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東京大学の入試問題を解いてみた その2 ~令和3年 地理 第2問 設問A 小問(1) 

今週は東大の入試問題を解いてみるシリーズ第2弾だ。

著作権との関係で、問題文を記載できないこと、東大非公認の筆者達の独断と偏見の回答であることにはご留意いただきたい。

問題は大雑把に、次のとおりだ。

図表に記されているアメリカ合衆国の2つの州について、時代と共に人口の増加率に差異が生じている理由を示せ


以下、筆者達の分析アプローチを提示しつつ、回答例を示してみたい。

今回は問題文が短いため、問題文と図表の分析をまとめて行う。
・場所
 アの州:西海岸にある
 イの州:その隣
・人口増加率
 1970~1990:ア 49.1%  イ 107.0%
 1990~2010:ア 25.2%  イ   74.4%
・人口特性(2010)
 ヒスパニック系:ア 37.6%  イ 26.5%
 75才以上   :ア   5.3%  イ   4.7%

これらの情報をあわせて分析しつつ問題を解いてみよう。(筆者達はアメリカの知識が少ないので州の名前についてグーグル先生の助けを借りた)
・まずは州の名称から
 ア州はカリフォルニア州
 イ州はアリゾナ州
・次に人口特性
 ア州の方がヒスパニック系がやや多い(約10%の差)
 75才以上の人口比率に差はほぼない(約0.6%の差)

カリフォルニア州には、いわゆるシリコンバレーやロサンゼルスがあり、大手企業が集まっている。最近の経済の知識を踏まえると、ア州の方が人口増加率が高そうなイメージがある。ところが、人口増加率を見ると、IT化が進んだ2000年以降の方が増加率が半減しており、25.2%にすぎない。
新聞やニュースで、大手IT企業が進出したことで労働人口は増えるが、家賃が上がりすぎて地元の人が住めなくなっているというニュースを聞く。伸び率低下はもしかするとこれが原因かもしれないと仮説を立てる。

これに対してアリゾナ州は、半導体大手のTSMCが工場の建設を発表するなど、企業の投資対象地域になっている匂いがする。工場を建てる際には、建設先の労働力もあてにしなければならない。また、工場で働く人に支払う賃金も重要だ。カリフォルニア州のように大手IT企業の従業員が働いていると必然的に賃金を上げないとヒトを集められないし、賃金が高くなってしまう。これをヒントに考えてみると、顧客の近くにあった工場があった方が、R&D、納品(物流)、営業に便利なため、IT企業隣の州に進出しておきましょうか、となる。そして、IT企業で使われる製品や部材を製造する企業(いわゆるメーカー)は、工場が必要になる。この工場では当然安く作らなければ顧客は買ってくれないので人件費や不動産が高い地域は避ける。そして、隣の州に移転してくる、と。このような背景が、実は年々積み重なっているのではないかと仮説を立てる。

総評すると、筆者達の答えは次のとおりだ。
ア州は、IT企業が集中するため、人口が増える要素があるものの、家賃が上がり人が住みづらくなっており、人口の伸び率が鈍化している。これに対し、イ州は、IT企業の周辺産業、それもメーカーが集まっており、人口の伸び率が高い水準で維持されている。

上記のアプローチや内容が正解かどうかは別にして、シリコンバレーの現象はゴールドラッシュの類似ケースなのかもしれないと考えた。ゴールドを堀りに行く人がいれば、当然その人たちに必要なモノを供給する人々が現れる。これと同じ構造がカリフォルニア州周辺に起きているではないかということだ。

今回の問題から学んだことは次の2点だ。
・目立つ部分だけではなく周辺部分にも着目し、幅広い視点で物事を見る
・過去の現象を抽象化し、現在の現象にあてはまる部分がないかを考える

以上 


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