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海外教育大学院を卒業して一年の今の現在地

ファシリテーター・ライフコーチのまなみです。
「自然の中に学びの場をつくる」ことを目標に、2024年2月から東京都日野市に越してきました。
美しい作品を考え、作り、表すことで学習者の主体性を育み、学習者・コミュニティ・世界中の生命を豊かにする、そんな学びの場をみなさんとつくっていけると嬉しいです。


本日は2024年5月の最終日。
2023年5月にハーバード教育大学院を卒業して、ちょうど一年経ちました。
教育大学院卒業後には色々な選択肢があると思うのですが、「主体的に学ぶとは?」を研究していた私はこの卒業を「自分自身が主体的に生きるとは?」を実践して体現するきっかけにしたいと思って、一年間過ごしてきました。一年間の振り返りをして、次につなげるようなnoteにしたいと思います。



アメリカに残る?日本に帰る?な混迷期(2023年5月〜7月)


私は「主体的に学ぶとは?」ということを探究するために教育大学院に留学しました。このテーマで大学院に行きたいと思ったきっかけは、オランダのアメリカンスクールの授業が生徒主体で、学びが記憶に残るし、他の人ともつながれるし、何より楽しい、もっと広めたいと思ったことがきっかけです。「主体的な学び」については大学院で知ったDeeper Learning以前にも、探究学習、コーチング、企業の人事開発・組織開発、興味があるものは片っ端から勉強したり、仕事にしようと画策したり、実際に仕事にできたりと探究を続けてきました。

「主体的に学ぶとは?」という問いを深めれば深めるほど、最終的に「主体的に生きる」ことにつながっていないと意味がないということから目を逸せなくなってきました。いくら探究の授業で生徒の興味を引き出して素晴らしい成果物ができたとしても、社会でその個人的な力を発揮する場所がなければ萎れた芽も同然です。その人がいくら素晴らしい感性を持っていたとしても、社会に出て自分の意見も言えず、毎日機械的に同じルーティンをこなし、常識や前例主義に埋もれていたら、「主体的に学ぶ」意味も本質的にはなくなってしまいます。現代の工業化社会に合わせるんだとしたら、今まで通り暗記や点数での評価をやっていた方がむしろ効率的かもしれません。それでも自分は「主体的に学ぶ」ことに、人間らしさやその人らしさがあると信じたい。留学中後半から漠然と、自分はこの卒業を「自分自身が主体的に生きるとは?」を実践して体現するきっかけにしたいと思うようになってきました。

同時に「主体的に学ぶ」をもっと学問的に突き詰めたいという気持ちもありました。自分は2023年1月から教育大学院のProject Zeroという研究機関でリサーチアシスタントをやらせてもらっていたのですが、その研究もとても面白く、道半ばでした。博士課程への進学にも興味がありました。大学院でまたは研究所でリサーチを続ける方法はないかも模索していましたが、そうすると研究対象がアメリカ人になりかねないことと、数年単位の話になりそうなことがかなりネックでした。自分が問題意識を持っている社会は日本であることや、家族と一緒に住みたい気持ちに向き合って、一度日本でできるところまでやってみて、それでもまた海外に出たくなったらそのとき博士課程について考えようという気持ちを持って、帰国しました。


家族の転勤により自分の主体性を保つのが難しい期(2023年8月〜2024年2月)


このような動機を持って日本に帰ってきたのだから、「自分自身が主体的に生きるとは?」という問いを体現するのに全集中したいという気持ちがありました。夏に個人事業主登録を済ませ、留学中のご縁も受け取ってワークショップやライフコーチングを提供する生活が始まりました。

「主体的に生きる」となると、「どのように生きていくか」も自分で考えて行動しないといけません。実現方法として、自分は生きるために「お金を稼がないといけない」のか、それとも貯金(留学ですでにだいぶ食い潰しましたが)や人的資本などその他あるものもすべてリソースとして使っていくのか、そんな選択を日々迫られました。自分一人で稼ぐとなると平気で月に5桁台の収入とかを叩き出せるのですが、そういうところを見つめていくと、自分にとってお金を稼ぐことは生きていくために必要と思っているだけで、人生で一番やりたいことではないのだなという気づきもありました。収入的に見たら割と悲惨なときもあるのですが、面白いことにじゃあ安定的にお金を得るために組織に戻りたいかと聞かれると、この一年間で今のところそう思ったことは一度もありません。もう少し行けるところまで行きたいと思います。自分が「主体的に生きる」を実践する中で、人間が学ぶべきなのは「安定的に稼ぐ」ことではなくて「どんな状態でもどうにかなると思える」ことなのではないかという仮説が立ってきました。

