見出し画像

バリに生きる女性たち:Tina(ティナ)さん

シンガポールで出会ったさまざまな女性の生き方をご紹介するインタビュー"シンガポールに生きる女性たち"ですが、今回は特別編!"バリに生きる女性たち"として、インドネシア・バリ島に生きる2人の女性をご紹介します。

日本でも観光地として有名なバリ島。実はバリ島には世界各国から様々なクリエイターや起業家が集まっている場所でもあります。そんなバリ島に現在住んでいる素敵な女性にお話をお伺いすることができました。

Tina(ティナ)さん 47歳 ※ご本人の希望により仮名
ドイツ(ハイデルベルグ)出身・バリ在住
■職業・肩書き:ヴィーガンシェフ・ヨガ講師 ■これまで住んだことのある国(都市)と年数:ドイツ35年(ハイデルベルグ20年・ハンブルグ15年)・インドやスリランカなどに長期滞在5年・バリ3年■話す言語:ドイツ語・英語・インドネシア語■バリに引っ越したきっかけ:アジアでの長期滞在後住むのに快適な場所がバリだったから■家族構成:パートナーと3匹の猫

一人目のEmily(エミリー)さんに続き、二人目はTina(ティナ)さん。ドイツのハイデルベルグ出身、35歳の頃にパートナーと共に期限を決めずに海外へ、主にインドやスリランカなどに長期滞在しながらヨガの勉強を。そして3年前からバリに暮らし始めました。これまでのこと、現在のバリでの生活のこと、また『結婚』という形式はとってはいないパートナーとの関係のことなど、お話をお伺いさせていただきました。

現在の仕事について

Mana(インタビュアー):現在されているお仕事についてお話しいただけますか。

Tina:はい。現在はバリでヴィーガンシェフの仕事とヨガの講師の仕事を主にしています。ヴィーガンシェフとしては、バリで開催されるリトリートやパーティなどでヴィーガン料理を提供したり、レストランでのヴィーガン料理のトレーニングやレシピ開発をすることもあります。またヨガの講師としては、どこか特定のスタジオでは教えておらず、バリで開催される様々なリトリートや、観光客向けやここに住んでいる人向けのプライベートクラスで教えています。

Mana: Tinaさんはバリに住まわれて3年とお伺いしました。住み始めた当初はどういう風にお仕事を始められたのでしょうか。はじめからヴィーガンのシェフやヨガの先生をしようと思っていたのでしょうか。

Tina: いえ、ヴィーガンのシェフやヨガの講師をしよう、というような具体的なプランは当初ありませんでした。短期滞在で訪れたバリで素晴らしい人たちに出会いぜひここに住みたいと感じて、パートナーと一緒に引っ越してきました。何かをするために引っ越したのではなく、住みたい場所に住むために引っ越した、というような感覚です。またバリに引っ越してきてから仕事を探そうとしたことも実はありませんでした。バリでのビジネスは人とのつながり・コネクションで進むことがほとんどです。私自身も暮らし始めてからいろんな人に出会う中で「来週リトリートを開催するんだけど、ヨガの先生が足りないからぜひきて!」とか「ヴィーガン料理がつくれるなら、ぜひ今度開催されるパーティで料理を担当してくれない?」などと口コミで仕事が広がっていきました。

Mana: そうだったんですね!今のお仕事でエキサイティングな時ってどんな時でしょうか。

Tina: 特にヴィーガンシェフとしての仕事ですが、毎回新しいものをつくります。そして毎回提供させていただく場所や人も異なります。仕事をするたびにそうやって新しいものを作り出し、新しく素敵な場所や人との出会いがあるのはとてもエキサイティングですね。

Mana: 逆にチャレンジングなこと、難しいことなどはありますか。

Tina: 先にもお伝えしたように毎回新しいものを新しく出会う場所や人たちに提供しています。そんな環境の中で、相手の好みや期待しているものに応えられているかどうかは毎回プレッシャーがあります。またバリでは例えばドイツとか日本のようにスーパーでいつでも必要なものが揃うということがありません。欲しいものがその時に無かったり、値段が急に高くなっていたり、ということもあり得ます。そういう不安定な状況の中で相手の期待に合致するものを提供するのは大変なことかもしれません。また現在の私の仕事は何か定期収入があるわけではないので、その点でもチャレンジングだなと感じることはあります。

