2023年J1リーグ展望③ 【2022年12位~16位+昇格組】

★湘南ベルマーレ(2022シーズン12位)

昨年は開幕から夏までは最下位争いに沈み、最終盤には浮上したものの常に降格ライン前後で戦うシーズンだった湘南。山口智監督就任3年目の今季こそ、スタイルを確立し目に見える結果を求めていきたい。

最も大きな変化は、GK谷晃生がレンタルから保有元のガンバ大阪に戻ったこと。日本代表の絶対的守護神の穴は大きいが、同格といえる韓国代表GKソン・ボムグン(←全北現代モータース/韓国)をしっかりと連れてくる事に成功。最大の不安要素を埋める、最高の補強と言えるだろう。

センターラインの米本拓司(→名古屋グランパス)、瀬川祐輔(→川崎フロンターレ)、ウェリントン(未定)が抜けたポジションには、永木亮太(←名古屋グランパス)、山下敬大(←FC東京)、小野瀬康介(←ガンバ大阪)を獲得。中堅~ベテランの計算の立つ戦力を選んだ手堅い補強だ。

現状は堅く守り、早く攻めるというクラシカルなカウンタースタイル。昨年はFW町野修斗のブレイクに救われた側面もある。
正直戦力面でそこまで大きな変化は無い今シーズン、直近の目標は残留争いに巻き込まれないシーズンを過ごし、勝ち切れるフットボールを目指す事だろう。


★ヴィッセル神戸(2022シーズン13位)

2022年。強大な戦力を有しながら、二度の監督交代、開幕から11試合勝利無しと、まさかの残留争いの憂き目にあったヴィッセル神戸。

オフシーズンにビッグネームの獲得が予想されたが、むしろ中心選手の流出の方が目立つ形となった。
昨年チームに勢いをもたらした下部組織出身の若手・小田裕太郎(→ハート・オブ・ミドロシアン/スコットランド)、小林友希(→セルティック/スコットランド)がステップアップ。夏に加入後、後半戦浮上の原動力となった小林祐希(→北海道コンサドーレ札幌)が移籍した。

それでも選手層の厚さはまだまだリーグ随一。補強は最小限に留めた印象だ。昨年はサンペールや扇原の怪我で苦しんだボランチの位置には、井出遥也(←東京ヴェルディ)、斉藤未月(←ガンバ大阪)が加入。大迫や武藤の君臨するアタッカー陣には、ジェアン・パトリッキ(←セレッソ大阪)、川崎修平(ポルティモネンセ/ポルトガル)ら、ライバル・ジョーカーになり得る戦力を手に入れた。

GKやセンターバックの選手層は少々気になるが、菊池や大崎ら、受けに回らず勢いを持ってプレー出来れば、実力を発揮できるタイプの選手が多い。
吉田監督の志向するアグレッシブな守備が体現できれば、優勝争いも現実味を帯びてくる。

★アビスパ福岡(2022シーズン14位)

昨シーズン、お家芸にもなりつつある堅い守備で中位に付けるも、リーグワーストの得点力不足が露呈し終盤は残留争いを戦った福岡。

得点力アップのカードとして、J2で2年連続13得点を挙げている佐藤凌我(←東京ヴェルディ)を獲得。彼に加え、昨年10得点の山岸や、ルキアン、ジョン・マリの安定したポイントゲットに期待したい。

正確で破壊力のある左足で攻撃のキーマンを担っていたジョルディ・クルークス(→セレッソ大阪)の抜けた穴には、同じく左利きのドリブラー・紺野和也(←FC東京)を補強。大きな戦力ダウンには繋がらないだろう。
絶対的な左SB・志知孝明(→サンフレッチェ広島)の移籍には、小田逸稀(←鹿島アントラーズ)、亀川諒史(←横浜FC)と2人のサイドバックで対応。

彼らを含め、補強がたった6人と話題になっていたが、2月に入り井手口陽介(←セルティック/スコットランド)の電撃加入が発表。これにより前寛之との国内トップレベルのドイスボランチが実現する。

知将・長谷部茂利監督就任4年目。従来通り堅守を磨き上げるのか、新たなスタイルを模索するのか、楽しみなシーズンになる。



★ガンバ大阪(2022シーズン15位)

神戸同様、2022シーズン前は上位候補に数えられていたが、流れの悪さを1年間断ち切ることが出来なかったガンバ大阪。
今季は攻撃的サッカーを志向するスペイン人監督ダニエル・ポヤトス氏を招聘、宇佐美貴史がキャプテンに就任し背番号を「7」に変更するなど、変革と覚悟の見えたシーズンインとなった。

