2023年J1リーグ展望② 【2022年6位~11位】
★FC東京(2022シーズン6位)
昨年、スペイン人のアルベル・プッチ監督が就任し、スペイン式4-3-3のポジショナルプレーに挑戦したFC東京。1年目ということもあり戦術の完璧な浸透とまではいかずショートカウンター主体の試合も多く見られたが、2年目となる今シーズンは機動力と技術を兼ね備えた美しいフットボールを期待したい。
目玉の補強は2019年のJ1リーグMVP仲川輝人(←横浜Fマリノス)。チャンピオンチーム・横浜FMでは出場時間が限定されていたが、突破力・スプリント力はまだまだ国内でも指折り。右WGでの起用となれば、【アダイウトン-ディエゴ・オリベイラ-仲川】という恐怖の3トップが完成し、相手チームの脅威になる。
アルベル監督の志向するフットボールにおいて最も重要な4-3-3の中盤には小泉慶(←サガン鳥栖)が加入。豊富な運動量とボール奪取能力に長けた、国内有数の日本人アンカーだ。
小川諒也(ギマランイス/ポルトガル)の抜けた左SBには、昨年ファジアーノ岡山の上位進出に貢献した徳元悠平を獲得し、バングーナガンデ佳史扶との定位置争いを活性化。
昨年のメンバーを下地にしつつ、的確な補強を実現した。
一方でここ数年クラブを支えた三田啓貴、髙萩洋次郎らベテラン選手が退団。堅守速攻からポジショナルプレーへ、脱皮の刻は近い。
★柏レイソル(2022シーズン7位)
昨シーズン、堅い守備からの速攻とFW細谷真大、MFマテウス・サヴィオらの好調で、序盤は暫定首位に立つほどの躍進を見せた柏レイソル。後半は失速してしまったが、再任したネルシーニョ監督が築いたカウンター主体のスタイルが芽吹き始めている。
今季、移籍に関して最も大きな動きのあったクラブの1つで、昨年大きなアドバンテージを生んだ守備陣から高橋祐治(→清水エスパルス)、大南拓磨(→川崎フロンターレ)、上島巧巳(→横浜Fマリノス)、ドッジ(→サントスFC/ブラジル)が移籍。
その一方で、高嶺朋樹(←北海道コンサドーレ札幌)、立田悠梧、片山瑛一(←清水エスパルス)、ジエゴ(←サガン鳥栖)、仙頭啓矢(←名古屋グランパス)といった、クラブカラーを継続した上で違いを生み出せるタイプの他クラブの主力級を次々と獲得。
他にも、モンテディオ山形でJ2に収まらない打開力を見せた山田康太、昨今のJリーグを席巻する流通経済大学からキャプテン・熊澤和希を獲得するなど、若い才能の発掘も怠らない。
多くの出入りはあったオフシーズンとなったが、新戦力と既存戦力の融合が成せれば、昨年以上の順位は十分に狙えるはず。
★名古屋グランパス(2022シーズン8位)
昨シーズン、リーグ最少失点をマークし「堅守の名古屋」のイメージをより一層強固なものにしたグランパス。しかし、得点数はリーグワースト2位。シュビルツォク(ザグウェンビェ・ルビン/ポーランド)がドーピング処分を受けて以降、フィニッシュワークの修正が最重要事項となっている。
そんな中、このシーズンオフはJリーグ屈指のセンターフォワードの獲得に成功した。キャスパー・ユンカー(←浦和レッズ)だ。
スピード・技術共に秀でた元デンマーク代表選手で、その能力を考慮すると浦和時代は本領発揮していたとは言い難い。新天地・名古屋で得点王クラスの爆発を果たせば、自ずとクラブの順位も上がっていく。
逆に流出した巨大戦力はワールドカップにも出場を果たした相馬勇樹(→カーザ・ピア/ポルトガル)。
和泉竜司(←鹿島アントラーズ)の獲得や、内田宅哉の成長で大きな穴は空かないとは思うが、ボール前進力・セットプレーの面でどの様な影響が出てくるかは未知数。
契約満了となったレオ・シルバのポジションには、予てよりJ2の人気銘柄だった山田陸(←ヴァンフォーレ甲府)、レンタルから復帰した米本拓司(←湘南ベルマーレ)が加入と、むしろ層を厚くした印象だ。
コーチ陣では楢崎正剛氏が満を持してアシスタントGKコーチに就任。
長谷川健太監督就任2年目の今季。一定の成果を挙げた3バックシステムを引っ提げ、真価の問われる分水嶺のシーズンになる。
★浦和レッズ(2022シーズン9位)
