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2023年を振り返って

振り返っても特筆すべきことなんて何にも浮かばない。小説で、ひとつも結果を出せなかった。すぐにでも封印してしまいたいこの1年。春に応募した150枚も阿波しらさぎも、予選通過できなかった。昨年春に応募した150枚を50枚に再構成して女による~R18に出したけど、やっぱだめだった。よく考えればたった3日で書き変えただけの小説が予選通過できるはずがない。舐めたことをしてしまい、反省している。ほらやっぱり何にもないやと思ったとき、眼に入ったのは自分の本『赤いドレスをめぐる、あなたと私の狂想曲/鳥神奇譚』……校正、表紙のデザイン、データ作成などすべて自分ひとりで手掛け、セルフ出版した初めての本。ああそうだった、いいことがたったひとつだけあった。

やっと2桁に届くほどしか売れていない私の本。それでも自分にとってはとても大切な1冊になった。出窓に飾ってあり、時々手触りと目触り(笑)を楽しんでいる。その都度、幸福感が押し寄せる。たくさん売れなくても、他の人に読まれなくても、こんなに嬉しい。私が小説を書くのは、本を出版したいからじゃないとずっと思っていたけれど、形にしてみたら心が素直に反応している。

もちろん、新人賞に挑戦したい気持ちに変わりはない。いつか出版社から本を出してもらえたら嬉しいだろうなぁと思っている。でも100%完全に自分の力で作った本に対するこの嬉しさには叶わないかも知れないとも思う。今、新人賞に応募し続けて苦しい闘いを強いられている人達に勧めたい。もし、無限ループに入って自分を見失いそうになっているのなら、1度立ちどまって、これまでに1番よく書けたと思った作品を本にしてみればいい。それは愛おしくて、眼に入れば思わずニンマリしてしまう代物になるに決まっているから。

もう少し視野を広くして2023年を振り返る。日本を含めた世界情勢は緊迫している。毎日追いつめられた人々の惨状を目にしているのに、デモにも行かないスタンディングもしない、ただ他の人が書いた叫びをリポストするだけで自責の念がどんどん蓄積する。心が痛む出来事が多過ぎて、どうすればいいのかわからない。署名して寄付をして、たとえほんの少しの許しを得た感覚になったとしても、惨状は一向に変わらない。自分の無力を思い、冷酷だとさげすむ。しかし。世界は平和になるのだろうか。広島と長崎に原爆が落とされて、人が人を殺すようなことは絶対にしちゃいけないと誰もが言い続けてきた。それなのに、今、毎日多くの人間が無惨に殺されている。拉致された日本人は帰れない。飢餓も疫病も蔓延している。この状態を子どもたちに受け継いでいかなくてはならないのだ。世界平和を唱えるだけの時代は過ぎた。言葉だけ伝えても、どこか後ろめたくてそれは言い訳にしかならないだろう。じゃあどうすればいいのか、本当にわからない。


さて。
今書いている小説は50枚を超えてきた。春に応募するつもりだが、間に合わなかったら夏に、あるいは秋へ見送ろうと思う。じっくり書く。賞に引っかからなかったとしても、また、自分で出版したい!と思える作品を書こうと決めた。無力な私だけれど、小説に対しては貪欲に取り組みたい。今を生きている私が書いているものが時代遅れだなんてあり得ない、と自分で自分を奮い立たせながら。


万条由衣




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