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『竹取物語』で現世肯定を描く

忙しい先生のための作品紹介。第2弾は…

高畑勲『かぐや姫の物語』(2013年、スタジオジブリ)
対応する教材    『竹取物語』
上映時間の長さ   2時間17分
原作・史実の忠実度 ★★☆☆☆
わかりやすさ    ★★★★☆
レベル       ★★★☆☆

作品内容

 2013年に公開された長編アニメーション映画。高畑勲監督が制作に8年かけて、日本最古の物語『竹取物語』の映像化に取り組んだことで大きな話題を呼んだ作品です。制作期間だけでなく、本編137分というのは、ジブリ映画で最長だそうです。
 『竹取物語』は、竹から生まれた少女が翁と嫗の元で美しく育ち、5人の貴公子と帝に求婚されるも、受け入れることなく月へと帰っていくストーリー。この原作に従いながらも、新たな解釈を加えて長編作品に作り変えられたのが『かぐや姫の物語』です。原作との主な違いには、かぐや姫が生まれ育った田舎のエピソードの追加、帝との関係性が挙げられます。

授業で使うとしたら

  もし授業で扱うのであれば、冒頭と最終場面がおすすめです。この二つの場面は、比較的原作に忠実で、『竹取物語』の該当箇所は高校の古典の教科書に多く掲載されています。冒頭では、「今は昔、竹取の翁というものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使いけり」という、原作と同様のナレーションが入ります。最終場面も、大まかなストーリーは原作と同様です。月と地球の対比が鮮やかに描かれているところは、原作と重なる点です。一方で、帝に手紙を書くシーンや、「富士の煙」のエピソードが描かれていないという違いがあります。原作をよく知る方にとっては、比較的重大な違いであることがわかると思いますが、参考程度に生徒に見せるには、分かりやすいアニメーションだと思います。

*おまけ(おすすめポイント)


 「ジブリ飯」という言葉があるほど、ジブリ作品では食べるシーンが特徴的に描かれています。『かぐや姫の物語』にもかぐや姫の幼少期の場面で、オリジナルキャラクターの捨丸と二人で瓜を食べる描写があります。

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このシーンの絵コンテには、次のように書かれています。

カオ見合わせ、いささかの悪、冒険、美味 その秘密を共有したひそやかな愉しみ!ク、ク、ク、ク、と笑い、またかぶりついて食べはじめる。   ☆うまく前置の枝や葉を入れて、ひそやかな胎内感をかもしだしたい

 本作では、かぐや姫が都に移り住んで以降、食事の場面はほとんど見らません。男女が食卓を共にしないのは当時の風習では当然のことですが、姫は噂を聞いて寄って来た高貴な男性陣ではなく、幼少期に茂みで瓜を一緒に食べた捨丸との思い出を大事にしていました。彼女にとって、「同じ釜の飯を食う」記憶が、いつまでも心の拠り所であったように思えてなりません。

参考:高畑勲・田辺修・佐藤雅子・笹木信作・橋本晋治・百瀬義行(2013)『スタジオジブリ絵コンテ全集20 かぐや姫の物語』、スタジオジブリ

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