個人的にこの時期「主体的に生きる」ことに心からエネルギーを向かわせるのが難しいと感じた理由は、帰国後に家族の転勤で名古屋に住んでいたことです。名古屋という街自体は初めて住む場所で面白かったのですが、住む場所や間取り、ご近所さんまでパートナーの会社に指定されていたことが、自分の「生きたい」というエネルギーをかなり削いでいました。自分は昔から「ここに住みたい」という像が明確にあるタイプなのに、「まあ何をしてもここに住まないといけないんだから」と思うと、これをしたいあれをしたいというエネルギーはまったく湧いてきませんでした。仕事も主にオンラインだったので、対面で人と話す機会も少なく、画面を見すぎて疲弊していました。自分で住む場所を自分で選ぶことができる。これも「主体的に生きる」にとってすごく大切な要素だと身をもって痛感しました。

逆にこのニッチもさっちもいかない状況を利用して、名古屋では自由気ままに自分が行きたい場所にプチ冒険していました。名古屋市から始まり、岐阜県、三重県、富山県、石川県…自分にとってこの時期の大発見は、日本の水の聖地である滋賀県の存在でした。収入もそんなにない中でぷらぷらしながら、自分がお金も時間も気にしなくてもいい状態を想像して、「人生の時間を使って、私は何をしたいのか?」を考える。最終的に辿り着いたのは「色んな世界を見て、色んな人と面白い話をする」。自分にとってこれ以上に人生で大事なことはないように思えてきました。面白い話をするというのは、表面的な話ではなくて、その人が何が好きでどんなことを考えていて何をやってみたいと思っているのか、そういうことを聴くということです。死ぬまでの間に「色んな世界を見て、色んな人と面白い話をする」を実現し続けるという感覚は今後も持っておきたいなと強く思いました。


日野市に引っ越し、自分のビジョンをより体現していく期(2024年3月〜5月)


そんな中、パートナーがフルリモートの会社に転職することになり、自分たちでどこに住むか決められるような状態になりました。そのときに思いついたのが、大学一年生のときに初めて見かけて川や用水路の雰囲気に一目惚れしてから13年間ずっと住みたいと思い続けてきた東京都日野市です。パートナーとも話し合って引っ越すことになりました。

実は東京に戻ることには不安もたくさんありました。まだまだ自分は「主体的に生きる」基盤を構築している最中だったので、日野市とはいえ東京に戻ると知り合いも多いし、都市の生活に引っ張られてしまうのではというところでした。実際に引っ越してみると、その心配は意外と大丈夫でした。まず、実際に日野市に住んでみると自分にとってはやはりとても事足りていました。考えごとに煮詰まったらすぐ河原に出れるし、さらさら水が流れる用水路もあるし、野菜直売所もあるし、住民自治でみんなでゴミ拾いするし、色々なイベントもあります。都心に住んでいたときは桜の時期に一時間以上電車に乗って多摩地域に通っていたのですが、今回自分が行きたかった場所はすべて自転車圏内だという幸せなことに気づきました。日野市ですべて事足りるので、用事がなければ満員電車に乗って都心に出ようとも思わないし、出る必要もありません。むしろみんなに日野市の魅力を知ってもらいたくて、積極的に河原や高幡不動尊や土方歳三資料館にお誘いしています。

また、「どのように生きていくか」の部分をより強化していくために、三つ目の選択肢でもある「生きていくために必要なものは自分で作り出す」ということにもよりアンテナが立つようになりました。アメリカで食費が高かったので、日本に帰ってきてから「食べたいものは自分でつくればいいじゃん」と思い立ち、今いちごとにんじんとネギを狭いベランダで育てています。ちょっと目を離すと萎れたり、すごい生命力で回復したりと、毎日本当に面白いです。本当はもっともっと自由に育てたくて、特にお米を自分で賄うことができたら「自分の食を自分でつくっている」という自信になるような気がしています。最近は日野市の雑木林についての年間講座に参加していたり、直近でも奥多摩や高尾にお茶摘みや畑作業に行く予定です。自分の暮らしを自分でつくっていけたら、自分も自分らしく生きることにつながり、周りの人ともつながり、地球ともつながることができて三方良しなのになと感じています。

