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もっと、自分の街をスキになる

思うように外出できなかった一年間。

いつもなら張り切って旅行に飛び出すけど、海外はおろか市外へすらなかなか出掛けられない日々が続きました。

裏を返せば、そんな単調で閉じた日常を、いかに楽しく過ごすかを探した一年でもありました。

外にばかり向けていた目を、足元に落として。
じっくり丁寧に、自分の住む街を観察してみたら、そこにはちゃんと好きなものがありました。


土曜日だけのチョコレート屋さん

プロフィールにも書いている通り、わたしはチョコレートが大好きです。市販のチョコレートも好きだけど、バレンタインデーに買うような、一粒一粒が宝石みたいな特別なチョコレートはもっと好き。(バレンタインはもちろん自分の分も買う派)

でも、地方住まいのわたしには、そうそう有名パティシエたちのチョコレートを買う機会はやってこない……そう諦めていたのですが、なんとこの街にもあったんです!車で20分、わたし好みのチョコレート専門店が。

会社の先輩に教えてもらった週末、早速出掛けてみると、中心地からは少し外れた長閑な地区に、そのお店はありました。
知らなければ絶対に車で通り過ぎてしまうその場所。マンションの一階部分を使った小さいお店ですが、甘いもの、可愛いもの好きの女性たちが、週に一度のオープンを楽しみに通っているようです。
入店は何人まで、としっかり対策を施していることもあり、店内は落ち着いて買い物ができる雰囲気。そして、目の前にディスプレイされた、可愛らしいチョコレートたち!たぶんそのとき、わたしの目はキラキラ輝いていたはずです。

頻繁に通えるほど気軽なお店ではないけど、じぶんのお財布と相談しながら、1,2ヶ月に一回、わくわくしながら出向く場所ができました。


黒ラブの待つ、コーヒー豆専門店

わが家ではコーヒー豆をガリガリ挽いて、トーストと一緒に頂くのが毎朝の習慣。
そのコーヒー豆を買いに行くお店も、この一年で常連になったお気に入りの場所です。

実は、移転前のこちらのお店には、10年くらい前に父親と何度か訪れたことがありました。ただ、何度か引っ越しをしているうちに随分とご無沙汰になっていて、お店が移転したことさえ知らずにいました。

再びこのお店を訪れるきっかけになったのは、会社で飲んでいるコーヒー。いつもこのお店で豆を買っていたことを知って、お使いに行く役目を引き受けたからでした。

車を降りてすぐ、お店に入る前から焙煎されたコーヒー豆の香ばしい香りが漂ってきます。それを胸いっぱいに吸い込みながら木製のドアをくぐると、焙煎機やグラインダーが休む間もなくガタガタシューシュー働いていて、まるで賑やかな工場のよう。そして極めつけは、尻尾を振りながら近づいてくる黒のラブラドールレトリバー!
ただでさえコーヒー好きなわたしにとって、夢のような空間なのに、加えて黒ラブのお迎えまでついてくるなんて、なんというご褒美……。

しかも驚いたことに、店主の男性は移転前にわたしがコーヒー豆を買いに来ていたことを、ちゃんと覚えていてくれました。

コーヒー豆を買う短い時間が、その日から特別な時間になりました。


散歩道のお花屋さん

歩いて10分ほどの、道路沿いにある小さなお花屋さん。店主の男性のセンスがピカイチで、いつもプレゼントの花束はそこで頼んでいたのですが、日常的に通う場所ではありませんでした。

そもそも、花屋になんでもないお花を買いに行くのって、実はちょっとハードルが高いと感じていたわたし。

誰かのブーケを作ってもらったとき
「お花1本からでも買いに来ていいんですか?」「もちろんですよ」
という会話で言質を取り、それからおそるおそる顔を出すようになりました。

両脇にたくさんの花や植木鉢を置いた狭い通路の先にあるカウンターから、抑揚のないトーンで発せられる「いらっしゃいませ」。手指の消毒をしながら「こんにちは」と返すやりとりにも、いつの間にか慣れました。

あれにしようか、これにしようか。
切り花の前を往復しながら、花瓶を思い浮かべて悩む時間は、しあわせな休日を象徴しているようで。花を買うということ以上の意味を、わたしに与えてくれました。


***


パン屋さんに喫茶店と、この一年で見つけたお気に入りはまだまだありますが、今日はこのくらいにしておきます。


「この一年、どんな年だった?」と聞かれたら、わたしはこう答えます。
自分の街に、お気に入りができた一年です、と。

こんな苦しい時期にもお店を開いて待っていてくれる、あの人たちに感謝しながら。

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