バリに住むまでのこと。ドイツでの生活、そしてドイツを離れたきっかけ。

Mana:Tinaさんはドイツご出身ですが、ドイツでの生活のことについて教えていただけますか。

Tina: ドイツでは20歳ぐらいまでは生まれ育った町ハイデルベルグで、そのあとは自身の進学や仕事の都合でハンブルグに15年ほど住んでいました。ハンブルグでは音楽学校に通い、クラシックの音楽・声楽を学び、クラシックの歌の分野でステージに立つことを目指していました。学校の先生にはポテンシャルを見込まれたものの、ステージに立つとどうしても緊張してしまう自分がいて、自分の持っている最大限でステージに立つということがなかなかできませんでした。そこで自分自身の音楽のバックグラウンドと、子どもに教えることが得意だったこともあって、コマーシャルの女優と子どもたちに音楽を教えることを始めました。これも自分で決めたわけではなく、自分のこれまでの経験からたまたまそういう話がきて始めた、という経緯です。子どもたちにはピアノを教えたり、ミュージカル、教会の合唱団での歌を教えたりしていました。

Mana: そのお仕事をお辞めになったきっかけ、そしてドイツを離れた時にはどんな状況だったのでしょうか。

Tina: ある日いつもの通り子どもたちに音楽を教えていた音楽学校に行くと、私の勤続10年を祝うシャンパンとお花が置いてありました。それを見た瞬間に自分がもうここで10年も仕事をしてきたことに驚きと"That's enough(もう十分!)"という気持ちがこみ上げてきました。当時私自身はその仕事にあまりやりがいを感じられていない状況でした。そういう流れのなかで、仕事を離れ、そして当時すでに2年ほど付き合っていたパートナーとドイツを離れて旅に出ることに決めました。私自身が35歳の頃でした。

Mana: そんな決断にご家族は心配されたりしませんでしたか。

Tina: 父は早くに亡くなったので残る親は母のみ、そして兄弟もいますが、私がドイツを離れることについては当初は悲しがられました。でも私たちの意思は固く変わるものではなかったので。持っていた車や家具などもすべて売り払ってドイツを離れ、インド・デリーへの片道切符だけを買ってパートナーとの長期の旅をしながらの生活が始まりました。

Mana: 旅されていた期間はトータルで約5年ほどと伺いましたが、実際にどのような国でどのように過ごされていたのでしょうか。

Tina: 長期で滞在をしていたのはインド、スリランカ、ネパールです。ただその間にその周辺の国を訪れることもありました。長期滞在をしていた国では、いつくかのアシュラムに滞在して師事する先生からヨガを学びました。それ以外にゲストハウスやカフェなどの立ち上げに関わったこともありました。

Mana: そんな長期の旅するような生活スタイルから3年前にバリに拠点を構える生活にされたわけですよね。バリを選ばれた理由はなんだったのでしょうか。

Tina: まだインドにいた頃に、バリに数ヶ月滞在しにきたことがありました。その時に素晴らしいヨガの先生との出会いがあって。それが一番大きなバリに住もうというきっかけになりました。そのあと一度インドに戻りヨガの勉強を6ヶ月ほど続けたあと、バリに引っ越してきました。

パートナーとの関係のこと

Mana: TinaさんのパートナーはTinaさんと同じドイツ人の方ですよね。12年ほど一緒にパートナーとして過ごしているけれど『結婚』という形式は選んでいないと伺いました。『結婚』を選んでいない理由は何かあったのでしょうか。

Tina: 私自身は以前は『結婚』への憧れもありました。ただ私のパートナーは『結婚』という形式・システムに意味を感じていない人で、以前二人でそのような話し合いをした時も「Tinaは僕のパートナーだし、すでに僕の妻だよ。それ以上になんで『結婚』が必要なの?」というのが彼の意見でした。そんな彼の意見も聞いていて、私自身もだんだんと『結婚』という形式への意味を感じなくなっていきました。なので今は現在の私たちのあり方で落ち着いています。

