中国が遺伝子組み換え作物への依存を強める

中国の農業農村部(MARA)は2023年1月13日、家畜の飼料となるアルファやサトウキビなど新たに8品種の遺伝子組み換え(GM)作物の輸入を承認したと発表しました。中国はトウモロコシや大豆、綿花など既に多くのGM作物の輸入を認めていますが、米農務省(USDA)のリポートによると、一度に8品種も承認するのは過去に例がなく、アルファルファとサトウキビが含まれるのも初めてです。中国は世界最大の農産物輸入国ですが、米国産を中心としたGM作物への依存を強めています。

新たに承認されたのは、ドイツのBASFとドイツのバイエル・クロップサイエンス(旧米モンサント)、米国のコルテバ・アグリサイエンス(旧ダウデュポン)がそれぞれ開発した除草剤耐性綿花の計3品種、パイオニア・インターナショナル・シード・カンパニー(現コルテバ)が開発した除草剤耐性ナタネ、ブラジルのサトウキビ技術センターが開発した害虫抵抗性サトウキビの2品種、バイエル・クロップサイエンスが開発した除草剤耐性アルファルファの2品種です。いずれも2022年12月に開かれた会合で決定されました。

米農務省はリポートの中で、今回の中国の決定について、注目すべき点として、3点を挙げています。一つは、サトウキビとアルファルファについて、GM作物の輸入を初めて認めたこと。二つ目は、一度に8品種のGM作物の輸入を承認したこと。ここ数年は一度に1、2品種しか承認してこなかったのに、今回は一気に増えたということです。

最後に、承認申請から10年以上が経過していたナタネとアルファルファがこのタイミングで承認されたことです。中国はこれまで、GM作物についてはそれほど前向きではなく、大豆やトウモロコシなど、どうしても輸入せざるを得ない作物に限り、渋々認めてきた印象があります。食料や飼料の供給が追いつかず、もはやそんなことは言っていられない状況になったのかもしれません。

MARAは同時に、中国で開発されたトウモロコシと大豆の計3品種について、GM作物の栽培も新たに承認しました。中国の企業と研究機関が開発した害虫抵抗性・除草剤耐性のトウモロコシ、別の中国の企業と大学が開発した除草剤耐性トウモロコシ、上海の研究機関が開発した害虫抵抗性の大豆です。商業栽培ではなく、その前段階である試験栽培とみられます。

米農務省が2022年11月末に発表したリポートによると、中国はこの時までに64品種のGM作物の輸入を承認しています。2004年から段階的に解禁しており、最も多いトウモロコシが23品種、大豆が19品種、綿花が11品種、ナタネが9品種、テンサイとパパイヤがそれぞれ1品種です。

一方、中国は現在、綿花とパパイヤについて、GM作物の商業生産を行っています。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)のリポートによると、2019年の中国のGM作物の栽培面積は320万ヘクタールで、世界7位です。これに先立ち、MARAは2016年、綿花など食用でないGM作物の栽培を優先した上で、次にトウモロコシや大豆など人間が間接的に食べる作物、最後にコメや小麦など人間が直接食べる作物についてGM作物の国内栽培に乗り出す方針を示しています。

既に、中国の企業や研究機関が開発したGM作物の栽培を多く認めており、トウモロコシは23品種、大豆は4品種、コメは2品種に上ります。GM技術によって害虫抵抗性や除草剤耐性を持たせた品種がほとんどです。ただ、承認されたとはいえ、自由に作付けができるわけではなく、事実上は試験栽培とみられます。

米農務省は、業界関係者の見方として、早ければ2023年春にも中国でGMトウモロコシや大豆の生産が始まる可能性があると指摘しています。近年、全世界のGM作物の栽培は頭打ちとなっており、中国で新たに開始されれば、再び増加に転じ、GM作物を全世界で推進したい米国などにとっては追い風になりそうです。ただ、中国は欧米など国外で開発されたGM作物の栽培はまだ認めていないので、欧米による市場開放圧力が高まることも予想されます。

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