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インテリアデザイナーとしてのSDGsへの取り組み、日本の森から作られた家具『KIKIKI』

国土保全の救世主、「間伐材」や「捨てられてしまう端材」を使った家具プロジェクト「KIKIKI」


国産の杉、ヒノキで作ることを前提にデザインされた家具のプロジェクト『KIKIKI』。

10年前にプロジェクトがスタートしてから、通常使われることのない「間伐材」と呼ばれる細い木や、捨てられてしまう「端材」も材料として使用できるデザインとして、組み立て家具の販売やワークショップを展開してきました。

今回は、そんな『KIKIKI』プロジェクトで、私たちがインテリアデザイナーとしてSDGs(当時はそんな言葉もなかったのですが..笑)にどう取り組んできたのか、いつもと趣向を変えてお話をしていこうと思います。

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なぜ「間伐材」を使う事が、良いことなのでしょう?

そもそも「間伐」とは何かを知るところから、はじめましょう。木を間引くことを「間伐」と呼び、これは木の成長に伴い隣り合う木々の枝や葉がお互いの成長を阻害しないようにするために行います。そうすることで残された木々が光をたくさん浴びることが可能になり、健康に成長できるというわけですね。

では「間伐」を行わないと、どういうことが起こるのでしょう?間伐が行われない山林では過密状態の木々が十分に根を張れず、大雨や台風で木が倒れて土砂の流出につながります。適切な間伐を行うことで木々が深く根を張り、細かい根が土壌に広がる。そうして土砂崩れなどの災害に強い山林を育てることができるんです。

現在、日本の森林は国土の6割。そのうち人の手によって植林された人工林は約4割をしめています。広範囲にわたる人工林を適切にメンテナンスすることは、災害に強い国土を作ることにつながっていきます。

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間伐活性化の切り札「間伐材」&「国産木材」の利用促進

人工林を守るために欠かすことができない間伐ですが、コスト面に大きな課題があるんです。日本の山林は地形が急峻で効率的な伐採作業ができないこともあり、手間とお金がかかります。伐採された「間伐材」は細くて使い道が少ないため、利益を産むのは難しい。
そもそも儲けのでない間伐を広大な人工林全体に実施するということは、国や県からの補助金があったとしても赤字になってしまうような状況です。
そうした厳しい状況を改善していくには、この「間伐材」を有効活用することが鍵となります。

メンテナンスのために伐採された「間伐材」が利益を産み、なおかつ都市部で暮らす我々の生活も豊かにする。というのが、私たちの考える理想的なサイクルです。

現在は国土保全のために補助金や助成金などの税金が投入されていますが、これだけでは一時的な対応になってしまうと思います。
次の世代にまで引き継がれる継続的な対応が必要とされていて、それは都市や地方を限定せず、日本の国土に住む私たちの共通の課題だと捉えています。

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ユナイテッドアローズからの依頼、親子ワークショップから始まったKIKIKIチェア

そんな、間伐活性化の切り札「間伐材」を使ったプロダクト開発と同時進行していた、いくつかの空間デザインのプロジェクトのなかに、ユナイテッドアローズから、仮設の展示会空間のブース/会場構成のデザイン依頼がありました。

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通常、展示会などの仮設空間の造作物は、その期間が終われば解体、廃棄されます。リサイクルシステムは日々進化していますが、実際に目に見え、手に取れる形で再利用の実現が出来ないか、今まで何度か感じていたことでした。

そこで、仮設空間で使用した木材を再利用したその素材で、「KIKIKIチェア」を作ることを考えました。実は、ほぼ同時期に港区内で親子向けのワークショップの企画で、試作段階にあった「KIKIKIチェア」が採用されることになったのです。

このプロジェクトを実現するには、あらかじめ椅子の材料が取れるように仮設空間もデザインしなければ成立しません。早速ユナイテッドアローズにコンセプトと会場のデザインを双方に提案したところ快諾していただき、空間を構成するその素材も無償で提供していただくことができました!

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「KIKIKIチェア」を作るワークショップに参加した子供たちにはまず、日本の森林の現状、そしてこれから作る椅子の材料がどのような過程を経てここまでやってきたのかということが冒頭のスライドショーで、紹介されました。

細かい板状のパーツを組み合わせて作る「KIKIKIチェア」は、用途の少ない細い木の間伐材や、本来捨ててしまうような端材も素材として利用できるのが特徴。
最初は戸惑いながら組み立て始めていましたが、途中からは見ているこちらが楽しくなってくるくらい、皆喜んで作っていました。

最後にUNITED ARROWS LTD. のロゴマークが焼印され、子供達が自分の手で組み立てたその椅子は、それぞれが世界に一つだけのものとなりました。
産地の特定できる木材が、仮設空間を経て、自分の椅子になる。
流通経路の視覚化とリサイクルの実現が叶いました。

国産木材の持つ可能性を、デザインを通じて伝えていく

「KIKIKIプロジェクト」のスタートのきっかけは、自社オフィス移転の際に内装に国産材を使用したことでした。天然の木は見た目の印象もやわらかく、特有の香りもあって完成したオフィスはとても気持ちが良い空間になりました。

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オフィスが完成した3ヶ月後に起こったのが、東日本大震災。災害と自然、日本の国土のこと、エネルギーや年と地方の関係など、今まで真剣に考えたこともないようなことと初めて向き合うことになったんです。

私たちはインテリアデザイナーとして、空間づくりに於いて何か活動できることはないか、手探りの状態からこのプロジェクトがスタート。

それ以降も機会があればクライアントに対して積極的に国産木材の利用を提案をして、賛同してくださった複数のクライアントの皆様に国産木材を利用する機会をいただくことができました。


◎ 私たち「Manekineko & Partners」については


その他のインテリアデザイン:

各種お問い合わせは hello@indigodesign.jp まで。


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