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中国が遺伝子組み換えトウモロコシと大豆の商業栽培を解禁

中国政府は2023年10月17日、遺伝子組み換え(GM)トウモロコシ37品種とGM大豆14品種の商業栽培を解禁する方針を公表しました。トウモロコシと大豆の国内生産を増やし、輸入を減らすことで、食料安全保障を強化するのが狙いです。GM作物の導入によって実際に国内生産が増えれば、国際需給に大きな影響を及ぼす可能性があります。米国やブラジルなどに続き、中国もGM作物にかじを切ることで、その他の国の動向にも影響を与えそうです。
 
商業栽培を認める方針が示されたのは、グリホサートなどの除草剤耐性や害虫抵抗性を高めたGMトウモロコシ37品種と、グリホサートなどの除草剤耐性を高めたGM大豆14品種です。いずれも中国の大学や研究所、種子メーカーが開発した品種です。米国や欧州など外国の種子メーカーの品種は含まれていません。まずは国内勢を優先する考えのようです。
 
いずれも2021~22年に試験栽培を行った結果、収量の増加が確認できたとアピールしており、中国政府は生産性の向上を重視していることがよく分かります。11月15日までの1カ月間、パブリックコメントを受け付けた上で正式決定されるということです。
 
ただ、商業栽培が解禁されても、実際にGM作物を作付けできる地域は政府によって制限され、2024年は一部にとどまる見通しです。その後、段階的に拡大され、ロイター通信は中国のアナリストの見方として、5年後にはトウモロコシの90%がGM作物に置き換わりそうだと伝えています。
 
米農務省(USDA)の資料によると、2022~23年度の中国のトウモロコシ生産量は2億7720万トンで米国に次いで世界2位、大豆は2028万トンで世界4位です。家畜の飼料などとして使われていますが、膨大な国内需要を満たすことはできず、いずれも米国やブラジルなどから大量に輸入しています。
 
2022~23年度の中国のトウモロコシ輸入量は1850万トンで、国・地域別では欧州連合(EU)に次いで世界2位です。大豆は国内生産の5倍に相当する1億0200万トンを輸入し、2位以下を大きく引き離し、圧倒的な首位となっています。世界の大豆輸入の6割を中国が占め、まさに大豆を爆買いしています。トウモロコシ、大豆ともに主要輸入国である日本にとって、中国に買い負けないことが課題になっています。
 
中国は綿花やパパイヤは既にGM作物の国内栽培を始めていますが、トウモロコシと大豆は認めてきませんでした。しかし、米国やブラジル産のトウモロコシや大豆は9割以上がGM作物なので、国内栽培は認めないGM作物を大量に輸入するという矛盾した政策を採ってきました。
 
たびたび触れた通り、中国は食料の米国依存から脱却するため、近年は食料増産に非常に力を入れています。その中でGM作物を重視していることが浮き彫りになってきました。もともと大量に輸入しているだけに、それなら自国で作ればいいというシンプルな考え方かもしれません。

中国は2023年から大々的に商業栽培に乗り出すとの観測もありました。しかし、試験栽培を大幅に拡大したものの、商業栽培には至りませんでした。一部で反発も予想されるだけに、強引な政策が多い中国でも、GM作物に関しては慎重、丁寧に進めていく考えのようです。
 
中国がトウモロコシや大豆でGM作物の本格栽培に乗り出し、実際に生産量が増加したとしても、それで国内需要の全てを賄うことは難しいため、中国は引き続き食料の大輸入国であり続ける状況に変わりはなさそうです。ただ、世界の食料需給に影響を与えるのは間違いないでしょう。中国の輸入が減れば、国際市場で日本が買い負けることが減るかもしれないので、日本の食料安全保障にとってはプラスとなるかもしれません。
 
トウモロコシや大豆について、米国やブラジル、アルゼンチン、オーストラリア、南アフリカなど主要輸出国では、ほとんどすべてがGM作物です。中国が追随すれば、GM作物の割合が一段と高まり、推進派にとっては追い風となります。日本はこれまで、中国と同様、GM作物を大量に輸入するのに国内生産は行わないという分かりにくい政策を行ってきましたが、日本でもGM作物の本格栽培を求める意見が高まるかもしれません。

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