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新千歳空港とアイヌの里の話し

もう10月ですね。早い。

だいぶ前ですが、北海道に1人で行ってきました。

本当は今年はもうどこにも行くつもりはなかったのですが、コロナが騒がれ始めた3月にキャンセルした航空券のフライトバウチャーの期限がせまってきたので、もったいないと思い消費することにしたわけです。

それにしてもコロナ自粛の影響はすごかったです。

いつも使っていた空港行きのバスはすべて運休(!!)していたので、久しぶりに電車に乗りました。

めちゃくちゃ空いてる。

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空港もめちゃくちゃ空いてる。

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空いてるというか誰もいない。

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広々した空港が無人の状態って、ゾンビ映画とかでパンデミック起きた時にしか見たことなかったけど、実際その通りのことが起きるとマジで無人になるというのがわりと衝撃でした。

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わたしはしかし、こういう異常事態というか、非日常的な状態のほうがなんとなく落ち着きます。

コロナですべてが変わった2020年でしたが、わたし自身は生まれて初めて自分の本性に最高に合った生活をしているというのが正直な感想で、大変な状況に苦しんでる人には申し訳ないですが、2020年は個人的にかなり楽しいといった一年になりつつあります。

ところで飛行機は、意外にも満席でした。

それもそのはずで、経営的に打撃がすごい航空会社は相当減便して、そのぶん一回の飛行に大量に人を乗せて輸送してるんだなあと思いました。

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飛行機に乗ると雲の高いところをいくためか、高確率で虹とか日輪とかに遭遇しますが、安全な空の旅を天が約束してくれてるみたいでうれしいです。

機内からは遠く富士山が見えました。

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去年はあんな雲の上にいたのかと思うと信じられない気持ちがします。

どんなに雲が広がっていても、その雲を突き抜けはるか房総半島の先にまで大地の存在感を示している富士山はすごい山だなって思います。

そんなことを考えてるうちに、あっというまに新千歳空港に着きました。

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今回の目的はこの新千歳空港です。

新千歳空港は、日本でいちばん楽しい空港と言っても過言ではないです。

北海道のおいしいものが食べられるお店が何十軒もあり、映画館と温泉までついている。

なのでわたしは出張で来るたびに「新千歳空港を楽しむ時間」をプラス2時間ほど確保してきたのですが、なぜか毎回予定外のことが起きて時間ギリギリになり、ああまた遊べなかったと半泣きで空港を後にすることばかりでした。

いつか絶対に、新千歳空港で遊ぶだけの日を作るぞ。

その夢が叶う時が来ました。

どうせコロナでどこにも行けない状況のなか期限内限定フリーパスの航空券が舞い降りてきた、新千歳空港を遊び倒すなら今しかない。

というわけで空港から一歩も出ないという決意でターミナルホテルまで予約しました。着陸して荷物を受け取ったら即チェックイン可能という、空港の中のホテルがこんなにも便利であることにずっと感動しっぱなしでした。それではわたしの新千歳空港豪遊記録をご覧ください。

〜その1〜

ここでしか食えないカルビーのあげたてじゃかりこことポテりこ。

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お店の人がその場で1分くらいで作ってくれます。めっちゃ熱い。うまい。ジャンクといえばジャンクな味だけど、まわりの出張中のサラリーマンもみんな食ってました。

〜その2〜

寿司。

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北海道といったら寿司、寿司といったら北海道。

もう寿司だけは絶対食べようと思っていました。イクラとウニと大トロ、ついでに白ワインも飲みました、最高でした、誰もいない店内で一人めっちゃ笑顔になってしまう、大人になって本当に良かったと思いました。

〜その3〜

一幻のえびそば。

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ご存知超人気ラーメンですが、いつもはスゴイ行列なのに、コロナのせいで並ばずすぐ入れました。

自動検温、アルコール消毒、アクリル板など対応も徹底してて、さすが人気店だなあという感じでした。

ちなみに味はふつうにおいしかったですが、わたしはもともとラーメンが大好きというわけでもなくあくまで「今日という今日は新千歳空港を楽しむんだ」という目的で来たためとりあえず片っ端から話題のものを体験してみたかっただけで、他の店の海鮮味噌バターコーンラーメンとかのほうが自分に合ってたかもしれないと思いつついただきましたごちそうさま。

〜その4〜

流氷ハイボール。

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その名の通り、本物の流氷を使ったウイスキーです。

これがめちゃくちゃおいしくて、2杯もおかわりしました。本当においしかった。びっくりするくらいおいしかったので3杯目も頼もうかと思いましたがさすがに1人で3杯は飲み過ぎだと思ってやめました。でも3杯目も飲んでおけばよかったなっていまは思ってます。

〜その5〜

ISHIYA CAFÉ の白いパフェ。

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食べた人全員が新千歳空港で間違いなくいちばんおいしいスイーツと絶賛するこの白いパフェ。

しかしこれ以上食べたら確実にカロリー過多で爆死するので、店頭で写真だけ撮りました。美しいです。次来た時に食べます。あとパンケーキもめちゃくちゃおいしそうでした。

〜その6〜

温泉。

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ターミナルホテルに泊まると、無料で入れます。

しかもかなり遅い時間になっても入れるので、すべての旅客機が運行を終え、マジのマジで人っ子ひとりいない空港のなかを横切りながら温泉に向かう時は、非日常空間ここに極まれりといった感じで、わたしいまこの瞬間こそ最高潮に新千歳空港を楽しんでいる・・・!!!!と思って超わくわくしました。温泉はふつうでした。

