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『みんなのみずのき動物園』展を終えて②〜合体変身アーカイブの巻〜

『みんなのみずのき動物園』展の記録その2は、主に展示内容の全容について。

アーカイブ再利用の可能性

みずのき美術館の一番の特徴は、なんと言っても2万点以上(←最新情報)に及ぶ膨大な数の絵画作品を所蔵していることにあると思います。
おそらく中には落書きとして描かれたようなラフな作品も含んでいるのでしょうが、そうだとしても2万点は物凄い。

さらに、みずのき美術館は所蔵作品のデジタルアーカイブ化を積極的に行ってきました。所蔵作品のほとんどを平面作品が占めていることもあり、将来的な二次利用を想定すると相当の強みではないでしょうか。

作品や資料を「収集/保管/展示」することで「技術/文化/感性」等を未来へ継承して育てていくという美術館の役割の可能性が、デジタルアーカイブという方法によって一気に広がりそうな予感。

『みずのき動物園』でやってきた絵画作品のアニメーション映像化も、デジタルアーカイブの有効な活用方法の一つといえます。
といっても自分はそこまで自覚しながらやってきたわけではなくて、終わってみて初めて実感できたという有様ですが(てへ)

デジタルアーカイブは館内で自由に閲覧可能



ちなみに、みずのき美術館の所蔵作品は、みずのき美術館の母体である障害者支援施設みずのき内で開かれた絵画教室やアトリエで生み出された絵画作品に限定されている、という点もコレクションとして珍しくとても面白いポイントでしょう。

つまり一般的な(収集と保管が目的の)美術館が「どういった作品をコレクションに加えるべきか」という観点から出発すべきところを、そこをすっ飛ばして「既にあるコレクションをどう展観するか」という位置から出発しなくてはいけない、ということ。

これには当然メリットもデメリットもあるわけですが、みずのき美術館の場合は来館者参加型のオープンマイクのような「場を提供する」スタンスの展覧会(?)を頻繁に開くことで、所蔵作品の制約に縛られず軽やかに美術館の特色を出しているように見えます。

今後、この方向性と所蔵作品がどのように交わっていくのか楽しみです。


◆ここまでの参考記事◆



展示の構成「1階」

そんなみずのき美術館は、地上2階建てで1階のフロアど真ん中にある階段で地下に降りると小さい部屋がひとつ、という風変わりな作りの建物です。2階へ上がるときに靴を脱ぐのも美術館として珍しいのでは。

靴を脱いで2階へ(スリッパは履かなくても良いみたい)


作品誕生の空間

『みんなのみずのき動物園』では、一階に絵画作品の生まれた場所=アトリエの様子を再現しました。
それっぽい雰囲気をなんとなく再現するという安易な発想ではなくて、会期直前にこの場所で実際にアトリエ活動を行うことで作品が生み出される痕跡を残したり、そこで生まれたばかりの作品を展示することにより、限りなく本物のアトリエに近い空間を作り出すようにしました。

「作り出すようにしました。」と、さも自分が考えたかのように書いていますが、この辺のアイディアはプロデューサーの中本さんが発案してみずのきの皆さんと共同で肉付けしていったもので、私はそのやり取りをZOOMの画面越しに他人事のように聞きながら、「面白いことを考えるなー」とモニターの外に広がる自分がいる部屋の壁を眺めていました(笑)


絵画作品の二次利用

アトリエ空間のあちらこちらには位置を離してモニターが置いてあり、それぞれカテゴリーの異なる動物のアニメーションが流れています。
これまでの『みずのき動物園』シリーズは動物園そのもののパロディ空間でしたが、今回はアトリエ空間で絵が動き出すイメージなので、動物ドーン!ではなく机の下や棚の陰、水槽の中(もしくは裏)などに控えめに展示しました。


1階には他に塗り絵コーナーがあり、その正面の壁には会期中に来場者が塗ってくれた塗り絵がどんどん増えていきました。
塗り絵コーナーのすぐ脇には、それらの塗り絵を素材にして作ったアニメーション映像を、会期中に何度か内容を更新しながら展示しました。


