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【読書】お寿ずさんなら……~『おやごころ まんまことシリーズ9』(畠中恵)~

畠中恵の「まんまこと」シリーズ第9弾です。

↑kindle版


持ち込まれる厄介ごとを麻之助が片付けていくのが、シリーズのテーマとはいえ、何だかシリーズを追うごとに、勝手なことを言う登場人物が出てくることが増えており、そこはうんざりします。特に「たのまれごと」のお駒は最悪。友人の夫に、どのタイミングで入荷するか分からないレアな袋物をお願いするなんて、ありえません。「久方ぶりに前々からのお友達に会って、頼み事をされたんで、嬉しかったんです」(p.57)とお和歌は言っていましたが、お和歌さん、そんな人は友人ではありません。人を利用しているだけです。


そして今回、私の中で評価が下がったのが、そのお和歌さん。「こころのこり」での出しゃばりは、それが事件の解決につながったとはいえ、ちょっと嫌な感じ。亡くなったお寿ずさんなら、そんな真似はしなかったか、もう少しうまくやった気がする……なんて言うと、小姑のようですが。

加えて「よめごりょう」でも、ある意味お和歌さんが、騒動の1つを引き起こしたきっかけでした。まぁそもそものきっかけは麻之助とも言えますが、お和歌さんはちょっと浮ついているような気が。


「芸事の仕事で、長く売れ続けるのは難しい。絵師として生きていくには、絵の技量以外に、立ち回りの巧さも必要なのだ。この歳になって、身に染みておる」

p.40

絵のお師匠さんのこの言葉、畠中さん自身の実感でもあるのでしょうね。


人に話すことは、己の為にもなる。事を過不足なく語れているか、間違っていないか、もう一度考えてみることになるからだ。

p.43

教員として、日々実感することです。だから、教室で一番勉強しているのは教員なのです。まして複数のクラスで同じことを何度も話せば、なおのこと。


硬い内容の本を扱う書物問屋も、軽い読み物や、浮世絵を扱う地本問屋も

p.90

そういう区別があるのですね。


町奉行の片腕である内与力は町奉行自身の臣下

p.219

なるほど、与力とは別に、内与力というのがいるのですね。


江戸では髪型や着る物を見れば、相手の身分がかなり察せられる。笠一つにも、立場によって差があるのだ。

p.241

笠にも違いがあるとは知りませんでした。


今回、どうしても気になったのが、「終わったこと」の終わり方が唐突だったこと。あと1ページあれば、すっきり終わる気がするのに。連載の際のページ数の関係で、中途半端にぶっちぎったのかと思うほどですが、それなら書籍にした際に書き足せば良いわけで、もちろん畠中さん的にはあれで良いのでしょう。以前も何かのお話しで畠中さんは、ああいう感じの唐突な終わり方をしているし。結末はもちろん想像がつくとはいえ、何となくモヤっと感が残りました。


などと文句を言いつつも、新刊が出れば読むわけですが。


↑ハードカバー



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