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繰り返される会話。【掌編】

あの子、かわいくない?

あの子、かわいいな。

あの子、かわいいんだよね。

あの子は、その都度変わっている。
その文に込められている意味に、大差はない。

一か月後。

あの子、こんな所がかわいくて、、、、

あの子、ちょっとした仕草がかわいくて、、、

あの子、やっぱりかわいいんだけど、、、

あの子は、その都度変わっている。
その文に込められている意味に、大差はない。

一年後。

あの子と喧嘩した。

あの子と別れた。

そんなあの子のことより、ちょっと気になるある子が、、、

あの子は、その都度変わっている。
その文に込められている意味に、大差はない。

繰り返される会話。
そして、繰り返し聞かされる会話。

「もう飽き飽きだよ」
誰かが言った。

「そうだな、じゃあ繰り返しの会話を差し引いて話そうか」
とまた誰かが言った。

でもそこに残る会話は、重たい沈黙だけだった。
こうなることは、みんなわかっていた。
ただなんとなくでも、確認したかったのだ。

沈黙を見つめ続けるうちに、露わになる互いの底の浅さを。

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