「幅」と「裏」【J1リーグ第21節 セレッソ大阪×浦和レッズ 観戦記】
7月16日(日)ヨドコウ桜スタジアム。J1リーグ第21節セレッソ大阪×浦和レッズを現地観戦。
リーグ中断前、4位と5位に付ける両クラブの優勝争いに絡んでいく為の重要な一戦だ。
地元クラブのセレッソ大阪はもちろん、個人的には今季の浦和レッズには大きな期待をしており、関西で観られる貴重な機会という事でうだるような暑さの中、40分間自転車を長居まで走らせた。
キックオフ30分前、スタジアムに到着。3連休の中日という事もあって、いつもよりもスタジアム周辺の密度が高い。
バックスタンドアウェイ側上段に進むと、これまでのヨドコウのスタンドとは違った空気が広がっていた。
アウェイサポーターがかなり多い。自由席にここまでアウェイサポーターが陣取るのは、浦和を含めて数クラブしかないだろう。
Jリーグファンとしてはお恥ずかしい話なのだが、実は私はこの日浦和レッズの試合を初めて生で観戦した。
アウェイゴール裏は赤一色に染まり、日本一のチャントと絶え間ないジャンプが試合前から地鳴りのように響く。これぞ、サッカースタジアム。これぞ、浦和レッズ。あの応援を体験するだけでもスタジアムに足を運ぶ価値はある。いつか、さいたまスタジアムにも行かなければ。
セレッソサポーターもいつにも増して熱が入り、最高の空間の中、選手が入場しキックオフ。
セレッソ大阪は4-4-2、浦和レッズは4-2-3-1の初期配置。
双方守備時は4-4-2のブロックになる嚙み合わせになったこの試合、結果としては2-0でセレッソ大阪の完勝。
その勝敗を分けたのは「幅」と「裏」の使い方だった。
「幅」生み出す、香川真司の配給
この試合も浦和レッズは、興梠・安居をスイッチとして得意のハイプレスを仕掛ける。このプレスは十分に効果を発揮し、高い位置でのターンオーバーからの浦和の先制を予感させた。しかし、意外な形でゲームは動いた。
スローインを受けた加藤陸次樹が相手DFと入れ替わると、そのまま左サイドを持ち上がる。ショルツがボックス外に釣り出された状態で供給されたクロスに、フリーのレオ・セアラが右足で合わせ、セレッソ大阪が先制。
この得点で生まれたC大阪の”余裕”がゲームの流れを決定付けた。ここからはボランチに入った香川真司が最終ライン近くでボールを受け、相棒の喜田陽と共に浦和のプレスをいなしていく。
特に効果的だったのは、同サイドへプレスを掛けてきた際の対角へのサイドチェンジ。右SHジョルディ・クルークスへの体を開いた状態のキックが高クオリティで、このサイドチェンジにより「幅」を作り、相手プレスのギャップを生み出した。
その結果、最終ラインから2トップへ向けてブロックの間を通す縦パスが入り、浦和の守備体系を混乱させた。
外回りになった浦和のオフェンス
一方、浦和の攻撃は手詰まり感が否めなかった。
前半は岩尾、後半は安居を最終ラインに落として3枚でビルドアップする形を取った浦和は、ミドルエリアでブロックを構えるC大阪に中央へのパスコースを消され、右の大久保、左の関根・荻原にボールを預ける。
しかし、このパスコースが外回りかつ距離感が遠かった事で相手守備陣にスライドする時間を与えてしまい、C大阪のコンパクトなブロックを崩せない。選手の配置では「幅」を取るもブロックを拡げるまでに至らず、逆にサイドでC大阪のプレスに嵌ってボールロストをする場面が散見された。
前半44分のシーンのような、興梠と大久保がマークを引き付け、その間のスペースに走りこんだ伊藤にショルツが浮き球を出したシーンは、浦和の狙っていた攻撃だっただろう。
しかし、それが頻繁には起きなかったのは、C大阪のポイントを押さえたプレスと我慢強いブロッキングの賜物だ。
外→中→外で「裏」を攻める
C大阪は、前述の「幅」使った攻めによりサイドバックの裏への攻撃も可能にした。
「幅」使って相手ブロックのギャップを生んだ事で、ボランチやセンターバックから、スペースに降りてきたFW加藤陸次樹への縦パスが面白いように通る。そこからフリックやレイオフで左サイドに展開して、C大阪自慢のアタッカー・カピシャーバに良い形でボールを預ける。
がっぷり四つの1対1であれば酒井・荻原共に強さを発揮するが、サイドバックの「裏」を意識した攻めで浦和の両サイドバックの強度を無力化。更にはボックス内で無類の強さを発揮するホイブラーテン、ショルツの目線を外に向け、ボックスから釣り出すことでゴールの可能性を格段に高めた。
小菊監督仕込みの堅いブロックで守備から入り、サイドとボックス内のタレントでゴールに迫るセレッソ大阪の強さは今季も健在。対戦相手にはそのブロッキングを貫くビルドアップ面の工夫が求められ、比較的オープンなゲームを得意とする浦和レッズにとっては相性の悪い相手だった。
スコルジャ監督就任以降の浦和は、前線に守備面での強度の高いプレイヤーを並べており得点力の低さが課題となっている。この試合は、その弱点が露呈した形だろう。
とはいえ、両クラブ共にこの数年でスタイルが固まりつつあり、そのスタイルがどのように噛み合うかという点では非常に面白いゲームだった。
後半戦に突入したJ1リーグ。この2チームの成績如何で上位争いはより混沌とする。
順位表を搔き回す躍進に期待したい。
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