『未来を花束にして』といつか生まれる君

<いつか生まれる君に、私はなにを残しただろう>

「花は咲く」という東日本大震災の復興ソングの一節です。
10年前にNHKでじゃんじゃん流れていた時は、特に心に引っかからなかったのに、半年ほど前にふとこのフレーズが頭をよぎりました。

親しい友人にもほとんど話した事はありませんが、自分はジェンダー平等というテーマについて、かなり関心があります。

そのきっかけともいえるエピソード。
それは中学校3年生の教室で、どういう流れだったかは忘れたけれど、公民の先生が言ったのです。
「今は意識しないだろうけど、就職するときになったら男女差別なんてたくさんあるからね」

その発言は、そこで終わりでした。
「だからそんな社会を変えていこう!」とか「でも今はこんな法改正が進んでいて……」とか、そういう続きはありませんでした。
そのことに無性に腹が立った。

差別があるのが分かってるなら、今の子どもが大人になるまでに、あんたたちが社会を変えておいてくれよ。
なんでそんなやる気を削ぐような事実だけを置いていくんだ。

そう強く思ったのを覚えています。

時は流れ、自分も大人の側になりました。
就職もしました。
直属の上司には、まだ小さい息子さんと娘さんがいます。

「うちの子可愛いでしょ」
「女の子だから二重で生まれてきてくれてよかった」
「娘は息子と違って、旦那さんに養ってもらえばいいから、好きなことやらせたいんだよね」

テレワーク中、2歳半の娘を見せびらかす男性上司に、恐ろしい事実を伝えたくなる瞬間がある。

あなたの娘さんに、初めて性的な接触をする人は、99.9%娘さんが望んだ相手ではないでしょう。
そしておそらく、娘さんはその事実をあなたには話さないでしょう。
あなたはそれを知る事はないのです。
あなたの娘さんが一生忘れる事ができないであろう出来事を。

心の中で囁いて、声には出しません。
事実を突きつけたところで、何も変わらないから。

『未来を花束にして』という映画は、まるでギャガ配給のラブストーリーのような邦題をつけられていますが、原題は『Suffragette』といいます。

公開当時、Twitterで「『お前も花束にしてやろうか』のほうが合ってる」というツイートを見かけました。
というのも、この映画はイギリスの女性参政権運動を題材にしていて、Suffragetteというのは当時の過激派テロ組織を指す名称なのです。

黒人公民権運動のブラックパンサー党のように、フェミニズムにも手段を厭わない怒れる一派がいたのか!と映画を観て驚きました。

評判のよくない邦題の、ひとつだけ良い点をあげるとすれば「未来」というキーワードです。

主人公は、映画の冒頭では劣悪な労働環境に文句も言わずに働いています。
ところが、子供ができた時にふと思うのです。
「この子が娘だったら? この子も私のような人生を送らなければいけないの?」

それは25歳になった自分が、上司の、親戚の、電車の中の、SNS上の、まだ小さな子どもたちを見るたびに浮かぶ思いと同じでした。

いつか生まれる君に、私はなにを残しただろう。

世の中で「SDGs」と一括りにされるジェンダー平等も、環境問題も、突き詰めればそういう事なんだろうと思います。

本当はこういうテーマを積極的に周りの人と話しあうことで、お互いの意識を高めることができるのかもしれない。

だけど、まだ自分の中でも知識不足だったり、意見がまとまっていなかったりして、あまりそういう議論はできていません。

ただ、少しずつでも現状を変える努力はしていきたいし、次の選挙も必ず投票に行きます。
それが20世紀の彼女たちから、確かに受け継いだ花束だから。


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