ひとときぃ
どちらにしても、彼女と別れる。
悲しくなんかないやい。
中学の同級生、いっつも一緒にいるなって周りに言われるくらいの仲だった二人が、不意に後ろに居て、ニマッと笑うけど涙がこぼれてしまう自分は、二人に一斉に抱かれて、崩れるように、背から倒れ込む。
同時に二人からチュウ、頬に受け、
「おまえがこんなに悲しんでいるとは思わなかった」
「うん、ああ、自分でも」
デパートの外階段、鉄製の、
「じゃあ そろそろ…」
うなぎの白焼きのイメージが頭をよぎり、
彼女は行く。時間、約束だ。夕暮れ。
俺ではない人のところに。
CD。クラウド何とか。
くすんだ金色の帯、退廃した街並み、少年が吊りバンド、昔の少年探偵のようなハンチング帽と、ロング靴下ダイヤ柄の、で、少女とキスしているようなジャケット。
衝動買い チェキ?
彼女は不意に手にとって、じーっと見る。何も言わず。
…怒られるかな?それとも気に入って?
よければあげるよ。
…ひとときぃ やったな
別に悲しくなんかないさ
頬骨の下のところに少し、
蚊に刺されたように腫れて、右頬
彼女の笑顔は一つもない
(思い出の)中の場所に招待しても、憮然としている様子
不当に、いさせられているような
で、じゃあ、時間だから… みたいな
夕暮れ、たそがれ、日は傾き
おぼろに黄身が半熟に、平べったく左右から箸で刺して引き伸ばしたみたいになって、日が暮れる
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