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努力の人、みうらじゅん~『「ない仕事」の作り方』(みうらじゅん)~

みうらじゅんの単著第2弾として読んでみたのが、『「ない仕事」の作り方』です。

↑kindle版


題名通り、世の中にはまだ「ない仕事」を、いかにして作っていくかの秘密が明かされる本です。私はもちろんみうらじゅんの足元にも及ばないものの、マンホール蓋・単管バリケード・ピクトグラムなどがマイブームで、ブログでこっそり発信しています。


別にこれらのものを「ない仕事」にしていこうという気は全くないのですが、たとえその気があったとしても、圧倒的に私には熱量が不足しているなと思いました。「自分洗脳」をし、何しろまずは量を集めねばならないわけですが、うーん、無理! マンホール蓋の写真は結構集めましたが、それでも世の中もっと集めている人がすでにおいでなことは知っております。


でも、「仕事でも趣味でも、日々自分自身にノルマや締切を与えて、もう一人の自分が斜め上からコーチしているような気持で実行すると、より一層がんばれるような気がします」というのは、心に留めねばと思いました。私も普段からToDoリストは作り、それを日々こなしてはいますが、ノルマの量が少なすぎるかも。……いや、高校時代のみうらさんの1日4曲というオリジナルソングのノルマは異常ですが。


ともあれ伝わってきたのは、みうらじゅんは基本的にただただ、「”本当に好きで、まだ皆が知らない面白いこと”を世界に届けたい」一心であること。「『自分をなくす』ほど、我を忘れて夢中になって取り組んで」いるのであり、「仕事にしてお金を稼ごう」という欲でやっているわけではないのです。


「ない仕事」を作るためにみうらじゅんが行うのは、「一人電通」(「一人博報堂」)です。ネタを考え、ネーミングを行い、デザインなどをし、接待し、発表するというすべての工程を、一人で行う、と。

何だか好きなことだけやっていそうな印象のみうらじゅんですが、実は本当にまじめだし努力家だなぁと思いました。本人も「無駄な努力家」とご自分を評していますが。


また、「地獄表」(ものすごい本数の少ないバスの時刻表)に象徴されるように、マイナスのものの中にプラス要素を見出すセンスもすごいです。そして、後輩の仕事からも学び、自分にないものは人に頼るという謙虚さ。漫画家でありながら、『色即ぜねれいしょん』のオープニングは自分には描けないと判断し、あえて小説で発表して他の漫画家さんに漫画にしてもらうという潔さには、頭が下がります。「主語を『私が』にしない」、「『自分探し』より『自分なくし』」というのも、心に留めたいです。


そして分かってきたのは、みうらじゅんはセレンディピティの人であること。「本来の目的を調べているときに、思わぬ何かが見つかるということがあります。あるいは、何かを夢中で調べていたおかげで、そこから派生してほかのものが好きになるということもあります」、「ひとつのものに夢中になると、自然とそこから派生するものも頭のどこかにストックされていき、それが新しい仕事に繋がっていく」って、これはセレンディピティそのものです。セレンディピティについては、以下の記事をご覧ください。


その末に、ついにお釈迦様が夢枕に立つとは! アウトドア般若心経に真剣に取り組むきっかけは、それだったそうです。井上陽水そっくりの声だったそうですが……。


なお私は単行本で読んだのですが、文庫版にはオリジナル企画として、「スペシャル対談糸井重里×みうらじゅん」も掲載されているそうです。これ、読みたいなぁ。


見出し画像は、私のマンホール蓋コレクションの1つである、壱岐市の仕切弁です。


↑文庫版



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