第九の覚書

週に2回のお風呂と、毎日決まった時間にとる何とも味気ない食事。
それ以外はひたずら、朝から夜までベッドかデイルームで過ごすしかない日々。

その時も今も入院に納得していない自分にとっては、まったく無駄でしかない時間の浪費であった。

そんな日々に他のみんなもストレスがたまるのか、毎日のように誰かと誰かの口論。悪態をつくだけでは飽き足らず、手を出したりデイルームの椅子を振り上げて暴れる人なんかもいた。
そうなると看護師や介護士がすぐ飛んでくる。悪質と判断された場合は則、隔離室行き。まったく、(自分も行ったことがないが)まるで刑務所のような場所だと思った。

そこまでいかずとも、一人で「ワー!」とか「ウオー!」などと叫び続けている人も何人もいた。まったく気が休まることがなく、不安と恐怖でいっぱいだったので気分転換できるものが自分にも必要だった。

『作業療法』というものが週に1回設定されていた。自分は主治医から許可をもらっていたので、病棟から離れた棟にある作業療法室というところまで移動。もちろん各自勝手に移動は許されない。看護師、介護士の引率のもと。

屋内には一応卓球台と簡単な読書室らしきもの。あとはカラオケルームに一応バスケコートも備えている。

Tさんは元野球部の血が騒ぐのか、誰かとキャッチボールをしている。自分はカラオケルームで過ごすことが多くなった。

作業療法は何の目的か、他の病棟の患者と同じ時間に過ごすようにプログラムされている。自分は男性の閉鎖病棟だったから、一緒に居合わせるのは女性の閉鎖病棟の患者さんたち。

野球だけでなく女も好きだというTさんは、閉鎖病棟より前にいたという男女混合病棟時代の患者を見つけると、にかやかに交流しはじめた。僕は僕で、カラオケルームでよく歌っている一人の女性患者と話すようになった。


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