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血と家から考えるアイドリッシュセブン⑧(ネタバレ)

【アイナナ考察記事についてのお願い】
・「二次創作」としてお読みください。ストーリーの展開を保証するものではなく、公式やキャラクターを貶めようとするものではありません。
・アイナナに関するすべての情報を把握しているわけではありません。個人の妄想と願望を大いに含む、一解釈であることをご理解ください。

こちらは、アイドリッシュセブンを「血」と「家」という観点から考察する記事です。初めての方はからご覧下さい。
※直近の「血と家―」の考察記事は⑦↓

「アイドリッシュセブン second beat!」の5話以降が放送延期となり、ゲーム始発・アニメ始発どちらのマネージャーも大変寂しい思いをされていると思う。私ももちろんそうであるが、焦らず、無理せず、良い作品を作っていただきたいので、必要な時間だとも思っている。

この空白の期間を少しでも埋めるために、これまであまり考察してこなかったあたりを、記事にしてみたいと思う。

アニメ2期3話 「提案」
ストーリー2部3章 「チャンス到来」
において大変重要な役割を果たす、和泉一織と二階堂大和についてである。

アニメでの演出の変更点にも触れつつ、彼らの「家」や「血」、そしてアイナナというグループに対する考え方について、深堀してみたい。

いつもの通り大変なネタバレ・妄想の垂れ流しであり、アニメ視聴のみの方にとっては2期アニメ通しても判明しない部分い関するネタバレにもなってしまう。ご不快な方はUターンをお願いしたい。


1.「歯車」の場面―演出の違い


「歯車」と聞いただけで、すでにどの場面かわかってしまうマネージャーも多いことだろうが、一応説明をする。
ゼロアリーナこけら落とし公演を勝ち取るために、二階堂大和と和泉一織が、支配人を「説得」したあとの、二人のやりとりである。一織は「七瀬陸の不調は一時的なものだ」と嘘をつく。それを二階堂大和がとがめるのだ。大和は「無理をさせるな、潰れてしまう」と主張し、一織は「歌わせないことに罪悪感を覚えた」と主張。大和はそれ以上踏み込まず「理想を押し付けすぎると歯車が狂う」と忠告するにとどめる。

4部までを体験しているマネージャーであれば、ここで二階堂大和がもう少し踏み込み、一織のマネージメントにもう少しブレーキをかけていれば…と思わなくもない箇所だが、2部当時の大和は自分の事情で精一杯であったので、仕方ない部分ではある。


さて、考えたいのは、この場面の演出の違いである。

ゲーム版から確認しよう。
「陸が倒れるまで歌わせたかったか?」と問われた一織は「…そんなんじゃありません…」と控えめに答える。
そして、二階堂大和の決定的なセリフ

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©アイドリッシュセブンより引用

「理想やプランを押し付けすぎると、うまく回ってた歯車も、次第に狂ってくぞ」

非常に軽いトーンでの発言となっている(アプリお持ちの方は、ぜひ一度聞き直してもらいたい)


それに対し、アニメ版である
まず一織の「そんなんじゃありません」は、必死の形相、かなり語気の強い「そんなんじゃありません!!!!」になっている。
そして上記の二階堂大和のセリフであるが、

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 ©BNOI/アイナナ製作委員会

大変重苦しいトーン、かつ、この表情で告げられるのである。

そもそもゲーム版では、スーツを着ているのは大和だけであり、支配人説得の場面には、他のメンバーも居合わせていた。ところがアニメ版は、スーツを着て、バッグまでも揃えたかのように同じスタイルの大和と一織だけで説得に行くのだ。


この演出の違い、非常に重要だと思うのである。
4部を経ているからこそ、5部を間近に控えているからこその、アニメの演出だとしか思えない。

3部では回復基調にあった陸の体調は、4部で再び悪化の兆候を見せている。そして、和泉一織のプロデュースは「コントロール」の域に達しつつあり、「歯車の狂い」は現実味を帯びてきているのだ。
「陸が倒れるまで歌わせる」が現実味を帯びているからこそ、一織の「そんなんじゃありません」は強い否定になったのだ。もちろん、大和セリフに深刻さが増したのも、同じ理由である。

私は4部考察において、5部では遠からずアイナナの内部分裂が起こる、自家中毒が起こると考察したのだが、その中心となるのは、この二人なのではないか…という思いを、アニメを見て強くした。
「七瀬陸」に対する考え方の違いは、二人が持つ「アイドル像」の違いそのものである。この考え方の違いが、4部までの間に埋まっているとは思えない。それが浮き彫りになるのが、5部だと考えて良いだろう。


2.メンバーの呼称―大和の場合

二階堂大和と和泉一織のスタンスを考えるにあたり、彼らがメンバーをどう呼称しているか、という点について考えたい。あまりにもストーリー序盤から耳慣れてしまっているので、今まで深く考えたことがなかったのである。

まず二階堂大和。
「リク」「イチ」「ミツ」「ソウ」…のように、メンバーのファーストネームの最初に二文字を「カタカナ」で呼称する。
この呼び方をするのは、登場人物の中で彼だけである。
「リク」に関しては「陸」と表記しても違いはないはずなのに、あえて「カタカナ」表記されることには意味があろう。

少なくとも大和は1部中盤まで(アニメ一期のブラホワ直前くらいまで)は、アイナナのメンバーを「復讐の道具」として考えていた部分がある。
アイナナがある程度売れてきたら、自分が千葉父の息子であることを暴露し、父に復讐するのである。そのためにアイナナには売れてもらう必要があった。だからメンバーは復讐の「駒」だ。

