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意外にコツが必要な、海外ブランドのローカライズ!ドイツ発のアートブックストア「TASCHEN store」

アートブックストア「TASCHEN store」


アートブックで有名なドイツの出版社TASCHEN(タッシェン)。「革新的で美しいデザインの美術書を大衆的な価格で提供すること」を使命に掲げ、様々な作品集やアート関連の書籍を20以上の言語で刊行しています。そのアジア初となる常設店「TASCHEN store(タッシェンストア)」を「BALS TOKYO GINZA」内にオープンすることとなり、設計を手がけることとなりました。

ローカライズの難しさについて

既に海外で展開をしているブランドを日本で新たに展開していく際に、楽しみでも苦戦するところでもあるのが、それがローカライズです。

海外で人気のブランドを日本に取り入れるわけなので、既にそのブランドには一定のファンがついている状態。

海外と全く同じデザインを、そのまま日本に持ってくるのも良いのですが、全く同じものを入れるでは面白みに欠けますし(そもそもデザイナーが違うので同じというわけにもいきませんしね)、折角なので、そのファンの期待やブランドの期待も越えたいものです。

元々のブランドのデザインを踏襲しつつ、日本ならではのデザインを落とし込む、インテリアデザイナーの腕の見せ所です。

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参照:https://www.taschen.com/pages/en/stores/19915.store_london.htm

TASCHENのヨーロッパにある店舗のデザインはフィリップ・スタルク氏が手がけています。日本店のデザインはロンドン店と同様に、ゴールドのオブジェクティブなテーブルや、本の表紙を見せてディスプレイした本棚を中心とした店舗構成を踏襲しつつ、日本に合わせたデザインへのローカライズを試みました。

ローカライズの大事な抑えどころは「言語化」と「見立て」

クライアントは「TASCHEN store」の出店の誘致をしたものの、ブランドのイメージを踏襲しつつ日本店のデザインイメージをどのような見せ方にしたいか、インテリアデザイナーではないので、当然ながら言語化できていません。そこで、まずは一度ブリュッセル店とパリ店の視察に行くことにしました。

アジア初となる店舗デザインを、TASCHENの主要となるヨーロッパ店舗のスタルク氏のデザインをそのまま表現するのではなく、日本店としての表現の仕方を模索していくべく、実際に現地でスタルク氏のデザインのポイントを「言語化」し、「見立て」によるローカライズの提案を行って行く為です。

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参照:https://www.starck.com/taschen-london-p2162

スタルク氏のデザインの特徴の一つに「ゴールド」と「ブラック」が挙げられます。今回は、檜を木肌や無垢材のまま限りなく薄く加工し、それを和紙と貼り合わせた材料などをゴールドに見立て、表現をしました。

銀座店の中央に配置した大きなゴールドのガラスのテーブルは、中に檜のウッドチップを使用しました。黒い本棚は木に黒染色をし、照明は檜を薄くスライスしたものに和紙を貼り、裏から光を当て行灯に見立てています。

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どうでしょう?このような工夫をして、和とも洋ともカテゴライズされない新しいデザインでTASHENらしさを表現出来たかと思います。

その他のポイント

今回はショップインショップなので、空間の作り方や商品の見せ方、BALSのインテリアとの調和についても考えながらデザインをしました。

インテリアショップ内にあるアートブックの常設店。クライアントはTASCHENの本をインテリアピースとしての提案を想定していると考え、すべての本を面出しで陳列できるようデザインしました。
またヨーロッパの店舗同様に、本棚と本棚の間には空間を作り、本棚にはびっしりと本を置き、空間の粗密を図ったことでデザインの緩急を作ることにも成功しました。

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売り場の奥のスペースは天井が少し下がっており、前テナントではバックヤードとして使われていました。そのスペースに行灯のような檜の特徴的な照明を作り、BALSにて実際に販売しているソファを配置し、お客様が腰をかけて読書を楽しめるスペースを生み出すことにも成功しました。

TASCHENの店舗内にBALSの家具を配置することにより、違う編集の仕方で売り場を見せることも出来、定期的にその家具を入れ替えることによりTASCHEN店舗自体の変化も楽しめる仕組みを生み出しています。

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国産の木を使う。インテリアデザイン会社としてのSDGsへの取組み

ちなみに、檜や杉の香りがとても良い匂いで、森林浴さながらの気分を銀座で味わえて、お店のアイコンになっていた、檜がこんもり入ったウッドチップの通称「クワガタ什器」。

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その他にも、今回のプロジェクトで使われた木材のほとんどが、FSC(森林管理協議会)の認証を受けた、国産の杉材や檜材をメインに使用しています。( 実はこのプロジェクト、FSCプロジェクト認証としては初めての「店舗物件」だったりします。FSCのホームページにも残っていました!)
https://info.fsc.org/details.php?id=a0I40000003sK4VEAU&type=project_certificate


この頃はまだ、SDGsという言葉自体が存在してなかったんですが、スクラップアンドビルドが基本の建築業界にいて、少なからずその状況に疑問を持ち、インテリアデザイナーとして何かできないか、自分たちにとっても気持ちの良い空間て何か、って考えたときにたまたま縁があり、国産木材に辿いたのですが、このプロジェクト以外にもインテリアデザイン会社の出来るSDGsへの取組みとして、国産の木を使ったプロジェクトを行ってきました。

ご興味ある方は以下より。

FSC認証とは:
FSCは、このような森林の問題を解決するために、1994年に設立されました。1980年代、欧米では熱帯産の木材が環境破壊や人権侵害に繋がっているということで、熱帯材の不買運動が起こっていました。しかし、不買運動では、適切に森林管理を行っている生産者の木材も区別なく不買につながり、木材が売れなくなった林業者が森林を伐採し、農地に転換してしまうなど、結果的に森林破壊を止めることはできませんでした。 そこで、適切に管理された森林からの木材を区別して購入できる認証制度の必要性が検討され、26カ国の環境NGO・林業者・林産物取引企業・先住民団体などが中心となって設立されたのがFSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)です。

FSC認証は、森林の管理を認証するFM(Forest Management)認証と、加工・流通過程の管理を認証するCoC(Chain of Custody)認証の連鎖から成り立っています。FSC認証製品が消費者の手に届くまでには、森林から最終製品になるまでの生産、加工、流通に関わるすべての組織が認証を受けなくてはなりません。また、FSC認証の審査・発行は、FSCではなくASIという認定機関から認定を受けた独立した第三者の認証機関が行います。 消費者は、FSCマークを目印に製品を選ぶことで、森林の生物多様性を守り、地域社会や先住民族、労働者の権利を守りながら適切に生産された製品を選んで購入することができます。

◎ 私たち「Manekineko & Partners」については

各種お問い合わせは hello@indigodesign.jp まで。


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