自分の暮らしの基盤が整ってきたので、徐々に自分の「色んな世界を見て、色んな人と面白い話をする」というビジョンにもエネルギーを向けられるようになってきました。1月の誕生日のときにトライアルで試したTAKIBIを、5月に改めて始動しています。TAKIBIも「面白い話をする」という観点では絶対に間違っていないと思っているのですが、やってみないとわからないことが本当にたくさんあります。より多様な人に参加してもらって色んな世界を体感するために参加者から参加費をいただく以外の循環も回せたりするのだろうかというところが今一番のヒリヒリスポットです。

こう考えると、自分は半農半学がやりたいのかな、半農半好(奇心)?半農半話?とにかく好きなことと稼ぐことを切り離すのはもう終わりにしたくて、「生きていくこと」に統合したい。それがみんなでできれば資本主義も超越できたりしないのかなというところが最近の自分の最大の関心事です。


今やりたいと思っていること


こんな一年間を過ごして、これからに向けてやりたいと思っていることはまだまだあります。これらをやっていくために自分が持っているものを全部使いたいし、みなさんからの応援や協力にも全力で頼らせていただきたいと思っています。これからみなさんとこんなふうに関わっていきたいな〜というところを、思いつく限り箇条書きで書いていきたいと思います。


  • 学校デザインの授業で発表したような「自然の中の学びの場」を実際につくっていきたい
    →日野市で農地・古民家・ネットワーク、こんなのあるよという情報、ぜひ知りたいです!後は自分としては滋賀県もめっちゃいいな〜と思っていて、スズノイエさんやでたらめ荘みたいな何かができるといいな…そんな情報もお待ちしています。

  • TAKIBIをより良い場にしていきたい
    →自分が「色んな世界を見て、色んな人と面白い話をする」を体現するのもそうですが、多様な人に参加してもらって、それぞれが何が好きでどんなことを考えていて何をやってみたいと思っているのか話して実現できる一歩になるような場にしていきたい。どのように持続させるか一緒に考えてくれる方も募集中です!

  • よりフットワーク軽く、「自然の中の学びの場」を体現するために動けるようになりたい
    →まだ自由自在に旅ができるほどお金の面が整いきってはいないので、このサイクルが回って面白い取り組みを存分に見れるようにしたい!

  • お米を育てられるようになりたい
    →これも農地があればいいな〜と思っています。そういえば今年バケツ稲から挑戦してみたいと思っていたのを、すっかり忘れていました!苗から育てるのは6月からでも大丈夫なようなので、やってみるか!

  • より多くの人に日野市の魅力を知ってもらいたい
    →日野市の自然を使って、バーベキューやチェアリングやコーチングをどんどんやっていきたいし、どこかのタイミングでリアル焚き火もやりたい

  • 海外の人にもMANABIのビジョンを伝えて一緒に体現していけるような仕組みを整えたい
    →「自然の中の学びの場」に日本の文化のエッセンスもふんだんに入れて、海外の人にも一緒に体験してもらえるような仕組みをつくっていきたい!TAKIBIの英語版もやりたいなと思っています。

  • 本を出版したい
    →まだまだこの夢も諦めていません!「主体的に学ぶとは?」を追求した道のりをいつか本に出せるといいなと思っています。そのためには自分ももっと実践に移さないと。とりあえず本棚に自分が書いた書籍・雑誌コーナーは準備したので、本を迎える気概はバッチリです。


いや〜、まだまだやりたいと思っていることがたくさんありますね!
こうやって振り返るとなんだかとても泥臭い一年間でした。大人になると時間が過ぎるのがあっという間というけれど、自分にとっては濃密な一年でした。留学していたのももう5年くらい前のような感覚です。
そんな中でも手を差し伸べてくれて色々な機会を与えてくれた方に本当に感謝しています。
また、今後も一緒にコラボレーションできる機会も続々とありそうなので、そのことも本当に楽しみです。


これからも「色んな世界を見て、色んな人と面白い話をする」に向かってLET'S GO!