移籍の目玉は、GK谷晃生(←湘南ベルマーレ)のレンタルバック。東口順昭と日本最高峰のポジション争いを繰り広げる事となる。
更に、動向が注目されていたU-21日本代表・半田陸(←モンテディオ山形)、J2トップクラスのサイドアタッカー杉山直宏(←ロアッソ熊本)と2人のJ2注目株を獲得。昨季、やや迫力に欠けたサイド攻撃を活性化させてほしい。

外国人選手は、カタールワールドカップにも出場したチュニジア代表ストライカーのイッサム・ジェバリ(←オーデンセBK/デンマーク)、イスラエル代表MFネタ・ラヴィ(マッカビ・ハイファFC/イスラエル)とJリーグには馴染みの無いエリアから実力者を獲得。

パトリック、ウェリントン・シウバ、斉藤未月、小野瀬康介、昌子源と昨年の主力は多くチームを去ったが、補強戦力の質はピカイチ。
新監督・新戦力を手にし、名門復活へ新たなチャレンジの年になる。


★京都サンガFC(2022シーズン16位)

12年振りのJ1挑戦となった昨年。序盤戦は機動力に優れた激しいフットボールで上位争いに絡んだが、中盤以降は勝ちきれない試合が多く大失速。
最終的にはロアッソ熊本との入れ替え戦に周り、辛くも残留を決めた。

オフシーズンの動向が注目されたが、結論から言うと現段階では少し心配になるスカッドとなった。

J1昇格の原動力となり、昨季もチーム得点王の活躍を見せたピーター・ウタカ(→ヴァンフォーレ甲府)が契約満了。そして、ビッグセーブと正確なフィードで攻守共にキーマンとなっていた上福元直人(→川崎フロンターレ)が移籍。ダイナミックな上下動で京都のフットボールの象徴的存在だった萩原拓也(→浦和レッズ)が保有元へ戻った。

三竿雄斗(←大分トリニータ)、平戸太貴(←町田ゼルビア)、一美和成(←徳島ヴォルティス)らに加え、ウタカの穴埋めとしてパトリック(←ガンバ大阪)、GKにはスリナム代表のワルネル・ハーン(IFKヨーテボリ/スウェーデン)を獲得と、各ポジションに高水準の選手を補強したが、純粋な戦力ダウンをした感は否めない。

2021年のJ2リーグで見せた、アグレッシブな姿を取り戻すのは必須項目。
J1復帰2年目。名将・曺貴裁監督の育成力と指導力で、強靭な京都スタイルを見せつけたい。


★アルビレックス新潟(2022シーズン・J2優勝)

昨季、横浜FCとのデットヒートを制し、優勝・6年ぶりのJ1復帰を果たしたアルビレックス新潟。J1で互角以上に戦う為、J2で73得点を挙げたポゼッションの高い攻撃的サッカーが継続できるかが焦点となる。

昇格初年度は大掛かりな戦力の入れ替えに舵を切るものだが、主力の流出はほぼ無く、新戦力の補強も最小限となった。

新加入は、2022年40試合11得点の太田修介(←町田ゼルビア)、3年振りの復帰となったSB新井直人(←徳島ヴォルティス)、Jリーグ挑戦初年度となるブラジル人ダニーロ・ゴメス(AAポンチ・プレッタ/ブラジル)、グスタボ・ネスカウ(クイアバEC/ブラジル)の4名のみ。

昨年ベストイレブンに6名が選出された従来の主力がベースになるが、不安要素は得点ランキング上位に新潟の選手の名が無かった部分。

昇格初年度で攻撃的な戦術を継続するのは至難の業だが、スタイルを継続した上で新加入選手が得点ランキング上位に名を連ねる活躍を見せれば、J1でも十分に戦える下地は有するチームだ。

★横浜FC(2022シーズン・J2準優勝)

大エース・小川航基の爆発もあり、見事1年でのJ1復帰を果たした横浜FC。
J1仕様のハイプレスフットボールに挑戦しているという報道もあり、どのような戦いを見せるか注目だ。

新潟とは対照的にこちらはかなりの人数が入れ替わるシーズンオフとなった。ユースからの昇格を含め、新加入は実に21名。
加入選手の注目は左SB橋本健人(←レノファ山口)。インサイドでもプレー可能な万能型サイドバックで、長谷川達也との縦関係はチームのストロングポイントになる。更には運動量豊富なサイドハーフ・坂本亘基(←ロアッソ熊本)が加入。左右での併用も視野に入れ、かなりの選手層となった。

一方、守備陣からは昨季大活躍だった亀川諒史(→アビスパ福岡)、イサカ・ゼイン(→モンテディオ山形)が退団。システム変更含め、どのような運用になるか注目。

中盤には三田啓貴(←FC東京)、栃木でもプレー経験のあるユーリ・ララ(←CRヴァスコ・ダ・ガマ)が加入。中盤の顔ぶれは一新される可能性が高いだろう。

大きな改革に踏み出したのは間違いないが、昨季見せた勝負強さでまずは残留を目指したいところだ。

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