繰り返される会話。【掌編】
あの子、かわいくない?
あの子、かわいいな。
あの子、かわいいんだよね。
あの子は、その都度変わっている。
その文に込められている意味に、大差はない。
*
一か月後。
あの子、こんな所がかわいくて、、、、
あの子、ちょっとした仕草がかわいくて、、、
あの子、やっぱりかわいいんだけど、、、
あの子は、その都度変わっている。
その文に込められている意味に、大差はない。
*
一年後。
あの子と喧嘩した。
あの子と別れた。
そんなあの子のことより、ちょっと気になるある子が、、、
あの子は、その都度変わっている。
その文に込められている意味に、大差はない。
繰り返される会話。
そして、繰り返し聞かされる会話。
「もう飽き飽きだよ」
誰かが言った。
「そうだな、じゃあ繰り返しの会話を差し引いて話そうか」
とまた誰かが言った。
でもそこに残る会話は、重たい沈黙だけだった。
こうなることは、みんなわかっていた。
ただなんとなくでも、確認したかったのだ。
沈黙を見つめ続けるうちに、露わになる互いの底の浅さを。
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