深夜。

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部屋から滑走路が見えるのですが、海外からの飛行機がまったくないので、さみしい感じでした。

しかしわたしは「クエスト:新千歳空港を楽しむ」をすべて達成し相当満足でした。

よしあとはもう帰るだけかな。

と思っていましたが、翌日わたしはアイヌ民族博物館「ウポポイ」に到着していました。

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空港から一歩も出ない、と決めていたのにめちゃくちゃはみだして白老町とかいうところまで来ました。

晴れて少し暑いくらいでしたが、湖のほとりに立つ気持ちの良い場所です。

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これまでも何回か北海道にきてアイヌの軌跡に触れることがありましたが、アイヌの人はきれいな水辺にいるというイメージがあります。

伝統建築の家のなかでは、アイヌ民族に伝わるムックリという口琴演奏をやってました。

これがなんかすごいよかったです。

モンゴルのホーミーみたいに、メインの旋律の裏側にあるもうひとつの旋律が空間いっぱいに広がって、見えない波が押し寄せてくる感じがして、そのバーチャルな情景に、ちょっと感動しました。

自然のなかにある振動、共鳴。それが生命を形作るすべての源なのだと、ムックリはそれを象徴していて、アイヌ民族の人は全部知っていたのではないかと思うくらいでした。

ステージで見るアイヌ民族に伝わる集団での踊りもすごくよかったです。主に狩りなどの儀式なんですけど、やはりここでも、歌、手拍子、足拍子が力強い自然の大地と、あとムックリと同じで集団の振動が生み出す見えない波がものすごく胸にせまってきて、めちゃくちゃ感動してちょっと泣いてしまいました。

自然との一体感、大地への礼賛、その中で生かされてる人間、命をもらう、そういったことを軸に生きてきたアイヌ民族の精神。

こんなにもはっきりとした原住民の意識が、日本にもまだしっかり残っているとは驚きです。

博物館の図書室に、アイヌ民族だけを撮影した写真集が置いてありました。

アイヌの人々はいまはもう現代人として生きてるし顔だって日本人と変わらないから誰がアイヌかなんてほぼわかりませんが、こうしてアイヌ民族だけを撮影した写真を見ていると、ふつうに洋服を着てふつうに暮らしていてもたしかに、彼らの目の奥の何かが現代日本人のそれとはあきらかに違う気がしました。

臨床検査技師の母が大学病院の研究実験の仕事の関係で遺伝子を精査したことがあったので、母とわたしには平均日本人にはかなり稀なロシア系のDNAがあることが判明しています。

おそらくそれは北極圏由来のもので、つまりアイヌ民族と同じ系列と考えられるそうです。

そういう自分のルーツを考えながら遠い親戚かもしれない彼らの目の奥の光を見ていたら、また泣きそうになりました、感傷的といってしまえばそれまでなのですが、これこそが血の共鳴かもしれないとも思いました。

しかし巻末の彼らの証言は、わたしのそんな涙をこっぱみじんに打ち砕くような、つらい差別の体験記でした。

わたしには本当にわかりません、アイヌ民族の意識の高潔さは彼らのその自然観から十分に伝わってくるし、それは尊敬に値すべきことと思うからです。

ネイティブインディアンもそうですが、古今東西人類の歴史は自然と共に調和する民族は皆殺しされ、残忍で強欲な民族に土地を奪われ追いやられると決まっています。とても愚かなことです。

それでもアイヌ民族は決してその命のバトンを絶やさず、ここにきて専属の国立博物館までできたことは、相当すごいことじゃないかと思います。

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青い空の下、湖をわたる爽やかな風に吹かれながら、アイヌ風のごはんを食べました。

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空港グルメもよかったけど、これがいちばんおいしかったです。前半の空港での物質主義的な快楽と、後半のアイヌ民族博物館での精神的な充足感のギャップは、自分に真の幸せとは何かを示しているかのようでした。

やはり人は自然との調和でしか、本当の意味で満たされることはないのかもしれないです。

というわけで、あとはさっと東京に帰ってきました。

今回は政府のキャンペーンとか無関係に行きましたが、あれからとっくに2週間以上経過して発熱も咳もなく・・・いやそんなことは何の保証にもなりませんが、とりあえずは無事に行って帰ってこれてよかったです。

みんなで旅することもものすごく楽しくて最高だけど、一人で旅をすることは、人生の最重要なことだと思うときがあります。

一人じゃないと起きないことが、あるような気がします。

誰かと一緒だとダメなんです、自分ひとりでいることが発動条件となる何かがあります。

そしてそれは、必ず自分にとってすごい大事なことであるように思います。

はやく安心してまた旅ができる世の中に戻ってほしい気持ちはあるけど、それ以上に、いま新しいウイルスが飛んでいるこのときこそ、人間は自然と調和する生き方を考えるべきだと思えてなりません。

そしてアイヌ民族をはじめとした古代人の自然観からは、いまこそ現代人が大いに学ぶべき宝物がたくさんあるのだと思います。

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