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プレミアリーグ第5節 レスターVS.マンチェスター・ユナイテッド レビュー

 安定の塩まき成功。ということで、内容は…という感じでしたが、3連勝という結果が今は一番大事だと思うので、よかったと思います!クロップもアルテタもペップも今のスタイルを身に着けるまでに、長い年数と大幅な選手の入れ替えを踏まえてるので、我々も待ちましょう。結果が付いてきているならなおさら。(これはほとんどアーセナル戦以前に執筆したものになります。投稿遅れてすみません🙇)

①スタメン

Ⅰ.前半 内容は結果を伴わず…なのか

1⃣ユナイテッドのプレッシングとレスターのビルドアップ

 前節からスタメンを変えなかったユナイテッド。今日もロングボール大作戦をされるかと思いきや、レスターは最初の5分あたりまではロングボールを多用してきたものの、基本的には後方からのショートパスによるビルドアップでユナイテッドに地上戦を仕掛けてきた。

②ユナイテッドのプレッシング

 n回目の言及となるユナイテッドのプレッシング。一言で言うなら、中盤から後ろはマンツーマン気味で、WGの外切りのプレスで中央で囲い込むor選択肢を奪うというやり方だ。ただ、リヴァプール戦以降マイナーチェンジしたようで、レスターの4-3-3の3枚の中盤にユナイテッドのダブルボランチとトップ下をマンツーマン気味にぶつけるのが従来の手法だったが、この試合は4-4-2(4-2-2-2)気味に構えて2トップで相手の2CB+アンカーを抑えるというかたちだった。WG外切りという基本は変わらない。

③レスターのビルドアップ

 少しわちゃわちゃしてしまったが、ユナイテッドのプレッシングに対してレスターは③のような意図をもってビルドアップし、それがしっかりと機能していた。
 それはWGが外切りのプレッシングをしてくる相手への常套手段ともいえる「中央を経由してサイドへ」(具体的にはアヤックスレビュー内の「(3)プレッシング プレッシングの弱み」で紹介してます!)というかたちだ。外切りの相手WGのプレッシャーに対して中央のパスコースを確保して、そこでのクッションを挟んで相手WG裏にいる選手(主にSBやWG)にボールを供給するという狙いである。(実際この試合のレスターの配置は、対アヤックスのドルトムントのビルドアップに似ていた。)
 レスターはGKをビルドアップに組み込むことで、CBを大きく開かせ、アンカーの脇に右IHティーレマンスを落とし、スマレとダブルボランチ気味に振舞わせ、ユナイテッドのCHがティーレマンスなどに食いついてきたら、その背後に左IHのデューズバリーホールやマディソンが顔を出すという2段構えで中央での数的優位を確保していた。特にボールの扱いに長けた右WGのマディソンにユナイテッド守備陣はかなり苦労しており、下りてくるマディソンに対して右SBジャスティンが高い位置を取っていたので、ユナイテッドの左SBマラシアは若干アプローチが遅れていたのではないかと思う。

 そんなこんなで、以前の相手のようにロングボールを蹴ってはこられなかったものの、レスターの準備したビルドアップに対してユナイテッドのプレッシングはこの日もあまり機能せず、試合を思うようにコントロールすることはできなかった。

2⃣レスターのプレッシングとユナイテッドのボール保持

➃レスターのプレッシングとユナイテッドのビルドアップ

 レスターは守備時になると、左IHデューズバリー=ホールを2トップの一角に置く4-4-2のかたち。プレッシングをする際には、4バックに2トップと両WGの4枚で対応させ、ボールサイドの相手ボランチをそのまま同サイドのボランチが抑え、逆のボランチはその後方のスペースを埋めることとなっていたが、相手の4バック+2CHに同数気味にプレッシングすることもあった。
 それに対して、ユナイテッド右SB+2CB+右CHマクトミネイの4枚でのビルドアップを基本としながら、状況に応じて左CHエリクセンと左SBがビルドアップをサポートする。その狙いとしては、相手2トップに対して3バック気味にビルドアップすることで数的優位を確保しながら、CHに食いつく相手ダブルボランチの後方の周辺のスペースをトップ下と1トップが顔を出してボールを引き出すことであったと思う。(編集後記→相手の配置も似ているアーセナル戦と狙いは近いものがあるかもです。)

⑤ユナイテッドの定位置攻撃(1)
⑥ユナイテッドの定位置攻撃(2)

 ユナイテッドが相手を押し込んだ際には、⑤の3-2-5から状況に応じて⑥の3-1-6のようなかたちとなる配置を取り、中央の相手のダブルボランチに対して3対2の数的優位を確保することで、相手を崩す狙いがあったのではないかと思う。

 サウサンプトン戦から続いて、相手の状況に応じて"アンカー"であるマクトミネイの脇にエリクセンが下りてサポートするようになっていたり、レスターの同数プレッシングに対してはロングボールを躊躇なく使うようになっていたりして、ビルドアップで無理をしないというテンハグのいい意味での「諦め」が、ここ2試合の安定感をもたらしているといえそうである。
 ただ、この試合を通じてショートパスによるビルドアップが成功したのは、自分の集計では4回(4',15',39',46')でロングボールでのビルドアップを狙うケースがかなり多かった。ビルドアップミスに対するリスク管理はできていたが、正直、ユナイテッドのボール保持がうまくいっていたかといえば、そうではない状況となっていたのがこの試合だった。

