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見仏コンビが悟りを開く日も、近いかも~『見仏記6 ぶらり旅篇』(いとうせいこう、みうらじゅん)~

『見仏記』シリーズも、ついに6巻目です。

↑kindle版


1巻から立て続けに読んできたわけですが、見仏コンビ2人の変化には目を見張るものがあります。仏像にしか興味のなかった2人が、庭や上人像を鑑賞するようになったのは、最大の変化と言えるでしょう。この記事の見出し画像を、毎度おなじみ浜松の龍雲寺の前庭にしたのは、それが理由です。


なぜ庭にも興味が出てきたか。それは「庭は生きた植物で出来ており、つまり生物を使って一定の抽象観念を伝えている」から。そして、

いまや見仏は仏像のない場所でも行われ得る。夕焼けを見てもご老人を見ても、道を通りすぎる猫を見ても見仏記は即座に始まる。仏でないものなど、この世にあろうか。

こんな境地にまで達してしまった2人がどこまで行くのか、ちょっと怖いほどです。2人は悟りを開いてしまうのかもしれません。


今巻も相変わらず、2人の鋭い考察が目白押しです。みうらじゅんの、

神さまは目に見えないからこわいけど、習合すると形になってこわくなくなる

とか、いとうせいこうの、

仏像はこうして、見る人間の状況、体調によっていくらでも伝えることを変える。それが私にとっての仏像の魅力のひとつだ。人間の似姿をとる仏像の中に、我々は自己を投影し、自己カウンセリングのように様々な発見をする。

とか。


一方で、もちろん2人の妙なところも健在です。おそろいの数珠に、おそろいの紬の数珠入れ(色違い)ですか……。以前、佐渡ではおそろいの海パン、おそろいのビーサン、おそろいの水中メガネを買っていたし。あ、おそろいの仏像っていうのもありましたね。


なお自分への備忘録的に書いておきますが、この巻を読んで、行ってみたいところが3か所あります。


・キトラ古墳

「バーチャルな宇宙旅行に送り出されるようにして、被葬者の遺体は横たわった」。そういう埋葬方法なら、死出の旅も怖くないかもしれません。


・頭塔

これ、5巻の感想で書いた新薬師寺の宿坊に泊まった帰り、発掘現場をちらっと見た記憶があります。一種のピラミッドなのですが、8世紀末に作られたもの。四角錘の上部に五輪塔が建っていて、その真下に心礎があるそうです。

どのような地の力を、古代の人々は空に打ち上げようとしたのか。あるいは空の力を地の底に吸い取ろうと考えたのだろうか。そこには”科学”めいたものがあった。

こんな考察を読んでしまったら、行かずにはおれません。

<追記>

発掘現場を見た、と書きましたが、もしかしたら私は頭塔ではないものを見たのかもしれません。2022年3月、頭塔の近くに行って気づいたのですが、位置関係からいって、頭塔を見た可能性は低いことに気づきました。

下が頭塔の写真です。

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・蚕の社(木嶋坐天照御魂神社)

渡来人の秦氏独特の、三本足の鳥居があるそうです。社務所の案内書には、ネストリウス派キリスト教の遺跡と書かれているとか。いやいや、すごすぎます。


何はともあれ、早くこういったところに好きに行けるようになってほしいものです。

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