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プレミアリーグ 第3節 マンチェスター・ユナイテッドVS.リヴァプール プレビュー

 大一番。ユナイテッド、リヴァプールともにリーグ戦未勝利ということで、どちらにとっても今後を占う重要な一戦になりそう。チェルシーとスパーズがあれだけのハイレベルな試合を見せてくれただけに、この2チームの意地に期待したいです!!

Ⅰ.両チームの予想スタメン

①予想スタメン

 ホームのユナイテッド。リヴァプール戦までにカゼミロの獲得がなされる可能性はあるが、ビザの関係で選手登録は間に合わないという報道もあり、試合への出場は厳しい。
 相手の攻撃陣のレベルの高さも考慮して、前節からリサンドロ⇒ヴァラン、エリクセン⇒フレッジのメンバー変更があると予想。アンカーにフレッジではなく、リサンドロの起用の可能性もありそうだが、前の2試合の内容を考慮すると彼のCB起用はないのではないかと思う。
 マクトミネイじゃなくてエリクセンだろ!、VDBだろ!って声も聞こえそうですが、後方から長いボールをどんどん蹴りこんでくるリヴァプール相手のトランジション局面でのボール回収などを考えると、マクトミネイがファーストチョイスになりそうだ。
 怪我人続出のリヴァプール。ジョタ、コナテ、カーティス、チェンバレン、ケレハー、チアゴが現在負傷離脱中。ヌニェスの出場停止に加えて、スタメンに予想したヘンダーソン、J.ゴメス、フィルミーノに欠場の可能性もある。ケイタが退団希望との噂もあり、彼のスタメン出場ももしかすると…という悲惨な状況だ。
 最悪の場合を想定すると、J.ゴメス⇒ナット、ヘンダーソン⇒エリオット、ケイタ⇒ミルナー、フィルミーノ⇒F.カルヴァーリョが代替案となるが、正直なところ戦力ダウン感は否めない。
 ①のスタメンが揃えばベストメンバーといっても差し支えないが、果たしてどうなるのか。このプレビューでは①のスタメン想定のもとに、(テンハグユナイテッドの動画はまだ少ないので、)リヴァプールの動画を用いながら展望していきたいと思います!
 (最初の42本から削減したのですが笑、)計22本の動画があるので、各ターム1本ずつぐらいでみていただければいいかなと思います。すみません🙇

Ⅱ.試合の注目ポイント
(LIVボール保持VS.MUNボール非保持)

1⃣リヴァプールの0トップ、4-2-2-化

 この2つのシーンのように、リヴァプールのボール保持、特にビルドアップにおいて鍵となる動き、相手に対応を迫る動きがこの0トップとそれに伴う4-3-3から4-2-2-2(WG)への可変だ。

②ユナイテッドのプレッシングのかたち

 もう何度目だよ!と思われている方もいるかもしれないが、ユナイテッドのプレスのかたちは②のイメージ。マンツーマンを基本としながら、WGのカバーシャドー(パスコースを切る動き)を用いたプレッシングなどで相手4バックのパスコースや攻撃のエリアを限定し、後方の数的優位を生かして、ライン間に入ってくるパスを積極的に潰す動きでのボール奪取を狙う。

③リヴァプールのビルドアップ(0トップとWGの斜めの動き)

 それに対してリヴァプールは、ビルドアップの際には片方のIH(ほとんど左IH)を落としてアンカーをサポートする立ち位置を取り、それに呼応してCFのフィルミーノがその空いたスペースに顔を出し、4-2-2-2のような配置になる動き出しをつけることで、そのズレからの前進を狙う。
 ③の図でもわかる通り、この場合ユナイテッドは中盤での数的不利によって、3センターのマンマークに迷いやズレが生じやすくなる。CBがついていけばよい気もするが、そうすると3バック気味となったユナイテッドのDFラインに両WGの裏抜けが刺さる格好となり、CBも迂闊にフィルミーノにがっつり付いていくという判断ができな仕組みだ。
 それに加えて、リヴァプールのSBが高い位置を取るという動きは、ユナイテッドのCFとWGの距離を広げる作用もあり、それによってパスの出し手となるCBからライン間に位置する選手へのパスコースが開けてしまうというユナイテッドのプレッシングへの懸念もある。
 