展示の構成「地下室」

地下室では、シリーズ1作目『夜のみずのき動物園』の構成をもとに作り直したアニメーション映像をプロジェクターで壁に映写しました。
その傍らには大好きなみずのき作品、岡本由加さんの「かける馬」を展示。


クロチョロもいるよ

前回紹介したクロチョロは、1階と地下室のすべての映像作品にもれなく登場して画面をウロチョロ横切ります。
自分としては、入り口付近にある机の下のモニター内で地面の穴からコケコッコー!と勢いよく登場し、1階の各映像を巡ってから地下に潜って、モッフモフの動物に顔を埋めているうち眠りにつき、そしてまた机の下からコケコッコー!と飛び出すサイクルをイメージしていました。


実はあいさつ文にもクロチョロの気配が。

このパネルは記念にもらって帰りたかった



このように、1階と地下室は、
①絵画作品が生まれる場
②アーカイブに加わる前の生まれたての新作
③アーカイブされた作品を二次利用した映像や塗り絵
(※ついでに物販に並んだグッズも二次利用のひとつですね)
といったアーカイブの前後の動きを体験できる空間としました。


展示の構成「2階」

そこから靴を脱いで2階に上がると、アーカイブの主役である絵画作品が左右の壁いっぱいに展示してあります。


キャンバスや画用紙の上に、油彩/アクリル彩/水彩/パステル/色鉛筆/木炭といった様々な画材の組み合わせで動物を描いた絵画作品が全部で65点。作家さんは10名。
この豊富なバリエーションは、みずのき絵画教室の講師だった西垣籌一さんが作家一人ひとりに寄り添って、それぞれに相応しい表現方法を模索した証です。


展示した動物たち

展示作品は9割がた自分が選びました。
最初は30点くらい展示する予定で進んでいたのですが、準備期間中ずっと一人で壁打ちしているような状態で精神的に参っていたので、他人の手が入る不確定要素を足したくなり、自分以外の関係者が選んでくれるようにわざと予定数以上の作品を候補として提案しました。
そうしたら「すべて展示しましょう」ということに。

選定する際、今回の展覧会用のアニメーションに登場する絵に絞った方が良いと言われたけど、集大成だからとお断りして、みずのきの収蔵庫で初めて出会った思い出の作品や、これまでの制作中にヒントや元気をもらった作品など、広い意味で『みずのき動物園』になくてはならない絵画作品を選びました。

ただし、2015年に京都芸術センターでも絵画作品を展示したことがあったので、なるべくその時と被らないように気をつけました。…のつもりだったけどそこそこ被ってるな。

京都芸術センターでの原画展示風景(撮影:表恒匡)


なお、1階のアトリエ空間と2階の展示は、現在みずのきアトリエの講師をしている美術家の森太三さんが担当してくださいました。

今回アニメーションを作るモチベーションが最後まで保てた理由のひとつに、ZOOMミーティングで森さんがかけてくれた言葉がありました。どんな内容かは書かないけれど、森さんはきっと生徒の魅力を伸ばしてくれる素敵な先生やで☆


再びまとめ(られず)

というわけで、2階にはアーカイブの主役である絵画作品を展示したのですが、本展ではさらにこれら65点すべてに音楽家・半野田拓さんの既存曲から選んだテーマ曲を紐づけています。
既存の絵画に既存の音楽を合わせることで、新しいものを使わずに新しい体験を生む。アーカイブ✕アーカイブ=∞の可能性!

これが本展一番の趣旨です。ようやく辿り着いた…。
半野田さんの音楽との出会いは・・・

ってとこで疲れたので次回に続く!
もはや自分のための記録と化してるけど整理できて楽しい~。


来館者の塗り絵を使ったアニメーション映像の公開期間は残り4日!

みずのき美術館×浦崎力「みんなでみずのき動物園」

映像内で一番活躍しているピンクのトカゲは、空間デザインを担当した森太三さんによる塗り絵です。よく見ると体に「森」ってめっちゃたくさん書いてある(笑)

ぜひ観てねd( ∂∇≦ )☆

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