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星々を周り 君と出会い 壺を作った

何もかも疲れてしまった
逃げ回って生きてきた
秋の風が夏の私を冷ましてくれた
あかね色に咲いた月を掴んで
熟成されたぶどう酒を積んで
渡り歩いた世界の玄関口で追い返された
閉じた世界の周辺をたった一人で歩いてきたのだ

山羊は売った 家族とは別れた

この歳で迷い込むのか
この歳で夢を見るのか
この歳でさらわれるのか
この歳でうらぶれるのか

故郷の星は海の中に沈んでいた
違和感のある音が重なり合って 僕を尻目に新しい世界は生まれる
強がっていた 途切れないように 
手放したもの 風に吹かれる
国境線にある村でやっぱり僕はうずくまってしまった

火星 木星 金木犀の花

夢のように咲いて近づく月と金星
月(時)の流れに目を背けても

屋根の上で踊りを見せる影に合わせて
水槽(水星)の底に沈んだメトロームがゆっくりとしたリズムを刻む
このままでは錆びついてしまう このままでは沼地に足を取られてしまう

毎日毎日 僕は
毎日毎日 語句は
毎日 砂浜をさまよう蟹のようだ
毎日 鼠色の空にふんわり浮かぶ鳶(頓馬)ようだ 
毎日毎日毎日 こじれた心が白い壁の幾何学模様に色をつける

空を焼き焦がし様々な惑星を追い出して日(太陽)が昇る そんな朝に

現世と彼岸に揺られ 深い眠りにつく君と出会った

プリズムで曲げられた僕の心は七色の光を放つ
近視眼的な哲学と乱視眼的な故郷の土と水で育てられたせいか
退屈と廃退の書物を貪っているうちに

精神の眼が顕微鏡になる
精神の眼が望遠鏡になる
耳が聞こえなくなっても
この身体が朽ち果てようとも

拡大して 拡大して 
倍率を上げたり 倍率を下げたり
君を拡大して 倍率を上げて
空を拡大して 大地(土星)を拡大して 倍率を上げて

光と音の波長 空を舞う電子や陽子や中性子や打ち寄せる波を拡大して
確実に空間に蠢く命たちの営みをみつめる

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鋭さと柔らかさが同居できることを知る
歪みは暖かさを生み出すことを知る
ある日 僕は庭先に佇む君の蕾に希望を見出す

あるべき生活の場に あるべき姿で 使われてこそ花開くことを知り
僕はこの村で白い壺を作り 君はそこに様々な緑の命と赤い花を生けて

僕らの世界を作る毎日

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