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【吉藤オリィ】孤独をなくす、たったひとつの冴えたやりかた【後編】

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ALS患者など、寝たきりの人たちを孤独から救っているオリィさんだが、
自己紹介は今でも苦手なのだと言う。
『僕も苦手です』
自己紹介で覚えられなかった側の人が責められることは間違っている。
なぜならば、覚えてもらえるような自己紹介をしなかった側が悪いのだ。
『そうだ、その通りだ!』
だからこそ覚えてもらうために≒海馬にやさしい人間になるために、
自ら黒い白衣と呼ぶ、変わった格好を始めるようになったという。
『僕も欲しいです!』
ところで、我々は海馬にやさしい人間になれたでしょうか。
なれなかった気がするなぁ…

■ありがとうは有限だ!次第にそれは…

ありがとうは有限なんですよね
オリィさんが言うこの言葉には、目には見えない含蓄というか、重みがあった。

読んでいる皆さんにとっても、他人事ではないはず。
何かしてもらったら「ありがとう」と言う。
でも、自分が何もできないと、
次第に「ありがとう」は「すみません」→「いつもすみません」に変わっていく。

申し訳ない気持ちがどんどん自分を否定していって、しまいには自分を嫌いになっていく。
こうして、助けられ続けることで、自分を否定して居場所や役割を見失ってしまうのだ。

孤独の根源たるこの感情を解消するべく、オリィさんは立ち上がった。

■解決のポイントは『移動・対話・役割』だった

人が、役割や居場所を見失ってしまうと孤独を感じてしまう。
ならば、そのためにどんなサポートが必要なのか。

その答えが、オリィ研究所の開発指針にある

移動・対話・役割

精神的、身体的なものに限らず、
移動の制約を解き放ち、対話の障害を取り除き、結果として誰もが役割を持てるようになる。
それこそが、「OriHime」の役割であり、オリィさんが考えるサポートの形なのだ。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気をご存知だろうか。
運動ニューロンだけが侵されていき、徐々に身体が動かせなくなり、最終的には自発的な呼吸すらできなくなってしまう病気だ。
「OriHime」やオリィさんの開発した視線入力装置「OriHime eye」はALS患者の救いにもなっているという。

実はALS患者は、自発的呼吸が出来なくなった時点で呼吸器をつける延命措置をとる人の方が少ないというのだ。
じゃあ、どんな人々が呼吸器をつけるのかと言えば、有限の「ありがとう」を使い切っていない人。自分の役割をまだ持てている人なのだ。

そんな人たちの「ありがとう」が使い果たされる前に、「OriHime」や発明品を持って颯爽と登場する黒白衣のヒーロー。
それが吉藤オリィさんなのかも知れない。

■ダイバーシティは弱者救済のシステムじゃない

幼少から、壮絶なる物語を歩んできたオリィさん。
今では日本を代表すると言っても過言ではない発明家なのではないだろうか。

だからこそ、世間一般の評価に悩まされてきた過去もあるんじゃないだろうか。
と、下世話な筆者は思ったりするのである。

案の定、ずっと手のひらをクルクル返されてきたと語るオリィさんだが、

「常に返されてきた。気にするに値しないよ」

と、黒い白衣をなびかせていた。

世間という人格は存在しない。大事な人から必要とされることこそが、孤独を解消する

かつて、「人と出会い、憧れた」ことで選択肢を得て、役割を見つけたオリィさんだからこそ、「OriHime」や、様々な発明品によって孤独が解消された未来を創造できるのかも知れない。

人は生まれながらにして不平等だけど、移動・対話・役割を「OriHime」によってサポートし、機会を平等化することが出来たら、適材適所社会を生み出すことが出来る。

そうした社会こそが、人間の生存戦略として正しいダイバーシティを実現したものなのかも知れない。

漫画=こうや豆腐@toufu_0141
取材・文=齋藤春馬(@st_hal_
編集=中嶋駿
編集部Twitter:@if_comic
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