ツナとしめじの炊き込みご飯
「子どもが黙って食べる」
この文句が呼び水となり、非常食用に取っておいたツナ缶をひとつ開けた。
無いものだらけ
勢い勇んでツナ缶を開けたものの、練りものも人参もなかった。そういえば油揚げも糸こんにゃくもこの間使い切ってしまったのだ。嗚呼。
人参の代わりと言っては何だが、彩りがちかいという理由で冷凍コーンをパラパラ入れる。
お米(1.5合)を40分近く水に浸してから醤油、酒、みりん、白だしを各大1強入れる。お米+1cmの高さまで水を注いだら、オイル入りツナ缶の油をすこしだけ切って乗せ、しめじとコーンを散らす。
ここからは中火で、ふだんの炊飯と一緒。
泡がボコボコ立つくらい沸騰したら、あとは鍋底がぱちぱち言うまでしばし待つ。ぱちぱちという音に20秒ほど耳をかたむけてから火を弱めた。
調味料を入れているので鍋底が焦げやすいと思い、今回は弱火で5分40秒。火を切って6分蒸らし(長めに蒸らしたほうがおいしそう、という単純な理由)、あおさと粒ごまをまぶした後はしゃもじでざっくざっく切る。
醤油のみの炊き込みご飯とくらべてみると
炊き込みご飯が好きなのだが調味料の配合がなかなか覚えられず、作るのが億劫になっていた時期があった。そんな折、故・小林カツ代さんのエッセイで「しょうゆのみでもOK」と読んだのをきっかけに炊き込みご飯の味つけは醤油しか使わなくなった。以来、作りたいときに作っている。
今回、超がつくほどひさしぶりに醤油以外の調味料を入れて作ったが火を入れている途中から漂う香りが違っていた。なんというか、匂いに奥行きがあるのだ。いろいろ混ざると匂いは二次元から三次元になるらしい。
これから、たまには醤油以外も入れてみよう。
味の泉
オイル入りのツナ缶を使ったせいか、炊き立てのお米が艶々している。
揚げ物といっしょに食べるならツナ缶をノンオイルにして、お刺身やサラダや煮物と合わせるならオイル入りを使うなど、献立で使い分けてもおもしろそう。
ノンオイルなら油揚げを入れたいなあ。春なら筍もおいしいだろうなぁ。
なぜしめじなのだろうと不思議だったが、食べてみて納得した。火が入るとしめじに芯ができる。噛むたびに口のなかでしゃこしゃこと響くのがとても気持ち良い。おむすびにするなら、しめじを小さく切れば握ってもくずれないだろう。
みりんと白だしの甘みと、ツナオイルの甘みが混じり合ってバターのようなコクに仕上がっていた。鍋底にできたおこげからはほんのり醤油の香りがする。彩りを優先して入れたコーンの甘さと歯応えも良いアクセントになっている。
たった一品で色んな味が次から次へと湧き出てくる。まるで味の泉だ。
春のひとひら
炊き込みご飯を仕込んだあと、明るいうちに加湿器と洗濯槽の掃除をした。
掃除をすると、春の支度をしている気がしてくる。来月のいま頃には桜が咲き始めているのかもしれない。
ああ、おにぎりと水筒を持って川縁に行きたくなってきた。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?