 この相手の配置の工夫に対して、ユナイテッドのプレッシングに求められることに言及するとすれば、当然、「プレッシングの連動性」になってくるだろう。
 DFラインの選手が裏のボールに対してリスクを負い、相手の中盤の選手(ここでいえば0トップのフィルミーノ)に対して激しいアプローチをするには、前線の選手がどれだけ相手ボールホルダーに質の高いボールを蹴らせないようにプレッシャーを掛けられるかが鍵になる。そのため、「行くときは行く」「引くときは引く」というチームとしての意志統一が重要となる。

2⃣リヴァプールのSBの質とユナイテッドの守備の弱点

 リヴァプールといえば両SB。というくらいに、両SBのクロスやフィードなどの配給は彼らの攻撃の武器となっている。

②ユナイテッドのプレッシングのかたち

 そしてここでユナイテッドのプレッシングのかたちをもう一度見てみると、両WGが相手CBにプレッシャーを掛けに行った際に中央の選手などを経由して相手SBにボールが渡ってしまった場合、相手SBは大きな「時間」と「スペース」を得ることになる。SBが脅威となるリヴァプール相手にはかなり危険な状態だ。

➃ユナイテッドの数的同数プレッシング(SBの縦スライド)

 では、ユナイテッドはどうするか。といえば、より相手ボールホルダーへの圧力を強める数的同数プレッシングによって、パスの出し手であるSBに良質なパスを出させないという選択をするはずだ。➃のように、相手SBにボールが渡ったときにはDFライン全体をスライドさせ、SBが押し出されるかたちで縦スライドを行い、対応する。
 上述したように、相手ボールホルダーに激しいプレッシャーが掛けられれば、後方の選手もライン間の選手に激しくアプローチできるわけで、この際に両CBは相手のWGとCFというマーカーに対して、パスが出ればアプローチできる距離にポジショニングする。前線の選手とのプレスバックによって挟み込んでそこに入ってくるパスを刈り取る狙いとなる。
 ライン間にボールが入った際に、後方からCBが圧力をかけるだけではリヴァプールの技術力の高い3トップからボールを取り上げるには不十分であり、ここでユナイテッドのプレッシングが機能するためには、先ほどの「連動」に加えて「プレスバック」がキーワードとなりそうだ。

⑤ユナイテッドが押し込まれたときの守備

 プレッシングの局面よりも、ユナイテッドが押し込まれたときにリヴァプールのSBはより躍動することになるかもしれない。⑤のようにユナイテッドは撤退したとしても、ゾーンよりもマンツーマンの要素が高く、相手SBにはWGが付いていくことが基本となる。
 ただ、当然のことながらWGが高い位置にいる相手SBをマークするとなれば、本来のポジションからかなり距離があり、(マーカーを受け渡す場合もあるが、)状況に応じたスプリントでDFラインに入るなどの献身的な動きが求められる。つまり、リヴァプールがユナイテッドを押し込んだ際に、ポジションチェンジによって高い位置を取るリヴァプールのSBに対して、ユナイテッドが受け渡しがうまくいかないorWGがサボってしまうと、添付した動画のような高精度のボールが両サイドから供給され、リヴァプールのチャンスが生まれることとなる。
 リヴァプールからすればその隙を狙いたいし、ユナイテッドからすればできるだけそのような状況を根本から減らせるようにプレッシングを機能させることが肝要となるだろう。

3⃣リヴァプールのDFライン裏へのフィード

 矛盾した表現になるが、リヴァプールのボール保持の特徴はボール保持にこだわらないというところにある。これらのハイライトのように、ボールホルダーの状態が良ければ、前線の選手は裏への動きを積極的に行い、GKとDFの間がどれだけ狭くても、そこを狙う正確無比なボールを飛ばしていく。
 そのボールが通れば一気にチャンス、通らなくてもそこからのカウンタープレス(ゲーゲンプレス)でボールを奪い返して、速攻、二次攻撃、三次攻撃へとつなげる。「裏へのフライパス」というゲームで最強の戦術を平気で実行してくるのがリヴァプールの怖いところである。
 それに対峙するには、⑴ボールの起点への激しいプレッシャーでボールを蹴らせない⑵潔くDFラインを下げ、全体のブロックも下げるという二通りの手段があるが、いつでも⑴を行うというのには限界があり、シティや開幕節で対戦したフラムなども⑴と⑵を併用するかたちを採用し、試合をリヴァプールのペースには持ち込ませないという方策をとっていたと思う。
 ただ、いずれにしても、リヴァプールのパスの出し手を自由にさせすぎないための前線の選手のプレッシングは常に求められることであり、ユナイテッドの選手がそれを少しでも怠れば、リヴァプールにチャンスが訪れるだろう。この試合でも、スタイルを貫いてハイラインを敷きそうなテンハグユナイテッドであれば、なおさらその点は重要となるはずだ。