Mana: 現在お子さんはいらっしゃらないということですが、子どもを持ちたいと思われたことはありますか。

Tina: 私自身はあまり子どもを持ちたいと強く思ったことはありません。実は以前、ちょうど長期の旅する生活を始めた頃、当時私自身30代後半だったこともあってパートナーに「子どもをつくろうよ」ということを提案したこともありました。でもいま考えるとそれは本当に子どもが欲しいと思っていたというよりは、年齢的な焦りがあったように感じます。子どもをつくるなら今が最後のチャンス!というような。でも彼は『結婚』に対してもそうであるように、既存の概念にとらわれがない人です。また長期で旅する生活をしていたこともあって、物理的にも経済的にも子どもを持つことは難しいよね、ということになりました。今となっては私自身もパートナーとの二人の生活に落ち着いていますし、子どもがいないことで何か"足りない"と感じたこともありません。

大切にしていること

Mana: Tinaさんの場合、現在されているお仕事とご自身が"好きなこと"というのがほとんど同じだと思うのですが、お仕事をされている時間以外はどんなことをされるのが好きですか。

Tina: 仕事としてしていること以外で一番好きなのはサーフィンですね。少なくとも週に一度は海に入るようにしています。あとはビーチ沿いを散歩すること、メディテーションすること、また親しい女友達と誰かの家に集まって映画をみることも大好きな過ごし方のひとつです。

Mana: 人生で何か大切にしている言葉はありますか。

Tina: 特に"コレ"といった言葉があるわけではありませんが、"旅をすること"、そして"旅をすること"を通じて"自分が見える世界を広げていくこと"は私自身が人生の中で大切にしていることだと思います。

これからのこと

Mana: バリにいるのはどれぐらい、というようなことは決めていらっしゃいますか。

Tina: 特に期間や期限というのは決めていません。インドネシアという国は、特にここに住んでいる外国人にとっては、いつ、どんなルールが変わるか分からない、という状況が常にあります。それを考えると先を考えすぎるよりは『今』を大切に、常に"今ここにある生活"を大切に生きていきたいと思っています。

Mana: これから取り組んでいきたいことはどんなことでしょうか。

Tina: まずはビジネスのパートナーであるEmilyとのより定期的なリトリートの開催ですね。あとは個人的に、ヴィーガンフードのシェフとして私自身がプロデュースする野菜のディップの販売なんかも近いうちに始められたらと考えています。

いかがでしたでしょうか(インタビューアーあとがき)

Tinaさんとは、バリの一人目のインタビューをさせて頂いたEmilyさんが運営されているリトリートに参加した際に参加者の食事を担当する運営側のお一人としてお会いしたのがきっかけでした。

Tinaさんのお話をお伺いして強く感じたのは、逆に自分自身がいかに"かたちがある"ように見えることにまだまだこだわりがなるなぁということでした。前述の通り、Tinaさんはバリに住む際に何か"これをする"というような仕事や収入源になり得ることを決めて住み始めたのではなく、"ここに住みたいから住む"ということを軸にされていました。またパートナーとの関係も、特に『結婚』という形式をとっていないですが、すでに12年間、長期の旅するような生活スタイルを含めて一緒に過ごされてきて、実質『夫婦』もしくはそれ以上に強い関係性です。

一見"かたちがない"ように見えるけれど自分が大切にしたいことを大切にしようとすることで、必然的に"かたちはつくられていく"ということ。YesかNo、白か黒かに定まらない第三の答えがあることが往々にしてあること。Tinaさんの生き方に触れて、私自身の今後の人生の選択と許容範囲が広がったのを確かに感じられるインタビューでした。

日本やシンガポールなどで出会える女性たちとはまた違った、とてもクリエイティブな生き方をされているバリに生きる女性たち。快くインタビューをさせてくださったEmilyさん、Tinaさんに改めてお礼を申し上げるとともに、この記事を読んでくださった日本の読者の方にとって今後の人生に新しい視点をや視野を提案する記事になりましたらとても嬉しく思います。

インタビュアー・文責:小川麻奈(Girls Bee代表)

Girls Bee Onlineでは、国籍や民族、育った環境など日本人とは異なるバックグラウンドを持った女性たちが、どんなことを考えて、どんな生き方を選んでいるのか、インタビューを通してお伝えしていきます。これを読んでくださっているたくさんの可能性をもった日本の女性のみなさんに、何か感じてもらい、それぞれの人生に取り入れられるよい部分を見つけてもらえたら、とても嬉しく思います。ご意見・ご感想等ありましたら、ぜひコメント欄もしくはメールでお知らせください。またGirls Bee Onlineではオンライン記事の寄稿等ビジネスコラボレーションも受け付けています。ご連絡は下記emailまで。(Contact: girlsbee2010@gmail.com)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?