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自分が「被写体」になって初めて、少数民族の気持ちがわかった話

先日、マレーシア在住のナオコさんがワクチン接種会場で「差別される側」を経験したお話をシェアして下さったんです。

これを読んで、私も自分の体験を少し書かせて頂きました。

マレーシアで働く外国人出稼ぎ労働者については、私もたびたびnoteで書いているので、良かったら読んでみて下さい。これもマレーシアの一面です。

被差別側を経験すると「視点」が変わる

連続ツイートの中で、ナオコさんは「見聞きするのと自分が差別される経験は全く違った」と仰っていて、これ私も全く同じ経験したなぁ…と20年前の旅を思い出しました。

被差別側を体験する事で、視点が大きく変わるんですよね。

私は世界各地を旅する中で、特に南米や欧州で自分が差別されて以来、対等な関係性の在り方を考え続けているのですが、きっと誰しもが差別=自分より下の存在を確認して安心したい、みたいな気持ちは有ると思うんですよね。

問題は、それをどうコントロールするか。それには被差別側を経験するのが1番良いのでは、と実体験から感じています。

自分が最下位に置かれる体験

私の被差別体験は主に旅行中で、一時的なもの。出稼ぎ労働者が日常的に受ける差別とは比べ物にならないくらい軽いものです。それでも、やはり「自分が蔑まれ、下に置かれる」という体験は強烈なものでした。

今から20年前、結婚したばかりの夫と一緒に中南米を3ヶ月旅した時のこと。

チリのキャンプ場で「チーノ!チーノ!」(中国人の意味。アジア人を蔑む総称として呼ばれていました)と笑いながら指差され、テントの場所やキャンプ用品等でこちらの不都合を要求されたり。

世界中の旅人たちと巡ったボリビア・チチカカ湖の現地ツアーでは、国籍や立場による階層が自然とでき上がり、当時、長女(19歳)がお腹にいて妊娠5ヶ月だった私と夫は「施される側」として最下位に置かれたり(老母連れのパラグアイ人男性が「自分は最下位ではない、お前たちが下だ」という態度で接してきた)

ショックだったし、「自分は誰に対しても平等で、絶対に差別なんてしない!」という憤りもありました。でも、ペルー・ボリビア・チリを旅した後に訪れたメキシコで、その考えは大きく覆されることになりました。

自分が被写体になって、気づいたこと。

確か、ティオティワカン遺跡だったと思う。

妊娠5〜6ヶ月目で手持ちの服が苦しくなり、襟元にレース編みが施されたオレンジ色の民族衣装のワンピースを着用し、遺跡へ。

そこで年配の欧米人男性に話しかけられ、そのワンピースをなぜかとても褒められたんです。そして国や旅の目的などを根掘り葉掘り聞かれたのを覚えています。

その後、「写真撮っていい?」と言ってきたんですね。

てっきり「旅の記念に一緒に写真を撮ろう」という意味かと思っていたら、違いました。なぜか、

私だけを撮りたい

と。理由がわからないまま流されて撮影を許可したものの、後から湧き出る猛烈な違和感が拭えず。彼はなぜ私だけを撮りたかったのか…?その意図を必死に考えました。その結論は、

メキシコの民族衣装を着た、日本人の妊婦が珍しかった

んだと思います。つまり、「旅先で出会った少数民族」的な位置づけだったんじゃないか、と。「ミセモノ的に見られていた」と感じました。

少数民族がお金を要求するワケ

でもこれ、私も同じことをしてたと気づいたんです。タイやミャンマーの山岳地帯で、インド・ネパールの国境地帯で…。

もちろん「写真撮らせてくれますか?」と許可は得ました。

でも、ペルーでカラフルな民族衣装に身を包んだケチュア族が、リャマやアルパカと並んで満面の笑み写った後、ふッと無表情になって「お金!」と手を差し出してきた時、その豹変に「え!お金取るの?!」と驚き、心が通じていたと思ったのは飛んだ思い勘違いだった、と落胆…。

でも、お金を要求するのも当然なんですよね。彼らは毎日被写体になることを求められているのだから。きっと、うんざりしていた事でしょう…。

無意識の差別

こんな風に、メキシコのティオティワカン遺跡で自分が “ミセモノ“として撮影されたことで、少数民族ケチュア族の気持ちが初めてわかった私。

もちろん、件の欧米人男性がどんな意図で私を撮ったのかは不明です。でも「配慮しているつもりでも、相手には失礼なことがある」と気付き、衝撃と同時に大きな学びでもありました。

(この中南米3ヶ月の旅は、途中で大地震に遭ったり、妊婦なのに離婚しかけたり、とにかくいろんな事がありました💦また折に触れ書きたいと思います)

「対等な在り方」について考え、実行しているつもりだけれど、きっと気づいていないことは未だ未だあると思う。

「無意識の差別」を常に心に留めておきたいと、南米での体験を思い出し、改めてナオコさんの投稿で気づかせていただいたのでした。


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