2020年に掲げられた「3年計画」。2021年の天皇杯、2022年のACL決勝進出とカップ戦では結果を残したものの、リーグでの最高成績は2021年の6位と、結果だけ見ると「3年計画」は成果を挙げられなかったといえる。
今季は、ポーランドリーグで5度のリーグ優勝を経験しているスコルジャ監督を招聘し、前ロドリゲス監督の組織を踏襲しながら、優勝を目指せるチーム作りに取り組んでいる。
オフシーズンには松尾佑介(→KVCウェステルロー/ベルギー)、江坂任(→蔚山現代FC/韓国)、キャスパー・ユンカー(→名古屋グランパス)といった攻撃の要が移籍。
点取り屋として、昨季はJ2熊本で14得点とブレイクした髙橋利樹(←ロアッソ熊本)を競争の末獲得し、レンタルしていた興梠慎三(←北海道コンサドーレ札幌)を呼び戻した。
守備陣はノルウェー人CB・ホイブラーテン(←ボーデグリムト/ノルウェー)、レンタル先で大きく成長した荻原拓也(←京都サンガFC)が加入した上、カタール移籍が噂された岩波拓也含め昨年の主力が軒並み残留し、かなりの層の厚さとなった。
夏の市場で伊藤敦樹、小泉佳穂、秋元孝浩らの主力が海外移籍する可能性は十分あるが、個々の戦力と数では現状リーグ上位のポテンシャルを有しており、新監督の下で一気に順位を上げてもおかしくないスカッドが完成した。
★北海道コンサドーレ札幌(2022シーズン10位)
ペドロヴィッチ監督体制6年目。ここまで就任初年度の2018シーズン4位に迫る成績を残せていないものの、”ミシャ式”と呼ばれる攻撃的な3バックシステムで安定した順位での戦いを見せているコンサドーレ。
今オフには、元韓国代表GKク・ソンユン(←金泉尚武FC/韓国)が兵役から待望の復帰。攻撃的で魅力的なシステムを採る一方、2022年は失点数55とリーグワースト2位。ゴール前に頼もしい守護神が帰ってきた。
主力では檀崎竜孔(→マザーウェルFC/スコットランド)、高嶺朋樹(→柏レイソル)、ガブリエル・シャビエル(所属未定)が退団。檀崎、高嶺は札幌でデビューした生え抜きという事もありチームカラーに影響を及ぼしそうだが、一方で即戦力として小林祐希(←ヴィッセル神戸)、馬場晴也(←東京ヴェルディ)、浅野雄也(←サンフレッチェ広島)を補強。彼らが計算通りの活躍を見せれば、戦力ダウンは避けられそうだ。
新戦力含め、今シーズンも札幌らしい個性的なプレーヤーが揃った。世界でも類を見ないモダンで目新しいフットボールで、今年こそ台風の目になるのを期待したい。
★サガン鳥栖(2022シーズン11位)
昨季、主力の大量流出が起こりシーズン前は降格候補に数えられていたものの、川井健太新監督の下で前半戦は最高5位に付けるなど、選手が変わっても質を落とさない、”哲学”の浸透を証明したサガン鳥栖。
そして、今季も選手を成長させては引き抜かれるという鳥栖のジレンマは続く。
得点の稼ぎ頭の宮代大聖(→川崎フロンターレ)、垣田裕暉(→鹿島アントラーズ)がレンタル元へ帰り、2022年攻守に渡り圧倒的な存在感を放っていた小泉慶(→FC東京)、ジエゴ(→柏レイソル)が移籍した。
しかし、何ともワクワクする可能性に満ちた補強に成功した。
まずは、昨年のJ2でNo1ボランチとの評価を受けたMF・河原創(←ロアッソ熊本)の獲得に成功。鳥栖のスタイルにピッタリの逸材だ。
更には、世代屈指のテクニシャン樺山諒乃介(←横浜Fマリノス)、俊足を武器にU-20日本代表のエースを務める・横山歩夢(松本山雅FC)も獲得。この3人を獲得出来ただけで、このシーズンオフの勝者と言っても過言ではない、ブレイクの匂いがする原石達を手に入れた。
更に、ジエゴの後釜としてケニア代表のアンソニー・アクム(カイザーチーフス/南アフリカ)を補強し、2022高円宮杯プレミアリーグで全国の頂点に立ったサガン鳥栖U-18から4名の選手をトップ昇格させた。
フレッシュで充実の戦力と、新進気鋭の若手監督。
この2つが混ざり合い爆発するシーズンは、今シーズンかもしれない。
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