章が達者なのです。19歳から22歳にかけての女の子が書いたものとは、信じられない。だからこそ、発売から37年(!)も経った本が完読できるのだと思います。


もちろん、否が応でも時代性は出てしまいます。新井素子による吾妻ひでおの描写は、「容貌自体は、はらたいら風良識派ハンサム」だし、竹宮恵子の仕事場に電子ロックや全自動洗濯機、ロールカーテン(恐らく)があることに驚いているし。ちなみにセントラル・クリーナーは、いまだに普及していませんね。日本の住宅向きではなかったのでしょう。


笑ったのは、新井素子による田原俊彦の描写。

「凄い恰好してるね。彼、あれじゃとても街に出られない。(中略)街に着て出られない服って、邪道みたいな気がする。それともあの人、あの格好して街歩くのかな」

そんなこと言ったら、今時ほとんどのアイドルは街に出られない気が……。


そして、『ふたりのかつみ』の原型の話が載っていることに、ちょっと感慨を覚えました。構想はこの頃すでにあったのね。


1982年の初夢の描写に出てくる、以下の文章も地味におかしかったです。

困った。スティーブン・キングの世界なら、おそらくご都合主義は通用しまい。

新井素子の世界は、ご本人も書いているように、ご都合主義ですものね。でも、決して感じの悪いご都合主義ではなく、逆に新井素子ワールドという感じで好きですが。


映画「クラッシャージョウ」のラッシュについての以下の描写には、隔世の感がありました。

映画自体は。動きがとってもよかった。(なんて言える程、アニメに詳しくないんだけど――見てて雰囲気が紙芝居っぽくないっていうか、ぎくしゃくしてないっていうか……とってもスムースに動いてるって感じ)

正直、読んだ瞬間は意味が分かりませんでした。でもそれは、今となっては宮崎アニメ等で、上記の描写は基本すべてのアニメにおいて当然だからですね。むしろ雰囲気が紙芝居っぽいアニメのほうが珍しいと思う。うーん、アニメも進化していますね~(感想がおかしい)。


そして有森裕子よりずっと前に、新井素子が自分が大学を4年間で卒業したことについて、「なんか、自分で自分をほめてあげたい」と言っていることにも、ちょっとびっくり。


新井素子のすごさを、改めて感じました。機会を見つけて、手持ちのものを読み返したいです。未読のものも意外とあるので、それも読みたいけど、時間が……。


見出し画像には、「みんなのフォトギャラリー」で「日記」で検索したら出てきた、可愛い画像を使わせていただきました。


↑文庫版(こちらも古本です)

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