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©アイドリッシュセブンより引用

「駒」に対して情がわいてしまっては裏切れない。彼らを騙し続けることだってできない。
だからまるで「記号」のように、表音文字である「カタカナ」で彼らを呼ぶのである。自分は「兄」を名乗っておきながら、決して弟たちへの情がわかないように、一線を引いている。そんなストーリー序盤の二階堂大和の姿勢が透けて見えるのが、「カタカナ2文字呼称」である。
(その証拠に、TRIGGERに対しては「八乙女」「九条」「十さん」と漢字呼称である。彼らは大和の「駒」ではない)

※もちろん、3部以降をご存知の方は、そこから大和が脱却できていることはご存知だろう。今もカタカナ呼称なのは、彼がかつてメンバーを「駒」として扱おうとしたことへの贖罪であり、同じ轍を踏まないという「戒め」でもあるように思う


3.メンバーの呼称―一織の場合

次に和泉一織である。彼の場合はまた独特だ。
「七瀬さん」「二階堂さん」「六弥さん」「逢坂さん」
そして兄である三月には「兄さん」である。
徹底して苗字を呼称する。
同級生の環さえも「四葉さん」呼びである。

一織がカタイ、というだけなら話は簡単だ。
しかし私はそれだけが原因とは思えない。苗字へのこだわりをどうしても感じてしまうのだ。
苗字とは何か…ファーストネームとは何がちがうのか。「家」の存在である。

4部考察を行った際、一織はメンバー内で最も、アイナナというグループを「第二の家族」としてみていると考えた。自分にとって第二の居場所であるアイナナを守るために、一織はプロデュース/コントロールで、その核たる七瀬陸を永遠のスターにしようとしているのだと。

だったら苗字を同じくして、ファーストネームで呼称すれば良いではないか、と思える。おそらく一織にとっては、そこが最後の砦なのだ。本当の家族、絶対に安泰・永続する家族だと認定できれば、彼は「ファーストネーム」を呼称するだろう。
まだ、アイナナは…「途上」なのだ
「途上」なのに、そこに甘んじるわけにはいかない。でなければ、失った時の打撃は計り知れないからである。完璧で、揺るぎないものになってはじめて、一織は「ファーストネーム呼び」を解放できるのだろう。

やはり気にかかるのは三月に対する「兄さん」呼びである。

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©アイドリッシュセブンより引用

個性といえば個性だが…実際の家族における「呼称」も、アイナナにおける「呼称」も一致している三月という存在は、重要だと思うのである。
彼がいることは、よりアイナナを一織の居場所(=家族)にするだろうし、同時に「家族」ではないことを浮き彫りにする存在にもなるだろう。

「Mr.AFFECTiON」のMVでも、七瀬陸のもとに最後まで残るのは和泉一織と三月だった。三月はまるで一織を支えるようにして、七瀬陸の前から消える。
それぞれに苦しむ七瀬陸と和泉一織を救うのは、やはり三月だと思うのである…
アイナナを「自分」や「家族」という生身の人間部分と切り離せた時、和泉一織はきっと救済されるのだろう。早く彼を安堵させてあげたいものである。


4.メンバーの呼称―TRIGGERについて

ついでのように、TRIGGERについても考えておこう。
TRIGGERメンバー内は統一して「楽」「天」「龍」である。役割分担はあるものの、年齢もキャリアも関係なく「対等」であることがわかる。

ではアイナナメンバーのことを、TRIGGERはどう呼称しているのか。

龍はわかりやすい。年下に関しては「(ファーストネーム)くん」である。「弟認定(=庇護対象)」だからだ。そう考えると、年下である楽と天に「くん」付けをしないことが、際立ってくるのがわかる。

楽もわかりやすい。アイナナメンバーについては全員「苗字呼び捨て」である。「和泉兄」「和泉弟」という呼びにくさにもかかわらず、頑なにファーストネームは呼ばない。私は勝手にだが、八乙女楽は友達が少ないと思っている。なので家族並みに気を許した相手しか、ファーストネームは呼ばないと思うのだ。5部において楽は大和とガチ対決をすると思っているので、ぜひメンバー以外で初の「名前呼び」を達成してほしい。

天は少し違う。アイナナメンバーについては陸以外「フルネーム呼び」である。
これはおそらく「アイドルとして呼んでいる」のだと私は解釈している。たとえ本名でアイドル活動をしていても、名前はアイドルとしての看板である…と考えているように思うのである。どんなときでもプロのアイドルとして彼らを呼ぶのである。例外は七瀬陸だけだ、「七瀬さん」とは呼ぶが「七瀬陸」とは呼ばない。これは未だに天が「陸はプロのアイドルとしてやっていける、やっていってほしい」と思いきれていないからではないのか。ブラコンがこんなところでも発揮されているとは恐れ入る。


5.和泉一織と二階堂大和

アイナナメンバー4名の中でも、なかなかに特殊な呼称でそれぞれを呼んでいる二人(環のあだ名は「ファーストネームと同義」と考えることにする)
これまで二人は、ユニットでも重なることがなく、そこまで馴れ合っているようには見えなかった。大和が高校生二人に弁当をつくるくらい…だろうか。
それよりも、やはり5部に向けて重要になってくるのは、大和が一織のマネージメントの秘密を知っていること、そしてそれを危ぶみながらも「黙認」してきたことだろう。

ナギ脱退の危機を乗り越え、向かう所敵なし、安泰のように見えるアイナナの危機は、この二人を引き金にして訪れる気がする。そんな予感をおぼえた、アニメ2期3話であった。


長文におつきあいいただきありがとうございました!

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