消費される接客
「まなみんは笑顔が良いよね」
今までこのセリフを何回聞いたことだろうか。
笑顔は唯一の私の武器であり、長所であると思っていた。
誰よりも笑顔だけは輝いていようと思っていた。
辛いときも、キツイときも笑顔を取り繕った。
笑顔じゃない私は私が認めなかった。
.......だけど最近鬱が酷くなるにつれ、笑顔の作り方が分からなくなってきた。
誰からとは言えないけれど、辛辣な言葉を浴びたり、プレッシャーをかけられたりして、
どんどん顔が強ばっていくのが自分でも分かった。
人間なら誰しも、笑顔に好意を抱くと思う。
フラっと立ち寄ったお店で店員さんの笑顔を見ると
今日も頑張ろうって思えたり、辛い気持ちが吹き飛んだり。
本当に0円で作れる魔法だと思う。
ずっとずっと私は与える側だった。
与えて与えて与え続けていたら
自分のための笑顔は消えていた。
0円だと思っていたものは実は違った。
自分に相当なエネルギーが無いと笑顔は作れないのだ。
笑顔が取り柄だった私にとって、接客業は天職だと思っていた。
いつも笑顔が素敵だねって言ってもらえた。
それが、エネルギー源だったのに。
いつの間にか何のために笑っているのか分からなくなった。
お客様のため?自分が褒めてもらうため?
一生懸命エネルギーを絞り出して笑いかけても、何十人というお客様にどんどんエネルギーが吸い取られるようになり、気づいたらいつも空っぽになる自分がいた。
店員だから笑うって当たり前なのかな。
1人になると本当は逆なんだ。
自分を責めて責めてこれでもかってぐらい堕とす。
本当はもうこれ以上笑えないのに、私の笑顔とエネルギーは消費されていく。
そういえば、双極性障害になって初めの訳が分からなくなって暴れていた頃、
高校の友達に
「無理して笑わなくていいよ」
って言われたんだっけ。
その通りだった。あのときちゃんとその言葉を受け止めきれていたら。空っぽにならずに済んだのかな。
今日、ラーメン屋さんに行ってきた。
無愛想な店員さんだった。
でも、なぜかそれに安心してしまう自分がいた。
みんな、無理して笑ってたんだ。
仕事だから、って自分に言い訳して。
接客は消費される商品と同じように思えてきた。
それでどんなにお客様の心が救われようと、次の瞬間には忘れ去られてしまうのだ。
無理して笑わなくていいのに。自分もみんなも。
無愛想な店員さんだって心から笑うときはある。
本当に大事なときにだけそのエネルギーを使っているんだ。
ああ、私は相当無理してたんだな。
気づくのが遅すぎるよ。
これを書きながらどれだけ泣いてるんだよ。
悔しい。
接客は、商品じゃないよ。
あなたのために、心を込めているんだよ。
どうか気づいて。
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