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福士誠治の解説が秀逸~『まったなし まんまことシリーズ5』(畠中恵)~

*この記事は、2019年1月にブログで公開したものに加筆修正を加えたものです。


畠中恵の「まんまことシリーズ」第5弾です。主人公の麻之助は、ようやく妻のお寿ずを亡くした悲しみからほぼ立ち直ったものの、今巻では親友清十郎の嫁とり問題が表題作通り、「まったなし」となります。その通しテーマの下、各短編ではこれまで通り町名主の跡取りとして、様々な問題の裁定に関わるわけですが……。

↑kindle版


裁定の対象となる事件の当事者たちが、ありえないほど身勝手だったり、善悪の区別がつかなかったりするので、読んでいる側も麻之助たちと共に頭を痛めてしまいます。このシリーズは、江戸時代を舞台に21世紀の現代の問題を扱っている面もあるので、そういう人物が登場するのでしょう。


今巻で残念だったのは、麻之助のもう一人の親友である吉五郎があまり登場しなかったこと。堅物なのに、結局は麻之助たちの親友なだけあって無鉄砲な吉五郎、結構好きなんですけどね。代わりに、新たに登場した女性陣の活躍が目立ちました。彼女たちは、これからもきっとレギュラーとして活躍するのでしょうね。ということは、ますます吉五郎の出番は減るのかも……。


あと、福士誠治の解説が予想以上にうまく、驚きました。福士誠治は、NHKの「まんまこと~麻之助裁定帳~」で麻之助役を務めたことから、解説を頼まれたのだと思いますが、純粋に書評として上手な、魅力ある文章だと思います。同じドラマでお寿ず役だった南沢奈央も書評の仕事をしていて、別の本で結構良いことを書いているのを読んだことがあります。


俳優さん・女優さんと文章を繋げて考えたことは、これまでありませんでした。でも考えてみれば、台本を読む読解力がないと良い演技は出来ないわけで、華やかなだけではなく、国語力が求められる仕事なのですね。


次巻を読むのが楽しみです。

↑文庫版



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