海外教育大学院への進学についてのお問い合わせについて


最後に、この一年間海外教育大学院への進学に興味がある方から多くのお問い合わせを受け、可能な限り1on1などでサポートさせていただいていました。受験前に進学経験者である私に問い合わせるみなさんの行動力は素晴らしいことだと思います。

一方で、私もこの後卒業から一年以上過ぎてしまい、提供できる情報が最新ではなくなってきました。最新の情報についてはもっと直近で留学された方の経験談を伺った方がいいのかなと思っています。私からの情報提供はなるべくここで引退とさせていただきたいと思います。

海外教育大学院への進学に興味がある方には、最後に私から二つリソースを提供させていただきます。



Kyoiku Fellow-海外教育大学院生の会


Facebookに「Kyoiku Fellow - 海外教育大学院生の会」というグループがあります。元々はコロンビア教育大学院卒業生の田原佑介さんがGakkatsuという名前で立ち上げたグループで、2024年5月現在も多様なメンバーで活動が続けられています。次のような目的・活動内容を掲げており、教育大学院生だけでなく志望者の参加もOKなので、ご興味があればここに参加していただき、色んな方とつながることをお勧めします。


◆目的
- 海外大学院で教育を専攻する現役学生/卒業生/現職の教育関係者/留学志望者が交流する場
- メンバーが学んだことや自分が考えていること(研究アイデア等)をアウトプットする場。
- 現職の教育関係者/実践者の方との議論を通じて、現役学生が海外大学院での学びを深める場。理論で頭でっかちにならず、「現場では実際どうなの?」という視点を持つことで、大学院での学びを深める。

◆活動内容
①交流会的集い with 現役生/卒業生/現職の教育関係者の方/志望者
②LT/発表(練習) by 現役生/卒業生/現職の教育関係者の方
③ワークショップ by 現役生/卒業生/現職の教育関係者の方
④ゲストトーク by 現職の教育関係者の方


↓Facebookグループの参加はこちらから



アーカイブ配信:「海外教育大学院卒業後1年目のキャリア:「留学行くべき?行かないべき?あなたの悩みを吹き飛ばします」


どうしても私個人の体験談を聴きたいという方は、先日留学準備〜留学〜卒業後のキャリアまでを総まとめしたオンラインウェビナーを、一時間のYouTubeの限定配信動画に作り直しました。
留学中から卒業後まで、色々な方から受けた質問に一気に答えています:

  • どうやって大学院を決めましたか?

  • 留学に適した年齢はありますか?

  • 留学に行くのにどのくらいの英語力が必要ですか?

  • 教育大学院でコーチングは学べますか?

  • 卒業後のキャリアはどんな感じですか?

などなどです。個人的な体験談盛り沢山なので有料にさせていただいていますが、三年間の知識と時間とお金を全投入しているので、かなりお得かと思います。
もし次のような目次の内容に興味がある方がいらっしゃれば、最後にこの記事をご購入いただいて、YouTubeの限定配信動画にアクセスください。


↓YouTube限定公開動画の目次です:

00:00 はじめに
01:07 奥田麻菜美の自己紹介

→今までの人生の変遷や、なぜこのタイミングで留学に行こうと思ったのか説明しています。
07:22 ハーバード教育大学院の紹介
→ハーバード教育大学院のプログラムや履修した授業、どんな学生が多いか紹介しています。
12:17 本日のお品書き/本日伝えたいこと
18:21 教育大学院卒業後の6つのキャリアパターン
24:27 キャリアを見据えた教育大学院の選び方あれこれ

→「実務or学問」「研究分野・授業」「好み」という3つの観点から選び方を説明しています。「教育大学院でコーチングは学べるの?」というよくある質問にもお答えします。
33:02 自分らしいキャリアをつくる3つのパターンの詳しい紹介
45:25 留学に行くのに適切な年齢
→「留学に行くのに適切な年齢はありますか?」「同級生の年齢のボリュームゾーンはどこですか?」というよくある質問にお答えしています。
47:00 留学に行くのに必要な英語力
→「留学に行くのにどのくらい英語力が必要ですか?」というよくある質問にお答えしています。
49:00 留学準備〜留学中〜卒業後のタイムライン紹介
→留学準備中、留学中、卒業後で何がいつどう大変だったかを、私の個人的なタイムラインを参考にまとめています。
53:08 さいごに


大きく分けて、①〜③のキャリアパターンについて取り扱っています!
(④〜⑥についても触れています)



ここまで長文でしたが、読んでいただき、ありがとうございました。
自分も周りも地球も大切にして、「主体的に生きる」をますます探究できる学びの場をつくるために奮闘していきたいと思うので、今後もよろしくお願いします!


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