第五の覚書(プロレス好きのPSさんとサッカー好きのSDさん)

今日は病棟で出会った印象深い住人を、二人紹介しよう。

1人目。

体型は太目。プロレス好きの男性でPSさんとしよう。

何かあればプロレス、プロレス。

僕が静かに本を読んでるときに邪魔してくる人はいなかったが、ひとたび雑談の輪に加わるとプロレスの話になる。

一般社会と違わず、朝はだいたいみんなテンションが低かった。
しかしPSさんだけはご機嫌。僕や馴染みの人と顔を合わせると「よっ!」といって手をあげる。

そこまでならば、ちょっとテンション高めの感じのいいおじさんだと思うだろう。朝食の席につくと、必ず「儀式」をやる。

(なんとなく決まっている)席の椅子を持ち上げ、3回ゆらす。
その行為に何の意味があるんだ?という質問は、そこではもはや野暮だ。
PSさんにとっては欠かすことのできない、毎朝の儀式だ。

2人目。

デイルームに2台だけあるテレビ。競うようにみんなが観るのは、なぜだか大体、懐メロ系の歌番組か時代劇。

「新入り」の自分が観たい番組を自由に観ることも許されなかった。

しかも21時に強制消灯されテレビも自動で切れるから、星野仙一が日本シリーズで胴上げされるところまで観ていない。

まあ重度の絶望感に襲われていた自分にとっては、そんなこと当時はどうでもよかったが。

ところでサッカー中継が始まると、ゴールポストまで突進するかのようにデイルームにダッシュしてくる人がいた。

サッカー番組が始まるとダッシュだから、SDさんにしよう。

中継が始まると、一心不乱になにやらノートに書きものをしている。
あれはなんだったのだろう?スコアの記録か・・・


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