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どうする?変わった間取り物件のオフィス化計画「booklista」の事例

booklistaは、ソニー、凸版印刷、KDDI、朝日新聞社が共同で設立した電子書籍事業会社で、主に電子書籍コンテンツの取次、配信プラットフォームの提供、プロモーション企画、オリジナル作品の制作などを行っている「電子書籍を通じて、エンドユーザーに感動を届けたい」サービスです。manekineko & partnersでは、そんなbooklistaのオフィス設計を担当しました。


とにかく難所の多かった「変わった間取り物件」 

今回の案件、タイトルにもある通り「変わった間取りの物件」だったのですが、私たちがこれまで取り扱ってきた「変わった間取りの物件」の中でも、色々と難所となるポイントが多い物件で、そこにクライアントからの幾つかのオーダーが絡まり、頭の使い所が盛りだくさんな案件でした。

大まかに難所を挙げていくと以下の通り。

難所その①。バナナ型の間取りでRが多く、使いづらい空間が多い。さらに窓のサッシュが菱形で縦のサッシュがなく「受け」を作れずに、窓に連繫した壁を作れない。

難所その②。「20名用の会議室を入れたい」「イベントをやりたい」という施主オーダー。

難所その③。3m以上ある「高すぎる天井」。

※ 単純に天井まで立てる壁も大きく、高すぎる壁が間の抜けた感じになりがち。

これらの難所をどう解決していったのか、一つ一つ解説していきたいと思います。

竣工時平面図-(1-1-2)

難所その① 変わった間取りと菱形の窓サッシュ

今回の物件ですが、先にもあった通りバナナ型の間取りでRが多く、使いづらい空間が多く出てしまうのがポイント。

さらに、一般的に「変わった間取り」の物件に手を入れる際は、Rになっている部分と壁を連携させて、しっかりと四角の部屋を作って間取りを構成していくのですが、今回はそれが出来ないんです!

窓のサッシュが菱形で、(縦のサッシュがなく)壁とつながる「受け」を作れずに、窓に連繫した壁を作れなかったのです。

なかなか難易度の高い状況で、腕の見せ所ですね。

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今回は、窓と切り離して壁を建て部屋を作りながら、部屋と窓との間に木材の敷き詰められた内庭を設けることにしました。

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竣工時平面図-(1-1-1)

中庭のための木材には、端材やおがくずなど建築素材として使われない木材を使用(Manekineko & Partnersの SDGsへの取り組みはこちらから)、木の香りが漂う心地の良いオフィス空間に繋がりました。

また、入れ替わり立ち代わり人が出入りするようになるとの与件から、フリーアドレスで使えるようなオフィスへ。プロジェクトによってチームもその都度変わっていくので、レイアウトもすぐ変えやすいようキャスターもつけた、いろんな組み合わせができる可変性のあるデスクを開発。

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難しいと思われた「変わった間取り」や制約を、逆転の発想でそのオフィスの特徴となるようなアイデアで切り抜けることができました。


難所その② 限られた空間で「20名用の会議室」と「イベントスペース」を設ける

次のポイントは、クライアントからオーダーのあった、限られた空間の中で作る「20名用の会議室」と「イベントスペース」。

そこまで大きな物件ではないので、贅沢にイベントスペースと20名様の会議室、それに加え少人数用の会議室を作りながら、心地の良いオフィス空間を作る。なかなかの難題です。

今回私たちは、結婚式場にあるような可動式の壁(パーテーション)を用い、普段は20名用の会議室、会議室を使わない時はその場所をイベントスペースの一部として、運用する事が出来るような仕様にしました。

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さらに、画像のように可動式の壁に本棚を組み込む事で、本に囲まれた空間を演出する事にも繋がっています。

難所その③ 3M以上ある高すぎる天井(と改装工事)


天井は高いに越したことはないのですが、今回はそれが3メートル以上。あまりに天井高が高すぎると、のぺっとした印象になりかねないので注意が必要です。

が、こちらも捉え方次第。写真のように、天井近くまであるあえて背の高い本棚を設け、本に囲まれた空間として印象付け。

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この小さな会議室の扉は、ガラスの外から見ても本棚、本棚をくぐって入って、中から見ても本棚です。

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また、天井自体にも工夫を施しています。今回は、元々の天井を触らず天井の下にグリットを組んで仮想の天井を作り、そこに照明器具やスピーカーを吊りさげる事にしました。こうする(元あった天井はそのままに)事で、それがレイヤーになってその上の天井に意識が向きづらくなり、意匠的にも見栄えが良くなるのはもちろんの事、原状回復の際にも天井の修復コストが発生せずコストを抑えることにつながりました。

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オフィスの人数が増えすぎて改装...も、ズラすだけで楽々クリア?


オフィス案件を取り扱っていると稀に起きる事なのですが、予定したよりも事業のスケールが早く、オフィス内にデスクのスペースが足りなくなる事があります。

今回の物件でも、引き渡し後半年で(!)そのような状況となってしまい、なんとか解決をしなければならなくなったのですが、今回は何をしたかというと、「会議室ごと丸っとずらした」のです。そんな事って可能なのでしょうか?

竣工時平面図-(1-1-3)

ポイントは、絡みがなかった(固定をしなかった)所にあります。

天井は、先にお話しした通りから切り離している。
窓も同様に切り離している。(菱形のサッシュの問題で切り離さざるを得なかったのですが...笑)

そして、床も同様だったのです。

オフィスエリアの床は既存のカーペットをそのまま使用、それ以外のエリアでは、その既存のカーペットをクッション材としてそのまま使い、その上に杉材のすのこを敷いておいている状況で、あえて固定をしていなかったんですね。

言ってしまえば、家具を置いてあるだけの構造。改装工事をする際に、置いてあった家具を移動するだけで済んだので、そこまで予算をかけずに改修工事を進める事が出来ました。

今回の物件でもそうですが、数年後どうなるか考えて設計をしているので、可変性をしっかりと落とし込む事が出来、改装の際には安価でしっかりと対応できた好例かと思います。


みなとモデル二酸化炭素固定認証制度プレ認証

なかなか聞きなれない認証制度かと思いますが、今回の物件では港区の定める「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」のプレ認証を受けた物件となりました。

※制度施行直前でのプロジェクトだった為「プレ認証」に。

端材やおがくずなど建築素材として使われない木材を使用した内庭や、床材の杉のすのこが、間伐材を始めとした国産材の活用促進に繋がり、二酸化炭素を固定出来ていると認証いただいたのです。

武井雅昭・港区長から、床材のスノコの原産地西粟倉の村長道上正寿 氏と、弊社北村竜一も同席する中、今野敏博・ブックリスタ社社長へ認証書授与式も行われました。
http://news.uni4m.or.jp/?p=11

※みなとモデル二酸化炭素固定認証制度 - 港区と「間伐材を始めとした国産材の活用促進に関する協定」を締結した自治体(協定自治体)から産出された木材を使い、二酸化炭素を固定し、協定自治体は二酸化炭素を吸収する森林を整備することで、都市と地方が連携して地球温暖化防止をめざす、日本で唯一の取組です。
https://www.city.minato.tokyo.jp/chikyuondanka/minatomodel.html


◎その他、Manekineko & Partnersの SDGsへの取り組みはこちらから

◎ 私たち「Manekineko & Partners」については

各種お問い合わせは hello@indigodesign.jp まで。


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