Ⅲ.試合の注目ポイント
(MUNボール保持VS.LIVボール非保持)

1⃣リヴァプールのプレッシングと裏のスペース

⑥リヴァプールのプレッシングのかたち

 リヴァプールのトレードマークであるプレッシング。いうまでもないと思うが、⑥のようなかたちで3ラインの縦・横の距離感を狭くなるように保ちながら、ユナイテッドと同じくWGの相手SBのパスコースを切りながらの相手CBへのプレッシングをトリガーとして、CFも相手アンカーのパスコースを切りながら圧力を掛け、パスコースを限定したところで中央に入ってきたボールをマークする後方の選手とプレスバックする選手で刈り取る。
 ユナイテッドのプレッシングに似ているが、リヴァプールは4-3-3(もしくは4-3-1-2)気味に立ち位置をとるので、中央のスペースはより狭く、下りてくる前線の選手にもアンカーが対応できる仕組みとなっている。もちろん、相手のアンカーなど、はっきりしたマンマークよりも受け渡しが多くなるので、プレッシングの難易度は増すが、それに余りある完成度がリヴァプールにはあり、ユナイテッドのそれよりもプレッシング自体の強度は高く、どの位置からでもプレッシングでボールを奪い取って速攻につなげてくる。

 前線からDFラインまでの距離を最小限にしようとする分、当然ながら裏のスペースは広大になり、そのスペースにロングパスが通って相手のチャンスとなることも少なくない。そこをマンパワーで止める!がリヴァプールの割り切りで、V.ダイクを中心としたDF陣が実際に止め切ってしまうがまた凄いのだが…
 ただ、ラインをできるだけ高く保つあまりに危険な状況でDFラインが高止まりしてしまっているシーンもあり、ユナイテッドとしてはビルドアップをうまく行ってボールホルダーをフリーにした状態で、裏へのランニングを増やして得点につなげたいところである。

2⃣ユナイテッドのボール保持のかたちと重要となるダロト

 これらのシーンすべて、各チームがリヴァプールのプレッシングを剥がしてチャンスを作っているが、そこにはある共通点がある。それはSBを経由しているということだ。
 ユナイテッドのプレッシングと同様、WGが相手CBまでプレッシャーを掛けることが多いので、その後方にいるSBにボールが渡ればチャンスとなりやすい。

⑦相手SBにボールが渡った際のリヴァプールのプレッシング

 もちろん、リヴァプールは相手SBにボールが入ったとしても、WGのプレスバックとIHによって中央へのパスコースを限定して、相手ボールホルダーから見て「4-3-2-1の網」を形成することで、相手の攻撃をサイドに追い込む立ち位置を取る。ただ、これをさせない立ち位置を取ったり、これをされても中央への斜めのパスで局面を打開したりする策を用意することで、リヴァプールのプレッシングを封印したチームがチャンスを作ることができているというのがミソだ。
 リヴァプール相手のビルドアップで重要なのは、⑴相手のWGとSBの間に位置する選手(主にサイドバック)を経由する⑵その選手がチャンスメイクできるだけの「時間」と「スペース」を供給するということで、そのための配置とタスクの整理が必要となる。

