プロジェクトマネージメント特性比較 ブロックボールゲーム実験
第1節 ブロックボールゲームの背景
ここまで、アジャイル型と ウォーターフォール型の特徴を 実際の開発データから見てきた。本章では、開発プロジェクトを単純疑似化したブロックを使用したゲームから、アジャイル型と ウォーターフォール型の特徴を比較観察する。ブロック を用いてプロジェクトマネージメント を学ぶ手法は、以前から世界中で行われている [Paasivaara, Ville, Lassenius, Toivola, 2014]が、本研究のように実験として使用されている論文は見つからなかった。本研究では、ブロックタワーボールを使用しゲーム条件を変え、アジャイル型と ウォーターフォール型の特徴を比較する。
目的
この実験の目的は以下の3点である。1)アジャイル型とウォーターフォール型の特徴と効率の比較。2)システム開発のリスクに対するアジャイル型とウォーターフォール型の影響比較。3)開発データやモデルでは確認できない特徴、リスクの観察。特に、2点目について、“ゴールやシステム要件が変わる要件リスクが高いプロジェクトでは、最初から全てを決めるウォーターフォール型よりも柔軟なアジャイル型を選択すべき”という帰無仮説を設定し検証する。
使用するツールの要件
1. 何度か繰り返し行うため、ゲームプレーヤーが疲れない10分程度で完成可能な簡単なもの
2. 単独で行うよりも、グループ(複数名)で協力した方が効率的なもの、一人で行った方が早く完成する物ではなく協力可能なもの
3. 作業が区別可能であり、協業だけではなく分業が出来るもの。つまりシステム開発では、PM、Architect、Dev、Test と分けられるもの
4. アジャイル型方式、ウォーターフォール型方式の プロジェクトマネージメント を縮図化するため、全体としても作成可能なもの。また、開発のステップを分離可能なもの
5. 最終的に成功、失敗がクリアに区別可能なもの。Lego ® やブロックでは、芸術点や使用したブロックの数をもって成功と定義することも可能ではあるが、成功したと作成者が主張した際に確実な判断を下せる要素が難しい。システム開発に置き換えると、最後にリリース試験が行えるもの。また、リリース後に動作しているかどうかを判断をすることが可能なもの。
6. この実験では、技術リスク、スキルリスクを体現、区別可能なように完成後の作成図を作って提示したりしなかったりする。そのためには、ゲーム終了後の回答例を作成することが可能であるが、システム開発の実際に即すために ゴール、要件を元に、完成した作品が独自性を持つことが可能な物。言い換えると、特定の形づくられた完成形が必ず同じ形になるプラモデルのようなものではなく、必要とあれば、ゴールと要件を満たしてさえいれば、完成形が複数あるもの。
7. 作成する際の要素が複数あり、大きな方向性としてのゴール、詳細な課題として考慮されるべき 要件をクリアにすることが出来るもの。
来週以降、ブロックボールゲームの詳細と実験詳細について述べる。