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アメリカにおける「保守主義」とは~『新生 生命の教養学X』(慶応義塾大学教養研究センター、高桑和巳編)~

*この記事は2019年1月のブログの記事を再構成したものです。


このシリーズは、各分野の研究者のオムニバス講義という形をとっていますが、今回も脳科学などの自然科学系から、ペトラルカとボッカッチョについてなどの人文科学系、マーケティングなどの社会科学系と、「新生」をキーワードに幅広い分野を扱っています。


これの前の巻にあたる『成長 生命の教養学Ⅸ』の感想で、「9巻まで読んだ中では、多分今回が一番面白く、結果的に読了までも早かった」と書きました。でも今回は更に面白く、読了までも早かったです。


中でも印象に残ったのは、まず岸由二先生の「都市における流域思考の自然再生」。小網代の再生の話が出てくるのですが、実は私は中高生の頃に生物の先生の影響で、小網代の保全運動にちょびっとだけ関わったことがあります。小網代のアカテガニとかが印刷された絵葉書を、まだ当時は国会議員だった石原慎太郎ら政治家の方々に年賀状として出して、保全を訴えたものです。岸先生の文章から、多くの人たちの活動が実り、小網代が単に保全されただけではなく、湿地が再生しつつある様を知り、感慨深かったです。


なお、後日、小網代の森を訪ねる機会がありました。この記事の見出し画像は、その時に撮ったものです。訪問の詳細は、以下の記事をご覧ください。


また、岸先生が紹介されている当時の皇太子殿下の御著書の感想は、以下のとおりです。


あと、渡辺靖先生の「アメリカ大統領選に見る新生の儀礼」も衝撃でした。アメリカにおける「保守主義」とはヨーロッパとは違い、政府の力をできるだけ小さくしておくことで、「リベラリズム」は、人間が自由に生きるために政府の一定の介入を認めるものである、という説明に、目から鱗が落ちる思いでした。

保守主義・リベラリズムを問わず、アメリカ人の中にあるのは、放っておくと自分たちに害を及ぼしかねない政府への不信感であり、国際連合はいわば究極の「大きな政府」なので、あまり力を持たせたくないわけです。銃規制の問題の根底にあるのも、銃を政府が暴走した時に、それを打ち倒す権利・手段とみなしているから、ということになります。


また参考になったのは、清水聰先生の「マーケティングにおける新生」の中の言葉。「(情報)感度の高い人は利用シーンを言うということです。(中略)その商品がいいか悪いかだけではなくて、どのようなところで使えるか――俗にTPOといいますが――、それを盛り込んでしゃべれるのが感度の高い人です」。これ、ブログを書く時や人と話す時に、ぜひ心にとめたいと思いました。




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