⑧ユナイテッドのビルドアップのかたちの予想

 ここからは、ではそれを踏まえてユナイテッドがどういう風にビルドアップのかたちを設定するかという個人的な予想になってくるが、ユナイテッドはプレシーズンでの一戦でも明確に(リヴァプール対策の常套手段である)ダブルボランチを置くということはしていなかった。(ほかの試合に比べて、IHが下りてくる回数は多かったが…)
 PSMでのビルドアップでは、⑧のようなかたちで左SBと2CBで3バックを形成しながら、ダロトの★と▲のような内外のポジショニングの使い分けで相手WGからパスコースを作り、それに連動して各選手がポジショニングをとるといった風に見えた。これには相手のWGを出し抜くダロトのポジショニングセンスとそのダロトの動き出しと相手を見て適切な立ち位置を取る各選手の状況把握力、つまり高度な「認知」の力が求められてくる。
 PSMとまったく同じ仕組みでくるとは思えないが、基本的に左SBとCBで3バックを形成することの多いユナイテッドにとって、ある種のフリーダムな動きができる「SB」のダロトはこの試合のビルドアップにおいて重要な役割を担うかもしれない。(これで先発ダロトじゃなかったらすみません笑)

3⃣リヴァプールの撤退守備の脆さ

 リヴァプールはどのエリアでもプレッシングを試み、相手からボールを奪い取ろうとするため、4-3-3のまま自陣での撤退守備に移行することが多い。完全に自陣にひくと、左WGが一列下がって4-4-2のような配置になるが、それでも相手のバックパスに呼応して各選手がスプリントをして再び4-3-3のようなかたちでプレッシングを狙うので、どうしても4-3守備のIHの脇、大外のスペースはケアしづらくなってくる。
 また、ペース配分はあれど、守備における3トップのタスクや仕事量は多く、試合終盤になると後方の選手もラインを上げきれなくなり、1列目(3トップor2トップ)と2列目(3センターor4枚のMF)の間が大きく乖離してしまうこともある。それをできるだけ小さなものにするように、前線の選手やIHを交代したり、4-4-1-1にフォーメーションを変えたりしているということも、リヴァプールの守備の弱点がここにあると表しているのではないかと思う。
 つまり、リヴァプールの守備は相手に常にボールを奪われる恐怖を与える分、それをうまく掻い潜られると一転して脆い守備が露呈するという諸刃の剣といえる。(何度も言うが、これを質で解決しようというのがリヴァプールの割り切りで、それができてしてしまう選手がいるというのが凄いところである。)

⑨ユナイテッドの定位置攻撃(崩し)とリヴァプールの撤退守備

 ビルドアップは散々だけど、相手を押し込んでの定位置攻撃は得意!な感じがする今のユナイテッド。無得点に終わったブレントフォード戦も、FP全員がペナルティエリア内に入る勢いの4点リードした相手の守りに対して、あと一歩で得点というところまでいっているのは評価できると個人的には思っている。
 リヴァプール戦もどんな形であれ、相手を押し込む展開にできれば3-1-6のような配置でリヴァプールの撤退守備を殴り倒すこともできそうであり、ユナイテッドとしてはその状況をいかに作るか、リヴァプールからすればどのように作らせないかという上述したリヴァプール、ユナイテッド両者のビルドアップ局面が重要となるはずだ。

Ⅳ.さいごに トランジションを制すものが
試合を制す!になりそう

 全てにおいて「速い」リヴァプールの試合は、相手のペースも速くなることによってサッカーの4局面における「ボール保持」、「ボール非保持」という整理された局面は短く、少なくなり、両チームの攻守の切り替えとなる「トランジション」の局面が圧倒的に増える。つまり、今まで言及してきたことでは説明できないような状況が多くなり、選手個々人、そしてチームの切り替えに対する意識が重要となる。
 リヴァプールの選手たちはその意識が非常に高く、「奪ったらチーム全員がスプリントして速攻を狙う、奪われたら直ぐに奪い返す」が習慣になっている。それに対して、ユナイテッドは前節ブレントフォード戦で相手よりも走行距離が13kmも少ないということが話題になったが、その意識がチームに浸透しているかといえば首を縦に振れない現状がある。
 果たしてその点がどう影響するのか。トランジション含めてこの試合は、相手よりも「走れたチーム」が勝利に近づくかもしれない。

 ユナサポとしては、テンハグの例の罰走による意識の向上に期待したところ笑(カゼミロがいなかったからーという状況にはなって欲しくないですね!)

タイトル画像の出典
https://www.aa.com.tr/en/sports/liverpool-beat-man-utd-in-1st-win-at-old-trafford-in-7-years/2240760

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