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『『百人一首』を味読する』(中央大学公式YouTube)

忙しい先生のための作品紹介。第18弾は……

「知の回廊89 『百人一首』を味読する」(中央大学公式YouTube 2013年)
対応する教材    『百人一首』
上映時間      28’06”
原作・史実の忠実度 ★★★★☆
見やすさ      ★★★★☆
レベル       ★★★★☆

作品内容

 中央大学公式YouTubeが制作している教養コンテンツ「知の回廊」シリーズの一作。文学部准教授(現在は教授)・吉野朋美氏の案内で『百人一首』ゆかりの地を回る動画です。『小倉百人一首』に名前を残す小倉山や『百人一首』選定の地・時雨亭跡がある常寂光寺、小倉百人一首殿堂 時雨殿(現・嵯峨嵐山文華館)、賀茂神社などを巡りながら、『百人一首』の関連する歌を解説していきます。

おすすめポイント 『百人一首』を「味わう」

 『百人一首』から「小倉山~」(5’17”~7’08”)「来ぬ人を~」(9’44”~12’32”)「人もをし~」(19’00”~22’58”)「風そよぐ~」(22’59”~24’55”)「玉の緒よ~」(24’55”~26’05”)の5首が、風景などとともに解説されています。

 特におすすめなのが、「人もをし~」です。「をし」「うらめし」などの言葉同士の結びつきや、元となったとされる『源氏物語』「須磨」との関係性が解説されています。

 学校で習う際には文法や意味に主眼が置かれることが多いですが、この動画では『百人一首』を味わうとはどういうことかを、実際の例を通してわかりやすく説明してくれます。そのため、学校で勉強した内容を深く知りたくなった中高生にも、大人になって改めて『百人一首』を勉強してみたい人にもおすすめです。

 解説書では和歌の解説文がついていることが多いですが、文字ではなく実際に先生が言葉で説明してくれることで、初心者にも理解しやすいのではないでしょうか。

 また、「風そよぐ~」では、ならの小川の風景と共に和歌の解説がされています。実際の風景をより具体的にイメージしながら和歌を鑑賞できるのは、動画ならではの良さと言えるでしょう。

授業で使うとしたら

 生徒は普段、品詞分解や現代語訳で手一杯になり、その先の鑑賞や評価まで目が向けられない、という場合も多いのではないでしょうか。そのような生徒にとって、古典を鑑賞する、研究するとはどういうことかが、この動画を見ることで実際に体験できます。「古典は訳せればよい」あるいは「古文は訳せないと楽しめない」という固定観念にメスを入れる作品といえるでしょう。

 ただし、ただでさえ意味の取りにくい古典を「味わう」というのは、生徒にはとてもハードルの高いことです。ですので、授業での解説に用いるというよりは、発展的な世界を生徒たちに見せ、興味を喚起するのに用いる程度に止めるのがよいのではないでしょうか。

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