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京大生の本棚part.7〜湊かなえさん「告白」〜

 読書好きとして、ようやく履修しましたよ。
イヤミスというジャンルの金字塔を。
読もうとは思っていましたが、ちょっと怖くて…。

 やはり好奇心は止められませんでした。それと、本を買った理由はもう一つあります。
 見てください、この表紙。なんだか既視感のあるタッチの絵。


 そう!なんと、300万部突破記念らしく、表紙が呪術廻戦作者・芥見下々さんによる書き下ろしなのです。
 気づいた時には、レジに持って行っていました。

 しかも何ですかこの裏面。


「互いをリスペクトするがゆえに実現」
湊かなえさんの作品が好きで、しかも最近呪術廻戦にどハマりしたオタクホイホイですよ。
嬉しくてニヤニヤしていましたよ。

 さて、前置きはこのくらいにして、あらすじと感想を。

あらすじ

 S中学1年B組の担任教師・森口悠子は、終業式のホームルームで退職する旨を生徒に伝えた。

 その理由の一つは、娘が勤務先の学校で命を落としたこと。警察は事故ではないと判断したが、森口は「事故ではない、このクラスの生徒に殺された」と言う。

 森口は犯人を分かっており、名前こそ出さなかったが誰を指しているか分かるような口ぶりで二人の犯人を断罪した。

 衝撃的な展開へと向かって事態は進んでいく…。
「これが本当の復讐」
 刮目せよ。これが人間という存在そのものが持つ恐怖である。

感想

 この物語は、このあらすじ以降の内容に関してネタバレ厳禁です。絶対に。言えることとしては、章の構成の分析くらいでしょう。それも全部は言えません。

 最初の章が、娘を失った森口の独白。
 二番目は、森口の元教え子で犯人の同級生が森口に宛てた手紙の形をとっています。
 三番目は、犯人の一人の兄の話。
 四番目は、犯人の一人(三番目の章で出てきた語り手の弟)の供述(?)。
 五番目は、もう一人の犯人。
 最後の章の語り手は明かせません。驚きが半減するからです。
 また、章ごとにタイトルが付けられていますが、このタイトルも語り手ないし話の登場人物をよく体現したものでした。

 ぜひ、ご自身で読んで震えてください。
「告白」というタイトルの秀逸さに、戦慄します。

印象に残ったフレーズたち

①「道を踏み外して、その後更生した人よりも、もともと道を踏み外すようなことをしなかった人の方がえらいに決まっています」

 大抵の教育ドラマでは、グレていた子が更生していく様を描き、「えらい」とするものが多い気がします。

 スポットが当たるのはやんちゃで、でも根っこに善性を備えているタイプの子。
 その方がドラマ映えするでしょうから仕方ありませんが、実際の教育現場でも同じようなことが起こるのは問題でしょう。

 私も中学生・高校生だった時、似たような思いをしたことがあります。
 大抵の学校では、放課後に生徒が当番を振られて掃除をします。

 当然、元気がみなぎっている10代の学生ですからサボりたくなることもあります。そして実際にサボる人も出てくる。

 私は基本的に掃除をきちんとやる側でした。
 本当にやむを得ないという場合(部活の稽古があったり習い事があったりなど)は早めに切り上げさせてもらうこともありましたが、丸々サボったことはほとんどありません。

 でも、褒められるのはサボりがちな生徒が珍しくきちんと掃除に参加しているとき。

 日頃から真面目にやっている人間にスポットライトは当たりません。「私はいつもやってるのにな…」とモヤモヤすることがありました。

 このフレーズは、陽の光が当たらず脇役になりがちな「真面目っ子」に寄り添ってくれるように感じたので印象に残ったものとして挙げました。

②「今いる場所で生きていくことが苦しいのなら、別の場所に避難してもいいんじゃないかと俺は思う。(中略)広い世界には必ず、自分を受け入れてくれる場所があると信じてほしい」

 森口の独白で紹介された桜宮正道(通称「世直しやんちゃ先生」)の言葉です。
 確かに、大学に入ってからようやく居場所を見つけることができた私にとっては、「その通りだ」と元気づけられるとともに、「もし、居づらい原因がいじめである場合は逃げるべきなのはいじめられている側なのか?」と疑問も感じました。

 うっすらと聞いた話ですが、欧米ではいじめている側にこそカウンセリングが必要であると考えられているそうです。「いじめなければいけないほど、追い詰められている」と考えるのだとか。

 日本では、いじめられている子に別の居場所を与えようとします。
しかし、それではターゲットが変わるだけで本質的には何も変わらないだけでなく、被害者側に大きな物理的・心理的負担を与えます。

 日本でも、加害者側へのアプローチが普及することを願うばかりです。

 ともあれ、この発言は「居づらい」と感じている人にとって一つの救いになるでしょう。

 桜宮本人が語り手として登場するわけではありませんが、何気に物語の要の部分を支える人物ですので、この人の名前が出てきたら注目してみてください。
これ以上はネタバレになるので何も言えません…

③「これが本当の復讐であり、あなたの更生への第一歩だとは思いませんか?」

 あらすじでもうお分かりでしょう。これは、娘を失った森口の言葉です。
しかし、この言葉がいつ、どのような状況で発されるかは伏せます。

 こんなざっくりとした紹介しかできない私の力量をもどかしく思います。
私が得た読書体験を、ネタバレを排除しながらも可能な限り五体満足に伝えるためには、これしかできませんでした。

 まさに、「イヤミス」
誰しも多かれ少なかれ持っている人としての怖さ、歪みというものをこれほどあぶり出した作品というのは貴重です。
いわゆるグロいシーンはほとんど無く(個人の感想です)、ひたすらヒトコワでした。

最後までお読み下さり、ありがとうございました!
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