Ⅱ.レスターの修正とユナイテッドの課題

1⃣レスターのビルドアップでの修正

⑦レスターの後半のビルドアップのかたち

 ビルドアップがうまくいっていなかったわけではないが、よりそれを効率化するためとでもいうべきか、レスターはよりユナイテッドにとって"嫌なこと"をする2つの修正をHTで行った。
 まず、1つが右WGマディソンと左IHデューズバリー=ホールのポジションの変更。左利きが右サイド、右利きが左サイドに配置されたことでユナイテッドの後方の選手からすれば自分よりも遠い足でボールを持たれることが多くなり、なかなか強いアプローチができなくなったことに加え、マディソンがより低い位置でプレーすることによってビルドアップなどボール保持全般での安定感がぐっと増していた。
 もう1つが前半はダブルボランチ気味に振舞っていたティーレマンスをDFラインに完全に落として、SBのような立ち位置を取らせることでジャスティンをより高い位置に張らせて右サイドの配置を整えたということだ。これによって、ユナイテッド左WGサンチョの重心をさらに下げさせ、ティーレマンスはそこで空いたスペースから前線に効果的なパスをどんどん供給していった。

 基本的な型や配置は変わらないが、選手の配置や立ち位置を最適化させることで、後半のレスターはビルドアップをより円滑なものとすることができていたと思う。選手の疲れも影響したのか、そんなレスターにプレッシングが機能不全となったユナイテッド。前半に1点を先制しながらも、後半はほぼワンサイドゲームに近く、80分以降立て続けにカウンターからチャンスを作るまでは、シュートが1本もないという結果に終わった。
 ただ、内容とは裏腹に試合は1-0でユナイテッドの勝利。ユナイテッドとしては内容的にはサウサンプトン戦、もしかすると開幕2試合よりも悪い内容だった試合であった。レスターは内容的には悪くないが、スプリントや走行距離が少ないのか、守備時に間延びして中盤が空いてしまっているように見えるシーンが散見された。明確にどこが悪いというわけでもなく、チームのムードや流れ的な問題もありそうなので、解説の水沼さんがおっしゃっていたように、きっかけをつかむような結果(=勝利)が欲しいところではあるのかなと。

2⃣さいごに ユナイテッドのウノゼロブームについて

 リヴァプール戦からスタイルのマイナーチェンジを行ってから、サウサンプトン戦に続いての1-0。しかも、後半はほぼ自陣でのゲームである。もちろん、2戦連続のクリーンシートという結果は素晴らしいが、2試合とも追いつかれてもおかしくないゲームではあり、正直、リードした際には追加点を決め、先制された際には逆転できるような得点力が欲しいところ。

 選手個々の決定力の問題は抜きにして、なぜ得点がとれないのかというのを自分なりに考えてみると、2つの点が挙げられる。
 まず1つは、プレッシングが機能していないということである。サウサンプトン戦では相手のロングボール大作戦、レスター戦では地上戦で剥がされるという違いはあるものの、相手からボールを取り上げ、相手陣内でのプレーを増やさないことには得点を奪えないことに変わりはない。もちろん、相手を引き込んでのロングカウンターに頼る手もあるが、それも純粋な得点の確率が下がる方法であり、得点を取るためにはプレッシングを機能させる必要がある。
 そしてもう1つが、ビルドアップでのロングボールである。上述したように、このビルドアップでの「諦め」がユナイテッドの今の3連勝という結果につながっていることに変わりないが、やはりロングボールも相手にボールを明け渡す可能性が(ショートパスによるビルドアップに比べて)高く、得点の確率を下げてしまう方法論である。ブライトンのように、メリハリをつけてロングボールの回収に徹する手段もあるが、ユナイテッドの場合、まずはショートパスによるビルドアップを狙うかたちであるため全体が間延びする分、相手に回収される確率も増えてしまっている。(別にロングボールに徹しろ!といいたいわけではないですが…)
 つまり、今のユナイテッドは「ボール保持=ロングボール→相手に回収される→相手のボール保持=プレッシングが機能しない→相手に前進を許す→やむを得ずに撤退」という悪循環を起こしており、体力的にきつくなる後半はほとんど防戦一方となってしまっている現状がある。
 ロングボールによるビルドアップを多用するしかない現状のユナイテッドがこの悪循環を断ち切って、(量産するとまではいかないが、)得点を増やすためにはやはり、プレッシングを機能させることが必須である。レスターのように地上戦を挑んでくる相手には、リスクを掛けてでもボールを奪うよう試み、相手のロングボール大作戦に対策できるようにする。簡単なことではないが、今後、下位相手に勝ち点を取りこぼさないようにするためには、以上の2つの改善が求められてくるのではないかと思う。

(実際、この試合の得点シーンもサンチョのプレッシングで相手GKにロングボールを蹴らせた中途半端なボールをダロトがフリーで回収するところが起点となっています。)

 と、まじめな話をしたところで、時間軸もくるってますが、次はEL。ソシエダ戦。ボールを持とうとする相手は得意な今のユナイテッドですが、結果はいかにといった感じですね!では。

タイトル画像の出典
https://theuniteddevils.co.uk/2021/03/leicester-city-vs-manchester-united-preview-5.html

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