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しあわせの形はいろいろだ

宮下奈都さんの作品は『太陽のパスタ、豆のスープ』を読んで、好きになった。婚約破棄された女性が、悩みながらも前を向いて生きていこうとする物語だ。
元気がない時や自分を奮い立たせたいときに何度も何度も読んで、勇気をもらった。

そんな宮下さん家族が北海道の十勝・トムラウシという地域に暮らした1年間の日々を描いたエッセイ、『神さまたちの遊ぶ庭』を読んだ。

私自身も、小学校5年生まで札幌に住んでいた。冬は雪で遊んだり夏はキャンプをしたり、自然豊かな北海道は大好きな場所だ。宮下さんが1年間暮らした地域は、私が住んでいた札幌よりもはるかに田舎。標高が高く、真夏にも関わらず遭難事故が多発するほど、恐ろしい場所であるという。

カムイミンタラ。アイヌの言葉で「神々の遊ぶ庭」と呼ばれるくらい、素晴らしい景色の場所らしい。
そんな地域に暮らした、宮下家の1年間の軌跡が綴られている。

最初はトムラウシで暮らすことに後ろ向きだった宮下さんだが、トムラウシでの暮らしを通して、次第に気持ちが変化していく。学校の先生や地域の人達、移住してきた家族、宮下家と様々な人との関わりを見ていると、こんな暮らしもあるんだなぁと羨ましく思える。何より、自由で個性溢れる宮下3兄弟たちが愛らしい。思わずクスッと笑っちゃうようなエピソードで溢れている。具体的なエピソードはぜひ読んで欲しいので割愛する。

このエッセイの中で特に印象に残った言葉がある。

しあわせって、たぶんいくつも形があるんだろう。大きかったり、丸かったり、ぴかぴか光っていたり。いびつだったり、変わった色をしていたりもするかもしれない。そういうのをそのまんまで楽しめるといいとつくづく思った。

宮下奈都『神さまたちの遊ぶ庭』

人から見たらいびつでも、しあわせならそれでいい。トムラウシで暮らす中で見つけた宮下さんのしあわせも、きっとそういうものなのだろう。

宮下さんのエッセイは、とにかく面白い。正直言って、物語よりも好きだ。この作品も、手元に置いてふとしたときに何度も読み返したくなるだろう。

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