この本は新聞広告で存在を知ったのですが、広告中の「『わからなかったら質問して』は通じない」という部分に衝撃を受け、ぜひ読まねばと思いました。
↑kindle版
私は授業の節目や最後に、必ず質問の時間を設けているのですが、「質問のある人」と言っても、まず手が挙がらないことが常なのです。そのくせ、授業が終わった直後に質問に出てきたり(1分前に手を挙げなさい)、友達同士で分からないところを相談し合った結果、間違った結果に到達したりすることが多いので(だから遠慮なく質問しなさいって)。
読んで判明したのは、若者は何しろ目立つのが嫌いで、だから質問しないのだということ。いや、それは実は読む前から薄々わかってはいましたが、ここまで徹底されているとは……。
なんたって、「大学生が選ぶ嫌いな講義ランキング」の1位が「当てられる」なのです。
著者の金間さんならずとも、力が抜ける結果です。
次に唖然としたのが、この部分。
皆の目の前で質問することに抵抗があるのだろうとは、さすがに思っていたので、Teamsの授業のチームで投稿する形で質問してもいいことにしても、ろくに質問が出ない理由は、これでしたか。Teamsだと、誰が質問したかは分かりますものね。
そして本書の題名でもある、「皆の前でほめないでください」と若者が言う理由。
2つ目の理由については、薄々分かってはいたので、私はレポートなどの返却時に生徒の良い意見などを読み上げる時、誰のだと言うことはしていません。「皆の中から出てきた良い意見」などという言い方をして、匿名性を保っています。しかし、「ほめ」=「圧」のレベルまで達しているとは思いませんでした
第二次ベビーブーマーの一員としては、競争が苦手と言われても、という気がします。私自身、競争は得意とは言えませんが、「平均点を取りに」いこうとは思いません。
うーむ。
だんだん頭を抱えたくなってきました。
上司がいい子症候群の部下に、「わからなくなったらいつでも聞いて」と言ったのに、一向に聞きにこないので、さらに「どんなことでも聞きゃいいんだよ」と言ったと仮定した時のリアクションが、またすごいです。
これを読んで、はたと思ったのが、私の近年の疑問である、生徒が記号問題を空欄にする理由。
まさかと思いますが、生徒は間違えるのが嫌だと思う気持ちが強いあまり、「間違える可能性が少しでもあるのなら、そもそも記号問題を空欄にするという結論に至」っているのでは……。まぁかといって、回答してある部分が必ずしも正答率が高いわけではないのですが。
名指しで質問された時のリアクションも、すごかったです。
そうですね、確かに彼らは固まりますね。そしてこちらは、しびれを切らしますね。
ではなぜ若者はそうなってしまったのか。金間さんの推測はこうです。
大人のせいとはいえ、今後の見通しは暗いです。
話の流れからは外れますが、これ、面白いです。
これも興味深いです。
日本人は困っている人に声をかけることが少ない、共助が苦手、という話の流れで出てきたものですが、翻って、自分が困っている時に声を上げることも少ない、というのにつながると思います。
まずいです。
第9章の最後の、大人へのメッセージは重いです。
もちろん、若者へのメッセージも。
大変厳しいことを若者に言っているようですが、第10章での最後にある金間さんの若者へのメッセージは、とても温かいです。
ちなみにメモについてですが、最近の生徒は本当によく取ります。取りすぎて、逆にどこが重要か分からなくなるくらい取ります。
生徒を少しでも理解するために読んだ本ですが、自分自身にも当てはまる部分もあり、ぐんぐん読み進めることができました。私も金間さんに、背中を押された気がします。
↑単行本